QtがオープンソースライセンスをLGPLv2.1からLGPLv3へ変更、「スタートアップエディション」も作成へ
オープンソースのクロスプラットフォームのUI・アプリケーション開発フレームワークを提供するQt Companyは1月12日、オープンソース版のライセンス変更を発表した。この結果、ライセンスはこれまでのLGPL(Lesser General Public License)v2.1からLGPLv3になる。次期版「Qt 5.7」より変更を反映する予定だ。
Qtはオープンソースと商用のデュアルライセンスをとるが、オープンソース版では1998年に立ち上げた非営利団体KDE Free Qt Foundationの下で方針などを定める。ユーザーを取り巻く開発や実装環境の変化を受け、QtとKDE Free Qt Foundationはこの1年の間、ライセンスについて話し合いを進めてきたという。
その結果、作成した最新のソフトウェアライセンス合意では、ライセンス要件としてこれまでメインのライセンスとして採用してきたLGPLv2.1をLGPLv3に変更することになった。LGPLv2.1はコードの改変や変更と再配布や利用で制限があり、LGPLv3ではエンドユーザーの権利をさらに保護できるとしている。LGPLv2.1はライセンス要件から正式に削除され、LGPLv3、そして一部のGPLv2採用プロジェクトとの互換性を目的としたGPLv2がライセンス要件となった。ツールとアドオンについてはGPLv3となる。
なお、Qtはすでに2014年末に公開したQt 5.4でLGPLv3をライセンスの選択肢として追加しており、Qtモジュールを同ライセンスの下で公開している。
4月に予定している次期版「Qt 5.7」よりこれらの変更を反映するとしており、Qt 5.7はLGPLv2.1では公開されない模様だ。Qtによると、今後Qt EssentialsについてはLGPLv3とGPLv2および商用ライセンスで、Qtアドオンについては、オープンソースで提供されているものについてはLGPLv3とGPLv2および商用ライセンスで、商用ライセンスで提供されているものについてはGPLv3と商用ライセンスで公開する。Qt Creatorなどのツールとアプリケーションについては、GPLv3と商用ライセンスで提供するとしている。これにより、Qt for Application DevelopmentはすべてGPLv3の下で利用でき、GPLv2との互換性も維持できるとしている。また、LGPLでライセンスされたライブラリはLGPLv3に統一されるという。
このほか、新しい合意ではX11だけではなく、3年前に加わったAndroid、それにiOS、Mac OS X、Windows、Windows Phoneなどの主要なデスクトップとモバイルOSもカバーするようになった。また、リリース済みのQtの一部ではない貢献についてもカバーされるようになった。
Qtはあわせて製品ラインについての変更も発表している。Qt Charts、Qt Data Visualization、Qt Virtual Keyboard、QML Profiler、Qt Test Integrationなどこれまで商用のみで公開されてきた一部のモジュールやツールをGPL v3で公開し、Qt Quick Compilerの機能をQt QMLモジュールに統合するなどの簡素化も進める計画だ。
商用版では変化はないが、小規模企業やスタートアップからの要望を受けて、価格を下げた”Qt for Start-Ups”(仮称)という新しい商用バージョンを作成する計画も明かしている。
The Qt Company
http://www.qt.io/