IBM、UNIXサーバ上でLinuxコードを稼働させる仮想化ソフトを発表――x86ベースのLinuxアプリ数千種がコードを変更せずに稼働可能に
同社によると、この技術のアイデアは、UNIXのセキュリティや信頼性、拡張性を生かしながら、同時にサーバ統合のメリットも得たいという一部の企業ユーザーから出たものだという。
同ソフトウェアを使えば、IBM System p AVE(Application Virtual Environment)と呼ばれる仮想Linux環境上でx86ベースのLinuxアプリケーションを稼働させることができる。現在、IBMの関連サイトでベータ版のダウンロードが可能になっている。
IBM System pサーバ・グループのワールドワイド・マーケティング/戦略担当バイスプレジデント、スコット・ハンディ氏によると、IBMは仮想化技術ベンダーのトランジティブと共同で同ソフトウェアの開発を進めているが、顧客からの要望が開発を始めるきっかけになったという。
トランジティブのQuickTransit技術を使えば、特定のハードウェア・プラットフォームやOS用に開発されたソフトウェアを、書き直すことなく他のハードウェア・プラットフォームやOS上で稼働させることができる。
ハンディ氏によると、今年夏中には、IBMのソフトウェア製品として正式出荷する見通しだという。なお、今回の一般向けベータ・リリースに先立ち、企業ユーザー25社がソフトウェアのテストを行ったとしている。
トランジティブの社長兼CEO、ボブ・ウィーダーホールド氏によると、同社のQuickTransitの技術は、AppleがPowerプロセッサからIntel・プロセッサへの移行に使っている「Apple Rosetta」の中核機能を提供しているという。
ウィーダーホールド氏は、今後もベンダー各社と同様の開発プロジェクトが実施されるとの見通しを示している。「いずれ、あらゆるサーバで、あらゆるアプリケーションを稼働させることができるようになるだろう」
プンドITのアナリスト、チャールズ・キング氏は、IBMのメリットについて、独立系ソフトウェア・ベンダー(ISV)が、堅牢なSeries pサーバ上でLinuxアプリケーションを簡単に稼働させることができる点を挙げる。「System p上で稼働する新たなアプリケーションによって、非常に興味深い展開を期待できる」(同氏)
キング氏によると、x86ハードウェア環境は、Linuxの成長を支えた重要なプラットフォームだが、エンタープライズ・クラスのUNIXサーバ上で基幹業務アプリケーションを稼働させたいと考える企業ユーザーは依然として多いという。
仮想化技術を使えば、ISVがアプリケーションを移植する際に動作を容易にチェックすることも可能になる。また、Powerベースのサーバにネーティブに対応していないアプリケーションや、移植が困難なアプリケーションでも稼働させることができるため、ISVによる移植作業を待たずに利用することができる。
しかしその一方で、データベースなど、パフォーマンスが重視されるアプリケーションには適していないとされている。
イルミネータのアナリスト、ジョナサン・ユーニス氏は、業界標準のx86ハードウェアを使うか、独自技術のUNIXハードウェアを使うかという判断は、それぞれのプラットフォームに対するユーザーの満足度にかかっており、ユーザーの満足度は、技能のレベルや好み、主要ベンダーへの信頼度に左右されると指摘する。
「自動車を買うときと同じだ。日産を選ぶ人もいれば、BMWを選ぶ人もいる」というのがユーニス氏の見方だ。
(トッド・ワイス/Computerworld オンライン米国版)
米国IBM
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米国トランジティブ
http://www.transitive.com/
提供:Computerworld.jp