Finnix:システム管理者向けのコンパクトなLinuxディストリビューション
Finnixは、x86/AMD64とPowerPCのどちらのアーキテクチャでも使える。最新のバージョン92.0では、これまであったDebian SSL(Secure Sockets Layer)の脆弱性が修正されている。
このディストリビューションのすばらしさの1つとして、サイズの小ささが挙げられる。SquashFSを使えば、全部で300MBほどのFinnixを、100MBちょっとのブート可能なディストリビューションに圧縮できる。そのコンパクトさにもかかわらず、Finnixには、Logical Volume Manager 2(LVM2)、パーティションの暗号化、複数ファイルシステムのサポートなど、システム管理者向けの最新のテクノロジやアプリケーションが収められている。
利用するにはまず、作者のサイトからFinnixをダウンロードしてCDに焼く。このディストリビューションは多分システムのリカバリに使うことになるので(作者Ryan Finnie氏による開発の主な狙いもそこにあった)、ライブCDとしてのブートが好ましい。Finnix内のツールでCDにバックアップを取るなど、別の用途でCDドライブを使いたければ、FinnixをRAMに読み込むこともできる。ただし、その場合はパッケージ全体を読み込める十分なRAM(できれば512MB以上)が必要になる。
ハードディスクドライブへのインストールも、作者のサイトにある難解なドキュメントを参照すれば可能だ。また、Finnixが稼働している状態で「finnix-thumbdrive」スクリプトを実行すれば、FinnixのブータブルUSBドライブを作成することもできる。
Finnixをブートすると、メニューとオプション群が現れる。プロセッサのタイプ(x86/AMD64またはPowePC)は自動で検出されるようになっているが、ユーザ自身が選ぶこともできる。このブートメニューからは、メモリハードウェアの診断ユーティリティMemtest86+など、その他の便利なツールも実行できる。システムのハードディスク上にある別のオペレーティングシステムをブートする場合にはSmart Boot Managerが、DOS形式のコマンドラインインタフェースのほうがよければFreeDOSが使える。
アーキテクチャの選択後、Finnixは問題なく立ち上がり、すべてのハードウェアが検出される。その後、シンプルなコマンドラインインタフェース(CLI)が現れる。グラフィカルユーザインタフェース(GUI)は用意されてない。
GUIはなくても、Finnixのツールとユーティリティの豊富さに、システム管理者やシステムリカバリを行うユーザをきっと満足するだろう。Hiren’s BootCDのようなリカバリツールを使ってもよいのだが、柔軟性はFinnixのほうが高い。適当なスクリプトを書いてFinnixのユーティリティ群を活用する場合には、その違いが顕著に出る。
Finnixのディスク/パーティション操作およびリカバリツールのなかでも、Partimageは特筆に値する。機能面でNorton Ghostに匹敵するだけでなく、ネットワークサーバからイメージのバックアップやリストアが行える。これ以外にddrescueというデータリカバリツールも付属する。
Finnixには、ファイルシステムの作成や操作のためのツールが数多く存在する。ext2やReiserFSといったファイルシステム用には、それぞれe2fsprogsとreiserfsprogsがある。NTFSパーティションでデータのアクセスやリカバリが必要なら、NTFS-3Gやntfsprogsが使える。また、MacintoshのHFSボリュームに対応したhfsutilsもある。そのほか、Unionfs、Cramfs、Squashfsといったファイルシステムもサポートされている。ボリュームの管理には、Logical Volume Manager(LVM)とLVM2に加え、NTFSとFATに対応したEnterprise Volume Management System(EVMS)なども使える。また、Linuxパーティションの拡張用にPartedも含まれている。
ディスクの操作および管理のサポートに加え、Finnixには監視、ベンチマーキング、診断用の各ツールも含まれている。lm-sensorsでは、CPUの温度、電圧、冷却ファンの状態を監視できる。ベンチマーキングおよび診断については、memtesterがメモリシステムの負荷テストに使え、過熱や規格外の電力などによって断続的に生じる障害の発見にも役立つ。ハードディスクのパフォーマンス評価用には、Bonnie++が付属する。CPU、メモリ、入出力といったシステム全体の負荷テスト用として、stressというツールも利用できる。
Finnixのようなシステムリカバリ用のディストリビューションは、リカバリ対象のデータを外部のメディアにバックアップできなければ十分とはいえない。FinnixはバックアップメディアとしてCDとDVDに対応し、バックアップ作業をなるべく簡単かつ手早く済ませられるcdbackup、wodim、dvdrecordといった焼き付けユーティリティも揃っている。多くの人はGUIツールを使ってデータをメディアに焼いているが、適切なフォーマット、つまりファイルシステムがわかっていれば、コマンドラインでのデータの記録も難しくはない。それでもつまづくようなら、常に
Finnixはシステム管理者向けのディストリビューションなので、ネットワークのスキャンおよび監査用のNmap、強力なネットワークパケット監視ツールtcpdumpなど、便利な定番のネットワーキングツールが付属する。また、snmpといったSNMPツール、インタラクティブなLANトラフィックモニタIPTraf、ipchainsやiptablesなどのネットワークフィルタリングおよびファイアウォール、PPTP、IPsec、SSL用の各種VPNツール、pingやtracerouteといった一般的なネットワークアクセスチェックツールも用意されている。さらには、ethtoolやifdownupなどのネットワークインタフェース管理コマンド、NFS、Samba、FTPのようなネットワークサービスを有効にするツール群も存在する。
今回はパーティション管理ツール、具体的にはPartimageとddrescueを試してみた。パラメータの一部を使わなかったためにいくつか問題は出たが、パーティションイメージの作成、ネットワークドライブへの保存、壊れたディスクのデータのリカバリが無事に行えた。また、CDおよびDVDの焼き付けツールも、パラメータの詳細な説明を参照したうえでコマンドラインから実行を試し、DVDにデータを記録することができた。設定ファイルの編集にはJoeが便利だったが、エディタはそれ以外にもsedやZileが用意されている。Finnixの全パッケージについては、公式サイトで確認してほしい。
Finnix 92.0は、システム管理者にとって便利なディストリビューションだ。データのリカバリ、ハードウェアの診断およびベンチマーキング、ネットワークサービス、監視といった作業ができる数多くのツールを備えたこのディストリビューションに、管理者は大いに助けられるだろう。しかし、システムのブートや操作をグラフィカルな環境で行うことに慣れた普通のユーザ向きではない。FinnixのCLIベースのツールにそれほど複雑なものはないが、使い方はしっかりと理解しておく必要がある。
Finnixに付属するパッケージ群は、特にファイルシステムの管理およびリカバリとCLIのバックアップの面で、満足のいくものだった。ただし、深刻なネットワークのトラブルシューティングには、それ専用に作られたNetwork Security Toolkit(翻訳記事)やBackTrack(翻訳記事)をお勧めしたい。
起動完了
Finnixの各種ツール
man
コマンドの後ろにユーティリティ名を続けて入力し、その詳しい説明を表示させるか、そのツールをインターネットで検索して関連ドキュメントを探すようにすればいい。また、熟練ユーザであれば、mt-stというツールでSCSIテープドライブによるバックアップ/リストア操作を行うこともできる。rdiff-backupを使えば、ネットワーク越しに差分バックアップをとってファイルをリストアすることも可能だ。システム管理者向けのツールが充実