「Wine 1.6」リリース、Mac OS X版ではX11が不要に

 Wine HQ開発者は7月18日、最新安定版の「Wine 1.6」を公開した。WineはWindowsアプリケーションをLinuxなど他プラットフォームで実行するためのWindows API実装。Wine 1.6ではMac OS Xドライバーや.NETアプリケーションサポートのための「Mono」ランタイムなどが特徴となる。

 Wineは「Wine Is Not an Emulator」の略で、Linux、FreeBSD、Mac OS X、SolarisなどでWindowsアプリケーションを動作させるための互換レイヤー。ハードウェア環境ごとWindowsをエミュレーションするのではなく、Windows API互換のAPIやWindows向けバイナリの実行環境をオープンソースで提供することで、メモリや性能面などのオーバーヘッドを損なうことなくWindowsアプリケーションを実行できる。ライセンスはGPL。

 Wine 1.6は2012年に公開されたWine 1.4以来の安定版。16か月の開発期間で約1万件の変更が加わったという。大きな変更点としては、Mac OS X環境においてX11を不要するネイティブのMac OS Xドライバ実装が挙げられる。OpenGLやウインドウ管理、クリップボード、ドラッグ&ドロップ、システムトレイなどが実装されており、Mac OS Xのデスクトップ環境との統合を強化した。X11なしでWineを利用できるようになるが、遠隔からの利用などの用途のためにX11も継続してサポートするという。なお、利用にはMac OS X 10.6以上が必要とのこと。

 ユーザーインターフェイス関連では透過ウィンドウの完全なサポートが行われた。カラーキーとアルファブレンドに対応する。また、DIBエンジンによりウィンドウレンダリングがクライアント側で処理されるようになった。DIBエンジンはテキストレンダリング、ビットマップスケッチ、アルファレンダリングなどで性能を大幅に強化したという。

 .NETサポートでは、「Mono」ランタイムをMSIファイルとしてパッケージした。Monoが充分ではない場合は、「.NET 4.0」ランタイムがインストールされるという。

 ARM 64を初期サポートし、DragonFlyのサポートも加わった。Android NDKを利用したAndroidサポートも実験的に加わっている。一方で、AlphaとSparcプラットフォームのサポートは削除された。

 このほか、Direct3D、DirectDraw、プリンター、インターネット/ネットワークなどでさまざまな強化が加わり、ビルトインアプリケーションも拡充した。国際化では、日本語で縦書きテキストのサポートが加わっている。

Wine HQ
http://www.winehq.org/