iOSとAndroidに正式対応した「Qt 5.2」リリース

 フィンランドDigiaは12月12日、オープンソースのUI/アプリケーション開発フレームワーク「Qt 5.2」をリリースした。AndroidとiOSを正式にサポートするなど、モバイル関連が強化されている。

 Qt 5.2は7月の5.1以来のメジャーリリース。開発チームは「これまでで最高のQtになった」と述べており、大きな変更点としてはQt 5.1で実験的に対応したAndroidおよびiOSへの正式対応がある。Ubuntu Mobile対応も加わり、BlackBerry、Sailfish(ファインランドJollaが開発するMeeGoの流れを汲むモバイルOS)などもサポートすることから、開発チームは「最も幅広いモバイルOSに対応するネイティブクロスプラットフォーム開発フレームワーク」と述べている。開発者は既存のデスクトップや組み込みアプリケーションを容易にスマートフォンやタブレット向けに公開できるという。

 ただし、AndroidとiOSについてはQt Quick、Qt Sensors、Qt Multimediaなど主要なQt APIで対応しているものの、Qt WebKitについてはまだAppleのApp Storeによる制限があるためiOSでは利用できないという。Qt Bluetooth、Qt NFCも未対応で、今後のリリースでサポートしていくとのこと。また、Android、BlackBerry、SailfishについてはQt Creator IDEで開発できるが、iOSについてはまだ対応していない。

 Qt 5.2ではQt Mobileエディションも導入した。10月のイベントで発表していたもので、モバイルアプリ開発者向けの機能パッケージとなる。デスクトップ版についてもQt Quick Controlsの強化やQWidgetベースのアプリケーションのQt Quick統合が容易になるなど、多数の細かな機能修正や強化が加わっている。

 Qt QMLとQt Quickも大幅に強化された。Qt QMLでは、新たにQt向けに開発したJavaScriptエンジンを搭載、V8 JavaScriptエンジンへの依存性がなくなった。JITが利用できないCPUアーキテクチャやApp StoreのポリシーによりJITを利用できないiOSプラットフォームでも動くモードを持つ。これまで問題となっていたQtとJavaScriptコード間での性能問題が解決されたという。Qt QuickではSceneGraphのレンダリングを書き直し、アプリケーションのレンダリングの性能を大きく改善するという。メインのスレッドに負荷が集中した場合でもレンダリングスレッド上で複数のアニメーションを動かせる「Animator」というアニメーションタイプも導入された。

 Qt Creatorはバージョン3.0となった。モバイルプラットフォーム対応を強化したほか、新しいモジュールやAPIも加わった。3.0ではまた、プラグインAPIの安定性も改善した。これは将来的にQt Creator向けのサードパーティプラグイン拡張の土台となるという。

 Qt 5.2はプロジェクトのWebサイトより入手できる。

Qt
http://qt.digia.com/

フィンランドDigia
http://digia.com/