Red Hat Summit 2007──第2日目:Red Hat Exchangeと興味深いプレゼンテーション
Red Hat Exchange(RHX)は、Red Hatのパートナー各社が提供するオープンソースアプリケーションの購入とサポートを簡略化するためのものだ。RHXから購入することができるソフトウェアはRPM形式でパッケージ化されており、Red Hat Network経由で入手可能になっている。サポートが必要となった際にはまずはRed Hatがその窓口となって対応するが、解決のためにアプリケーションベンダのスタッフによる高度な対応が必要となる場合にもRed Hat経由で透過的に対応してもらうことができるという。
一方のSybaseとの提携発表では、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)5とSybaseが含まれる「仮想ソフトウェアアプライアンス」の提供計画が明らかにされた。ただしアプライアンスの価格や提供時期については発表されなかった。
なおRed Hat Summit 1日めのメディア関係者向けトラックでは、Red HatとIBMのメインフレーム分野における提携、Red HatのGlobal Desktop、Intel vProハードウェア用Red Hat Virtual Appliance OSなどのニュースが発表された。
朝食は一日の基本
Red Hat Summitでは午前7:30から8:30の間に朝食が出される。毎年決まってそのようになっているのだが、この朝食は自分と同じようにRed Hat Summitに出席している人たちに会い、Red Hat Summitについての感想を聞くことができる楽しい時間だ。今回私は、Red Hatの顧客であるCheckFree社やEDS社の人たちや、ロサンゼルス学区の担当者や、財務分析者といった人たちと朝食を共にした。
私と同じテーブルにいた全員がRed Hat Summitを楽しんでいるという点では一致していたが、テーマについてもっと実践的で詳しい情報を得たかったと、出席したセッションに対する不満の声もいくつか聞かれた。ただし誰もLinux Labsセッションにはまったく出席していなかった。これは出席するつもりがなかったのではなく、出席したかったが部屋に入ることができなかったのであり、今年のRed Hat Summitの予期せぬ盛況ぶりのあおりを受けてしまった格好だ。しかしその後で私がRed Hat Summitの評判について情報交換をしたジャーナリストは、セッションの内容についてまったく逆の不平(もっと入門的な内容にして欲しかった)を聞いたと言い、技術者である人たちとマネージャである人たちとの間でセッションに期待する内容が異なっていたということかもしれないと言っていた。
なお私が聞いたところによるとCheckFree社では700台を越えるサーバから構成されているネットワーク全体をLinuxで運用しているとのことだ。また、EDS社からの参加者がいたことに私は驚いていたのだが、EDS社ではx86マシン上でLinuxを使用しているだけでなく、顧客の要求に応じて大規模なIBMメインフレームでもLinuxを使用しているとのことだ。
DreamWorksとLinux
朝食の後、正規のセッションが始まった。まずRed Hatの製品管理担当ディレクタMatt Mattox氏によるRed Hat Exchangeの宣伝が冒頭にあり、その後Red Hatのエンジニアリング担当上級副社長Paul Cormier氏に紹介されて、DreamWorks社のデジタルオペレーション部門を率いるDerek Chan氏が壇上に現れた。Chan氏は、DreamWorksがこの何年間かにわたってレンダリング時間の増大にどのように対処してきたのか、また、世界中に散在する多様なアーティストたちから成る仮想的な製作スタジオをどのように拡大してきたのか、ということについて講演した。もちろん、そのような過程でLinuxは大いに役立ってきた。
DreamWorksでは、制作単価が下がる一方で、(スケジュールの過密化により)制作時間は増えているので、Linuxの使用が業務上ますます欠かせないものになっているという。DreamWorksでは当初Linuxをレンダリング用マシンでのみ使用していたが、現在ではデスクトップでもサーバでも同様にLinuxを使用しているとのことだ。
DreamWorksの講演は非常に面白かったのだが、講演に使用されたビデオ画面の下方に「本著作物の権利はDreamWorksに帰属-転載を禁ず」とでかでかと表示されていて驚いてしまった。
リアルタイムLinuxと米海軍
IBMのLinuxカーネルハッカーのTheodore Ts’o氏が、米海軍におけるリアルタイムLinuxの使用についてのプレゼンテーションを行なった。現在建設中で2009年完成予定の次世代軍艦DDG 1000では、至るところでリアルタイムLinuxシステムが使用される予定だという。
実際のところは、リアルタイムLinuxだけではなくリアルタイムJavaも使用される予定であり、Ts’o氏の講演の大部分もリアルタイムJava VMの構築にまつわる問題点についてだった。講演によると最大の問題点は、既存のJavaではガーベッジコレクションを行なう際に、他のほぼすべての動作が停止してしまうということのようだった。そしてその解決法は、ガーベッジコレクションの一回の実行時間を制限することだという。それによりガーベッジコレクションの実行回数はおそらく増えることになるものの、毎回の実行時間が非常に短くなるということだ。Ts’o氏はこの方法がうまくいくことを示すため、まず既存のJavaを使用して音楽を再生し、ガーベッジコレクションが行なわれると、それ以外の全動作が停止し、音が途切れることを聴衆の耳で確認させた。そして次に改良したJavaを使用して音楽を再生して、音の途切れがまったくなくなることを示した。
2日めの催しは、ホテルの庭園でのカクテルパーティと、その後場所を変えてAerospace MuseumでのAMD主催のディナーで締めくくられた。