設定を統合した「Qt 5.8」が登場

 The Qt Companyは1月23日、オープンソースのクロスプラットフォームUI/アプリケーション開発フレームワーク「Qt 5.8」を公開した。設定関連の改善を図ったほか、「Qt Wayland Compositor API」など、これまで技術プレビューだった機能が正式扱いになっている。

 Qt 5.8は2016年6月に公開されたQt 5.7に続く最新版。当初2016年内にリリースの予定だったが、予定より遅れての公開となった。

 最大の特徴は、組み込みを中心にユースケースにQtを適用しやすくするよう柔軟性を持たせる「Qt Lite」プロジェクト。具体的には、Qt設定に利用するシステムのほとんどを書き直し、Qt設定に関するシステムを1つに統合したという。新しいシステムを使うことで、ユースケースに合わせてQtを設定できるようになり、不要な機能を除外できるためにROMやRAMの節約につながるとしている。軽量のQMLアプリケーションを動かすのに必要なQtのバイナリサイズは5.6と比較して60%以上削減できるという。

 Qt 5.7で技術プレビューとして導入したWayland Compositor作成のための「Qt Wayland Compositor API」が新たに正式扱いとなった。QMLとC++の両方のAPIを備え、複数の画面を処理できる。カスタムのホーム画面とアプリケーションマネージャーに容易に実装でき、固有のUIを持つ複数のアプリケーションを含む組み込みシステムの構築が可能という。

 デバイスバスのやりとりとプロトコルにQt APIを利用できるQt Serialbusも正式扱いとなった。Qt NetworkとWeb SocketsでTLS PSK暗号化スイートをサポートした。Qt Networkはまた、QNetworkAccessManagerを利用してDiffie-Hellman鍵共有、HTTP/2の設定ができる。

 ネットワーク関連では、Qt Bluetoothで低消費電力版のBTLE Peripheralのサポート(Mac OSとiOS)、BTLE Centralのサポート(WinRT)が加わった。認証のQt Network Authorizationも技術プレビューとして導入した。現時点でOAuth 1と2を利用できるという。

 Qtの宣言型UI言語であるQMLとアプリケーションフレームワークのQt Quickも強化された。QMLではエンジンがディスク上のQMLとJSファイルのバイナリ表現のキャッシュをサポート、これにより起動時間の短縮、エンジンのメモリ消費の削減が図れるという。Qt QuickではシーングラフをリファクタリングすることでOpenGLへの依存を減らした。これによりDirect3D 12バックエンドを実験的にサポートできるようになり、VulkanグラフィックAPIなど他のバックエンドの作成も可能になった。

 動的なWebコンテンツのレンダリングのための機能を提供するChromiumベースのQt Webengineは、Chromium 53ベースにアップデートし、Webページの印刷が可能になるなどの強化も加わった。

 このほか、SCXMLファイルからステートマシンを作成する機能を提供するQt SCXMLは本バージョンで正式機能となった。音声読み上げ機能を持つQt Speechも新しいモジュールとして加わっている。

 Qt 5.8に加えて、Qt Creator 4.2.1とQt for Device Creationのアップデート版も公開している。

The Qt Company
http://www.qt.io/