Linux版XBMCに欠けるのは目を見張らせる機能

 オーディオ/ビデオプレーヤなら、Linuxにも数え切れないほどある。だが、システム全体をマルチメディア専用としたいなら、やはりXbox Media Center(XBMC)が必要だ。もともとはXboxゲームコンソール用に設計されたものだが、いくつものプラットフォームに移植されている。筆者が使用しているLinux版XBMCは、まだすべての機能が移植されているわけではないが、なかなか使える。とくにビデオ再生によい。

 XBMCは、初めXbox Media Playerの名で開発された。2002年にオープンソースとしてリリースされ、2004年にはすべてをワンセットにしたメディアセンターに生まれ変わった。ただ、Linuxへの移植はようやく昨年開始されたばかりだ。現在、Ubuntuの各種リリース用にはコンパイル済みバイナリの形で提供されている。Ubuntu以外のユーザはソースからのコンパイルが必要となる。

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XBMC

 一般的なメディアセンター同様、XBMCは内外のさまざまなソースからの画像を表示し、オーディオ/ビデオコンテンツを再生できる。スキン機能を備えているが、デフォルトのProject Mayhem IIIテーマもとてもすばらしい。インタフェースは、Programs、Pictures、Videos、Music、Weatherという5個のメニュー項目に分かれている。このうち、ProgramsはXboxプログラムにアクセスするための項目で、Xbox以外の移植先では無効となる。Weatherは各地の天気情報にアクセスするための項目であり、カスタマイズできる。3つの地域を指定しておくと、XBMCがweather.comによって当該地域の天気を追跡し、現状と予報を取得する。他の3つはそれぞれ画像、ビデオ、音楽にアクセスするための項目である。

 メインインタフェースの下端にはいくつかのボタンがある。Settingsを押すとXBMC設定ページへ移動し、File managerを押すとビルトインファイルマネージャが呼ばれる。設定ページでは、XBMCのスキンやデフォルトカラーなどの全体設定と、画像表示やビデオ/オーディオ再生の個別設定を変更できる。

 XBMCのような包括的アプリケーションでは、ナビゲーションが非常に重要な機能となる。この面で、XBMCの得点は高い。アプリケーション全体をマウスだけで制御できるし、クリック動作も一貫している(左クリックでメニューに入り、右クリックで戻る)。メディア間移動にはオンスクリーンコントロールが便利だし、メディア検索に入力が必要になったときのためにオンスクリーンキーボードもある。

 XBMCで再生するメディアは、ローカルディスクにあってもよいし(NTFS、FAT、ext3など、各種パーティションが可)、USBディスクのような取り外し可能デバイス上にあってもよい。さらに、ローカルネットワークをはさんだメディア再生もできる。たとえば、Sambaを使い、イントラネット上のWindowsマシンからファイルをストリーミングすることができる。また、ファイルマネージャを備えていて、これでパーティション間の――あるいは、ローカルネットワーク上の他マシンからXBMC実行マシンへの――ファイル移動やフォルダ移動ができる。ワイド画面やHDTVの解像度がマシンでサポートされていれば、XBMCもその解像度でビデオを表示できる。

プレーヤ機能

 画像ビューアは、BMP、JPG/JPEG、GIF、PNG、TIF/TIFF、TGA、PCXなど、一般的な画像フォーマットのほとんどをサポートする。また、漫画ビューアとしてCBR/CBZフォーマットの漫画を読むのにも使えるし、画像からEXIFデータを読み取って表示し、それに基づいて画像を自動回転させることもできる。スライドショーアプリケーションを組み込んでいて、フォルダ内の画像を表示することはもちろん、サブフォルダを順次めぐって画像を再帰的に表示することもできる。スライドショーでは、画像の単純表示だけでなく、パンニングやズーミングを使った表示ができるし、順次表示もランダム表示もできる。

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CDのリッピング

 オーディオ再生には、PAPlayer(Psycho-acoustic Audio Player)というXBMC独自のオーディオプレーヤが使われる。WAV、MP3、Ogg、WMA、RealPlayer、AC3、AAC、FLAC、MIDI、オーディオCDなど、いろいろなオーディオフォーマットを試してみたが、どれも問題なく再生できた。XBMCには音楽ライブラリ機能も組み込まれている。これで音楽コレクションをスキャンして、アーティスト、アルバム、ジャンルなどのID3タグ情報を取得し、楽曲フィルタとして利用できる。選んだ楽曲は、お気に入りリストに追加することも、「パーティモード」でランダムに再生することも自由である。ローカルディスクにある音楽はもちろん、イントラネット上の他コンピュータにある音楽もSambaを介して再生できる。

 Linux版XBMCで1つ気に入らないのは、オーディオ再生にOSD(オンスクリーンディスプレイ)コントロールがないことだ。オーディオファイルやトラックの再生が始まったら、プレイリストの最後に到達するまで止める方法がない。また、オーディオリッパがあって、トラックでもCD全体でもリッピングできるはずなのだが、結果が雲散霧消してしまう。いくら探しても、リッピングしたトラックが指定の宛先ディレクトリに――いや、ディスク上のどこにも――見つからない。

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役者でビデオを検索

 ビデオの再生には、DVDPlayerというXBMCのビデオプレーヤが使われる。ビデオCD、DVD、MPEG2、WMV、QuickTime、Real、Flashなど、筆者の手持ちのビデオファイルはどれも支障なく再生できた。ローカルディスクのファイルでも、ネットワークの向こうにあるファイルでも問題ない。オーディオプレーヤ同様、ビデオプレーヤにもライブラリ機能があり、スクレーパを介してIMDBやTV.comなどの外部Webサイトからビデオ情報を取得する。この情報があれば、ジャンル、タイトル、製作年、俳優、監督などの項目でビデオ検索ができる。DVDPlyerには気のきいたOSDコントロールがあり、これでビデオ間移動や字幕の有効化/無効化ができる。

足りないものは多い

 Linux版XBMCには、まだ移植されていない機能がいくつかある。スクリプトをサポートすることになっていて、音楽の再生や天気予報の取得などのスクリプトはすでに組み込まれている。筆者はブラウザスクリプトを試してみた。任意のWebサイトで、そこにどのような画像やビデオやオーディオがあるかを探すためのスクリプトだ。また、ABC TVスクリプトも試してみた。こちらはオーストラリアのABCネットワークからビデオコンテンツのストリーミングを行う。だが、どちらのスクリプトもうまくいかなかった。”segmentation fault”エラーとなって、XBMCがクラッシュした。

 他プラットフォームでは、インターネットストリーミングが最も人気の高いXBMC機能となっている。XBMC-TVには、ダウンロードしてXBMCにフィードできる(はずの)ストリームのリストがある。だが、筆者にはどのストリームの再生もできなかった。しばらくはバッファリングが行われるが、結局、再生できない。

 他のハードウェアではビルトインWebサーバでネットワーク越しにXBMCを制御できるが、Linux版にはまだこの機能が移植されていない。XBMCが動作しているコンピュータにファイルを転送するもう1つのメカニズムとしてビルトインFTPサーバがあるが、これもまだ移植されていない。

結局のところ

 XBMCは有能なメディアセンタアプリケーションだ。機能がまだ揃っていないLinux版でさえ、独立型のメディアプレーヤより勝っていて、包括度も高い。だが、やはり機能不足の感は否めない。とりあえず、音楽プレーヤのOSDコントロールとWebインタフェースはぜひ欲しいところだ。

 現状、XBMCはXboxで使うのが最適のようだ。Linuxデスクトップに機能完備のメディアセンタが欲しければ、LinuxMCEアプリケーションを選んだほうがよい。こちらはTVチューナをサポートし、ホームオートメーションコントロールも備えている。

NewsForge.com 原文