フリーのWindows API実装「Wine 1.8」リリース

 Wine開発チームは12月19日、WindowsアプリケーションをMac OS XやLinuxで実行するためのWindows API実装「Wine 1.8」をリリースした。「DirectWrite」と「Direct2D」の実装、最新のPulse Audioドライバの導入など多数の新機能が加わった。

 Wine(Wine Is Not an Emulator)はWindowsアプリケーションをMac OS XやLinux、各種BSDといったPOSIX準拠のOS上で動かすためのAPI互換レイヤ。Windows APIをその場でPOSIX命令に変換するため、エミュレーションと比較して性能やメモリ消費などのオーバーヘッドが少ないとしている。

 Wine 1.8は2013年夏に公開されたWine 1.6以来のリリースで、17ヶ月の開発期間を費やした。4回のリリース候補(RC)版公開を経て正式版公開となり、合計で約1万3000の変更が加わったという。主要な変更点としては、MicrosoftのDirectXコンポーネントである「DirectWrite」と「Direct2D」の実装がある。DirectWriteでは、システムあるいはカスタムフォントのコレクションからのフォントファイルの読み込みや、類似したフォントフェイスを組み合わせてのフォントファミリの構築、基本的なテキストレイアウトのサポートなどの機能が実装された。汎用のレンダリングインターフェイスを利用した任意のターゲットへのレンダリングが可能で、白黒とグレイスケールでのアルファビットマップを生成できるという。

 グラフィックではDirect2Dのサポートのほか、インターレースモードでのPNGファイルのエンコードが可能となり、GdiPlusでのアニメーションGIFのサポートも改善した。

 Direct3DではDirect3D 11をサポートし、DXGI 1.1インターフェイスも多数実装、これによりDirect3D 10/11アプリケーションのサポートを改善できるという。DirectDrawでも多数の機能強化が加わった。

 音声と動画では、新たにPulse Audioドライバを導入した。Pulse Audioが起動している場合は自動で同ドライバが選択される。このほか、OpenAL SoftライブラリベースのXAudio2を実装、Video Mixing Renderer 7、AVIファイルのエンコードと圧縮もサポートした。

 カーネルではWindows 8.1や10としてWindowsバージョンのレポート設定ができるようになった。このほか、init once同期メカニズムのサポート、Processジョブの実装、UTF-7エンコードのサポートなど多数の強化が加わっている。

 さらにMacOS Xの64ビットアーキテクチャに対応した。だが、ABIの問題からwin64との互換性は100%ではないと警告している。

 このほかアプリケーションとゲームのサポートも拡充し、印刷、インターネットとネットワーキングなどについても機能を強化した。

Wine HQ
http://www.winehq.org/