「GNU sed 4.2.2」リリース――メンテナはFSFへの異議を唱えて辞任

 オープンソースのデータ処理プログラム「GNU sed」開発チームは12月22日、最新版「GNU sed 4.2.2」をリリースした。同時にプロジェクトのメンテナンスを8年以上務めたPaolo Bonzini氏はがメンテナを辞任することも発表された。氏はFree Software Foundation(FSF)の方針に異議を唱えている。

 GNU sedはファイルやパイプなどからデータを入力し、それに対し置換やフィルタといった処理を実行してファイルやパイプに出力するデータ処理プログラム。ファイルからのデータ抽出やテキストファイルの編集などに利用される。オリジナルのsedはUNIX向けに開発されたツールだったが、GNU sedはさまざまなプラットフォームで動作する。ライセンスはGPLv3。

 4.2.2は2009年に公開されたバージョン4.2系の最新版となり、細かな機能強化やバグ修正が中心となる。行数が2の31乗を超えるファイルについても正しく処理できるようになったほか、不完全なマルチバイト列に対し無限ループが発生する問題が修正された。そのほか、現在のインプットファイル名を表示するFコマンドやNULL文字によって行を分割する-z(–null-data)オプションの追加、–binaryオプションによるsed -iやs///w、wコマンドの挙動変更などが行われている。

 なお、sedプロジェクトのメンテナであるBonzini氏は4.2.2リリースに合わせて、GNU sedおよびGNU prepのメンテナを辞める決断を表明した。これは、今月明らかになったGNU TLSとFSFとの衝突を受けてのもの。ここでGNU TLSのメンテナの1人であるNikos Mavrogiannopoulos氏は、FSFとの意見相違を理由にGNU Project傘下から出る方針を発表、FSFにコードの著作権を託さないことを表明した。これに対し、FSFの創始者であるRichard Stallman氏はGNU TLSの著作権はすべてFSFに帰属しており、プロジェクト名とコードはFSFの管理下にあるとした。Stallman氏はメーリングリストにて、Mavrogiannopoulos氏はフォークする場合、名称を変更する必要があるとも述べている。

 Bonzini氏は「一部のことについて、FSFとRichard Stallman氏が下す決断に同意できない」とし、1)FSFの方針、2)GNUとFSFとの関係、3)GNUの存在感の低下、の3つを今回のメンテナ辞任の背景に挙げている。

 FSFの方針については、C++よりもCを好むなどGNU Projectにおけるコーディング規約が時代に即して変更されていない点やセキュリティについての言及がない点を例に挙げている。「GNUプロジェクトがリーダー的存在になる唯一の方法は、FSFの勧告を無視することしかない」とBonzini氏は記している。またGNUとFSFの関係では、FSFがGNUブランドの価値を高めるための作業を行っておらず、資金問題で開発が遅れているプロジェクト、活発ではないプロジェクトが多数あると問題を指摘している。「フリーソフトウェアが多数の分野で独占している現在において、(FSFは)現代的であるための充分な活動を行っていない。フリーソフトウェアがときに『オープンソース』と呼ばれ、ほとんどの人がユーザーの自由を気にしない現在において、充分というにはほど遠い」と批判している。

 このような理由を挙げ、Bonzini氏は「FSFの背後にある思想はこれまで通り支持している」としながら、GNU sedとGNU prepのメンテナを辞任し、Autoconf、Automake、Libtool、gnulibなどのプロジェクトに対してもコミットアクセス権についても放棄するという。GCCとGNU Smalltalkについては、アクセスコミット権を維持するという。

GNU sed
http://www.gnu.org/software/sed/