Windows API実装「Wine 2.0」がリリース、「Office 2013」をサポート

 WindowsアプリケーションをMac OS XやLinuxで実行するためのWindows API実装であるWine開発チームは1月24日、「Wine 2.0」を公開した。

 Wineは「Wine Is Not an Emulator」の頭文字をとったもので、Linux、Mac OS X、BSD系などPOSIX準拠のOS上でWindowsアプリケーションを動かすための互換性レイヤー。Windows APIコールをPOSIXコールに変換するというアプローチを採用し、仮想マシンやエミュレータのようなWindowsのロジックをシュミレーションする手法ではないため、性能やメモリの面で負荷が少ないとしている。

 Wine 2.0は2008年6月に公開されたWine 1.0以来のメジャーリリースとなる。1年以上の開発期間を経ての正式リリースとなり、約6600もの変更が加わった。

 大きな特徴となるのが、「Microsoft Office 2013」のサポートとMac OS Xの64ビットアプリケーションのサポート。64ビットではMonoエンジンでも64ビットのサポートが加わっている。このほかにも多数の新しいアプリケーション、ゲームがサポートされている。

 Direct3Dでは、sRGBのリード/ライトなどバージョン10および11の機能が多数実装された。グラフィックカードデータベース「WineD3D」がサポートするグラフィックカードも増えたという。グラフィック関連ではDirect2Dでウィンドウ、ビットマップ、GDI DCレンダリングターゲットをサポートした。また、D3DX(Direct3D 9)、DirectDrawについても強化されている。

 音声・動画ではGStreamer 1.0をサポートし(これまではバージョン0.10だった)、音声と動画のストリームが可能という。DirectSoundでは5.1と4.0の両フォーマットからステレオへのダウンミキシングをサポートした。テキストとフォントでは、DirectWriteのサポートを拡大し、PDFファイルへのフォント組み込みなどの機能強化が加わっている。

 インターネットとネットワーキング関連も強化が図られており、Geckoエンジンのアップデート、Web Services APIのサポート、国際化ドメイン名前解決のサポート、GnuTLS経由でのさまざまなSHAハッシュのサポートなどが加わった。XMLとJavaScriptの高速化、JSON対応、長いURLの処理なども改善点となる。

 2.0ではまた、日本語のひらがな、カタカナ、全角と半角を利用できるようになった。

 開発チームは時間ベースのリリースに移行する計画を立てており、Wine 2.0はその第1回目となる。時間を優先させるため、開発中の機能が入らずに次のリリースに回ることもあるとしており、今回についてはDirect3Dコマンドストリーム、フルHIDサポート、Androidグラフィックドライバーなどが漏れた機能として挙がっている。

Wine
https://www.winehq.org/