SAP、経営管理ソフト・ベンダーのアウトルックソフトを買収――CFO向け製品ポートフォリオを拡充へ

 ドイツのSAPは5月8日、経営管理ソフト・ベンダーの米国アウトルックソフトを買収すると発表した。CFO(最高財務責任者)向け製品ポートフォリオの拡充を図り、Oracleなどのライバル企業に対抗するのがねらいだ。

 約250人の従業員を抱えるアウトルックソフトは、コネチカット州スタムフォードの本社以外にイタリアのミラノなどにも拠点を置いており、創立当初から世界市場を視野に事業を展開してきた。同社の顧客のうち、4割は米国外のユーザーで占められている。

 SAPのシニア・バイスプレジデント兼分析業務担当ゼネラル・マネジャー、サンジャイ・プーネン氏によると、同社はアウトルックソフトの買収を今後30日以内に完了する意向だ。なお、買収金額は明らかにしていない。

 SAPは過去2年間、CFO向けソフト・スイートの完成を目指して製品強化や企業買収などを行ってきた。

 最初の動きは、財務アプリケーションを搭載した「mySAP ERP 2005」の出荷だった。また1年前には、内部統制/コンプライアンス・ソリューションの専門ベンダーであるバーサ・システムズを買収するとともに、ガバナンス/リスク/コンプライアンス管理事業部門を設立。さらに今年2月には、分析ソフト・ベンダーのパイロット・ソフトウェアを買収している。

 プーネン氏は「これらの製品をCFO向けの統合スイートにまとめ上げるというのが当社の考えだ」と語った。

 もっとも、CFO向け製品の市場が重要だと認識しているのはSAPだけではない。業務アプリケーション分野でSAPのライバルとなるOracleも、買収によって製品ポートフォリオを拡充中だ。例えば、同社は今年3月、BI(ビジネス・インテリジェンス)ソフトウェア・ベンダーのハイペリオンを33億ドルで買収すると発表した。

 また、BIベンダーのBusiness Objectsも、財務ソフト・ベンダーのカルテシスを2億2,500万ユーロで買収することを4月に明らかにした。Business Objectsは、2005年にもSRCソフトウェアを買収している。

 こうした他社の動きに対し、SAPは、比較的規模の小さい企業の買収を繰り返すというよりも、数十億ドル規模の大規模な買収によって製品ラインを埋めてきた。

 SAPとアウトルックソフトは、これまで正式な関係はなかったが、アウトルックソフトの社長兼CEOであるフィル・ウィルミントン氏によると、同社の強力な顧客ベースに含まれる700のユーザーのうち150のユーザーがSAPのソフトを併用しているという。

 アウトルックソフトは1999年の設立以来、年率25%で急激に成長しており、買収対象になるとは予想されていなかった。「上場も検討していたが、数カ月前にSAPからの買収提案を受け、市場で自社製ソフトの認知度を高める1つの方法と考えるようになった」とウィルミントン氏は語っている。

 またアウトルックソフトは、Microsoftとの間に強力な関係を築いている。アウトルックソフトの顧客の多くが、同社製品を「Microsoft SQL Server」や「Microsoft Office Excel Add-in for SQL Server Analysis Services」と一緒に使っているからだ。ウィルミントン氏は、今後はSAPの「NetWeaver」がアウトルックソフトの選定プラットフォームになるとしている。

 一方、SAPのプーネン氏は、アウトルックソフトがSAPとMicrosoftの関係強化に一定の役割を果たすことを期待しているようだ。SAPとMicrosoftの関係は、今のところ「Duet」の共同開発という形で続いている。Duetは、「mySAP ERP」と「Microsoft Office」とを連携させるツールである。

 プーネン氏は、アウトルックソフトの製品がDuetを巡るシナリオの1つになる可能性を示唆した。すなわち、財務管理といった特定のビジネス分野に重点を置く追加的な統合機能を顧客に提供するため、MicrosoftとSAPがアウトルックソフト製品を活用するというシナリオだ。同氏によると、CFOの多くは、使い慣れたOfficeスイートから多くのアプリケーションにアクセスできることを望んでいるという。

(チャイナ・マーテンス/IDG News Service ボストン支局)

SAP(ドイツ)
http://www.sap.com/
アウトルックソフト(米国)
http://www.outlooksoft.com/

提供:Computerworld.jp