デスクトップ仮想化が本格普及の兆し――Vistaの新ライセンス方式が普及を牽引?

 デスクトップ仮想化の市場が急速な勢いで拡大しつつある。新製品が次々に登場しており、その需要の高まりが調査会社の調査結果からも鮮明になってきた。

 企業は、社内のデスクトップ・コンピュータ1台1台にソフトウェアをインストールするのでなく、より低コストで運用管理しやすい新たな方法として、デスクトップ仮想化に注目し始めている。

 デスクトップ仮想化の普及を促しているもう1つの要因はWindows Vistaの登場にある。Vistaを導入するにはハードウェアのアップグレードが必要になるケースが多いとされるが、デスクトップ仮想化技術を使って運用を行えばそのコストを最小限に抑えることができるからだ。

 デスクトップ仮想化には2つの手法がある。1つは、デスクトップOSとソフトウェア・アプリケーションをリモート・サーバ上で稼働させ、それぞれのプログラムに複数のデスクトップからアクセスするというもの。そしてもう1つは、デスクトップ・コンピュータをいくつかの仮想マシンに分割し、仮想化サーバのように複数のアプリケーションとOSを同時に稼働させるというものだ。

 デスクトップ仮想化の新製品を近く発表する予定のVirtual Ironで最高マーケティング責任者を務めるマイク・グランディネッティ氏は、ユーザーの動向について、「大企業や中規模企業ではすでにパイロット・テストを始めているところも多い」と述べている。

 クリアキューブ・テクノロジーが4月10日に発表したデスクトップ仮想化ソフトウェアの最新版「Sentralバージョン5.5」を使えば、デスクトップをデータセンターの物理ブレード・サーバ、もしくはVMwareの仮想化ソフトウェアが稼働する仮想サーバ上で運用することができる。また、1台のデスクトップに異なるOSとアプリケーションを配布することも可能だ。

 同社はこれまでもデスクトップとリモート・サーバ間で1対1の接続を実現する機能を提供していたが、バージョン5.5は本格的なデスクトップ仮想化をサポートする初の製品となる。

 クリアキューブの製品管理担当ディレクター、トム・ジョセフィ氏によると、同社の製品は今のところ軍や病院といった特定の環境で使われるケースが多いという。その理由は、デスクトップ環境がデータセンターのサーバ上に置かれるため、ユーザー側で必要とするハードウェアがモニタ、キーボード、マウスだけで済むからだ。

 「デスクトップ・ユニットを完全に密閉できるため、手術室でも安心して使用できる。稼働部品やファンがないため、衛生上も優れている」(同氏)

 ソフトウェア・アプリケーションをサーバからデスクトップに配信する製品で知られるCitrix Systemsは4月9日、同社初のデスクトップ仮想化製品「Desktop Server 1.0」を発表した。同製品はセキュリティ重視の設計手法を採用しており、OSのマイグレーションを簡単にできるほか、デスクトップの運用管理コストを節約できる。

 デスクトップの仮想化の導入を検討する最大の理由は運用管理の効率化である。ゴールドマン・サックス・グループのIT支出調査では、回答したCIOの36%がこの理由を挙げている。ちなみに、そのほかの理由はセキュリティ(32%)とコスト(29%)である。

 ITマネジャーは、Vistaに移行するにはハードウェアのアップグレードに莫大なコストがかかると懸念しており、このこともデスクトップ仮想化の普及を促す理由の1つと考えられる。

 Microsoftは4月2日、Vistaのライセンス方法に変更を加え、企業がVistaをサーバからシンクライアント・デスクトップに追加料金なしで配布・使用できるようにした。また、同社は「Windows Vista Enterprise Centralized Desktops」という新たなサブスクリプション・ライセンスの提供を開始し、一元管理されるサーバ上の仮想マシンにVistaをホスティングしてPCにストリーミングできるようにした。

 VMwareのエンタープライズ・デスクトップ・プラットフォーム/ソリューション担当ディレクター、ジェリー・チェン氏は、Microsoftのこうした取り組みについて、「顧客がデスクトップ仮想化に大きな価値を見出していることを知ってそうしたのだと思う」と語る。

 「5~10年後には、OSを仮想マシンで運用するのが当たり前の時代になっているはずだ」と同氏は断言する。

(ロバート・マリンズ/IDG News Service サンフランシスコ支局)

提供:Computerworld.jp