レビュー:3つのMythTV Linuxディストリビューションを比較する

 手持ちのSeries 1 TiVoが古くなってきたので、MythTVを使うことを考えている。MythTVは、古いコンピュータをPVR(personal video recorder)として使うことができるようにするフリーソフトウェアのシステムだ。今週、MythTV用に特化したLinuxディストリビューションであるKnoppMyth、MythDora、MythBuntuの3つを試してみた。その結果、私の場合には総合的にMythDoraが最適だということが分かった――ただしこれらのディストリビューションにはそれぞれ長所と短所があるので、あなたの場合は異なる結論になるかもしれない。

 私がMythTV用に特化したディストリビューションに興味を持ったきっかけとなったのは、先月リリースされたMythBuntu最新版のPublic Alpha 3のリリースだ。なお実は、普段メインのデスクトップマシンとして使用しているUbuntu搭載マシンにMythTVをインストールしてみたところ、オフィシャルのレポジトリのおかげで比較的苦労なくインストールすることができてしまったので、MythBuntuのISOイメージをダウンロードする待ち時間になるまで、その他の選択肢も試してみようなどとは思ってもみなかった。

 MythBuntu Public Alpha 3は、Ubuntu 7.10(Gutsy Gibbon)の開発版をベースとしていて、MythTVのバージョン0.20.1を使用している。423MBのISOイメージとしてBitTorrent経由のダウンロードで入手することができる。

 MythDora 4は、Fedora Core 6をベースとしていて、MythBuntuと同様にMythTV 0.20.1を使用している。1.0GBのDVD ISOイメージか、2枚組みCDのISOイメージとして(直接ダウンロード経由でのみ)入手可能だ。

 KnoppMyth R5F1は、Knoppix 5.0とDebian Sidを部分的に利用しつつも一から新規に構築されている。使用しているMythTVはやや古く、パッチを適用したバージョン0.20だ。584MBのISOイメージとしてBitTorrent経由で入手することができる。

 今回、以上の3つのディストリビューションを、アナログとデジタルの両方のキャプチャカードを搭載したIntelベースのテスト用マシン上でとVMware仮想マシン上での2種類の環境において試してみた。なお記事中のスクリーンショットはVMware上で取り込んだ。

 どのディストリビューションでも、CD/DVDを作成してドライブにセットした後は、オペレーティングシステムをインストールし、MythTVのバックエンドを設定して、MythTVのフロントエンドを起動するという同じ基本手順を行なう。ただしいつもそうであるように、細部にこそ重要な違いがあるものだ。

インストールと設定

MythTV用に特化したディストリビューションのインストーラ開始画面
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MythBuntuでは手動でインストーラを起動する KnoppMythのインストーラはテキスト・ベース MythDoraでは自動的にGUIインストーラが起動する

 MythBuntuのインストールは最初からつまずいた。インストーラは別途取り付けたビデオカードではなく、無効にしてあったオンボードビデオを使用しようとしてXの設定に失敗した。この失敗は通常は修正可能なのだが、ライブCDがXの起動に失敗してシングルユーザモードになってしまったので、まずxorg.confを修正する必要があり、さらにインストールプロセスを再開する方法を見つけ出す必要もあった。とは言えMythBuntuはまだ正式リリースの段階ではないので、ベースのGutsy Gibbonが安定すれば、この問題もおそらく解決されるだろう。

 MythBuntuでは、他のUbuntuベースのディストリビューションと同様に、ブート後ライブCDのシステムが起動するので、インストーラはライブCDのデスクトップから手動で起動する必要がある。インストーラ自体は、他のUbuntuベースのディストリビューションと同様、スムーズに動いた。しかしGTKのテーマは変更する必要があるだろう――これは私が普段よくぼやいているような美的感覚の問題ではなく、ボタンのオンとオフの状態が非常に判別しにくいためだ。インストール時に選択を間違えばハードディスク全体をだめにしてしまう可能性があるため、このことは非常に重要な問題だ。特に、反応時間が低速なライブCDのユーザインターフェースを使用している場合にはなおさらのことだろう。

 インストーラは、通常のシステム用の設定――言語、ユーザ名など――の合間にMythTVの設定の細部についてもいくつか尋ねてくるので、ちぐはぐした感じがするかもしれない。例えばインストーラは、プロプライエタリなビデオドライバをインストールするかどうかという質問(OSをインストールする際の通常の質問)に続いて、MythTVのバックエンドにはチューナーがいくつあるのかという質問(MythTVのインストールについての質問)をし、その次に再びOSのインストールについての質問であるハードディスクのパーティションをどのように分割するのかという質問をした。

 すべての質問に答え終わると、パッケージを選択するための段階はなく、MythBuntuはOSのインストールに突入した。OSのインストールを完了すると、mythtv-setupツールを起動してMythTVの設定を行なうことができた。

 対照的にMythDoraはライブCDではない。MythDoraのディスクからブートするとすぐに、FedoraのグラフィカルなインストーラであるAnacondaが起動する。MythDoraでもやはり、OSレベルの設定に関しては分かりやすかった。MythDoraではインストール時に最低限のパッケージ選択を行なうことができ、プロプライエタリなビデオドライバや、ワイヤレスネットワークドライバや、いくつかのMythTVの開発版パッケージなどのパッケージを選択することができた。

 MythDoraは、最初のOSのインストールの後にいったんリブートする必要がある。そして再起動の際に「初ブート」用ウィザードを一通り実行して、ファイアウォールやSELinuxやサウンドカードの設定など、OSの設定を完了する必要がある。そしてその後にようやく、IR BlasterやリモコンなどのMythTVに関係するシステム設定を始めることができる。なお、通常のMythTVのフロントエンドを自動的に起動するか、あるいはその代わりに省電力のMythWelcomeを起動するかも選ぶことができる。

 MythDoraがインストールするLinuxシステムは、MythBuntuのものとは基本的な部分が一点、すなわちユーザアカウントが異なっていた。MythBuntuでは、インストールの際に一般ユーザのアカウントを一つ作成するように促される。ルートアカウントはないため、システム管理はすべてsudoを使用して行なうことになる。一方MythDoraでは、ユーザ用のmythtvというユーザアカウントに加えて、ルートアカウントもユーザが指定したパスワードで作成される。

MythTVディストリビューションのインストーラ(途中の様子)
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MythBuntuのインストーラは貧弱なGTKテーマのせいでチェックボックスのオン/オフが見分けにくい KnoppMythのインストーラはターミナルウィンドウで動作するが、その間デスクトップ環境は操作できない MythDoraのインストーラは操作しやすく理解しやすい

 KnoppMythはライブCDとして実行することでき、実際ブート後直接的にMythTVフロントエンドモードにすることもできるのだが、今回は最も一般的なMythTV設定である、フロントエンド/バックエンドを組み合わせたマシンとして試した。KnoppMythのインストーラはテキストベースなのだが、OSの設定は他のディストリビューションのもっと派手なGUIのインストーラと同じくらいスムーズに行なうことができた。KnoppMythのアカウント管理の方法は、他の2つのディストリビューションともまた違っていて、mythtvというユーザアカウントを作成するが、それとは別にユーザ自身のユーザアカウントの作成も促す。またルートアカウントも作成し、パスワードはユーザが指定する必要がある。

 OSの基本インストールが完了したら、KnoppMythはリブートして自動的にユーザセッションを開始する。そしてビデオドライバやサウンドカードのテストなどの細部の設定を行なうために2つめのインストーラを起動する。2つめのインストーラでの作業が終了すると、MythTV用の設定プログラムが起動する。

実行中のシステムの比較

 上述したように、3つのディストリビューションにはどれにも0.20.xシリーズのMythTVが含まれている。0.20.xシリーズは、MythTVプロジェクトの最新安定版だ。パッチレベルはディストリビューションによって異なっているものの、どのディストリビューションでもハードウェアのサポートやデインターレースのようなソフトウェアの重要な機能については基本的に同等だ。

 MythTVの先進的な「メディアセンター」機能のすべてを利用することができるようにするための正式パッケージである「MythTV Plugins」についても同様に、3つのディストリビューションはすべて、基本的には同じバージョンを使用している。MythTV Pluginsには、MythArchiveMythDVDMythFlixMythGalleryMythGameMythMusicMythNewsMythPhoneMythVideoMythWeatherなどが含まれている。ただしMythBuntuでのみ、音声/ビデオRSSフィードを扱うための新しいプラグインであるMythStreamが省かれていた。

 レビューを行なうには都合の良いことに、3つのディストリビューションはMythTVのデフォルトのテーマとしてそれぞれ異なるものを選んでいて、MythBuntuは「G.A.N.T.」、MythDoraは「Retro」、KnoppMythは「Titivillus」を使用していた。これらの中ではRetroが圧倒的にかっこ良くて新しい感じがしたので、私の好みとしてはMythDoraに分があった。当然ながら好みは人によって大きく異なると思われるが、使いやすさという観点からはテーマの選択は重要な点になり得る――MythTVのほとんどの設定や操作はキーボードで行なうが、カーソルは隠されているため、メニュー内の現在位置の分かりやすさという点で、テーマがハイライトを行なう方法の違いが大きな違いを生むこともある。

 手間のかからない、クリック一つで起動するMythTVマシンが実現できれば夢のようなのだが、今のところはMythTVユーザは時折、通常のLinuxマシンと同じようにシステム管理を行なう必要があるだろう。このことを欠点(すなわち「MythTVはTiVoほど使いやすくはない」)と考える人もいるが、MythTVの持つパワーの一つであることも忘れてはいけない。つまりMythTVシステムの強みの一つは、変更することができる――プラグインを使用して機能を付け足したり、キャプチャカード、ストレージ、出力用ハードウェアを新しく追加したり、MythTVマシンを複数台接続したりすることができる――ということだ。

MythTV用ディストリビューションのメニューのテーマ
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MythBuntuのテーマは「G.A.N.T.」 KnoppMythのテーマは「Titivillus」 MythDoraのテーマは「Retro」

 これら3つのMythTV用ディストリビューションには、必須ではないパッケージは最低限しか含まれていない。MythBuntuは軽量なOpenBoxウィンドウマネージャを使用しているが、グラフィカルなSynapticパッケージマネージャも含まれているので、Synapticを使用すれば通常のUbuntuレポジトリ経由で提供されているあらゆるものをインストールすることができる。MythDoraは通常のFedoraデスクトップ(Fedoraのパッケージマネージャも含まれる)を提供しているので、GNOMEに慣れていれば簡単に使うことができるだろう。KnoppMythはFluxboxを使用していてテキストモードのAptitudeパッケージマネージャが利用できるようになっているが、インストールするための追加ソフトウェアという点ではあまり多くは提供していない。

選び方

 どのMythTVディストリビューションが自分に最も適しているのかを決めるには、どのような点についての便利さを最も重視するのかを決める必要がある。今回試したところ、ブートとハードディスクへのインストールに最も時間がかからなかったのはKnoppMythで、最も時間がかかったのはMythDoraだった。その一方で、インストールのプロセス自体はMythDoraが最も簡単だった――ステップやオプションの説明が優れていて、MythBuntuでのようにOSの設定とMythTVの設定の順番が入り交じることもまったくなかった。

 当然ながら、インストールプロセスよりも実行中のシステムの能力の方がさらに重要だ。3つのディストリビューションはすべて、MythTVとプラグインに関してはほぼ同等のものを提供している。セキュリティを気にかける場合には、3つのディストリビューションでそれぞれ異なるユーザ/ルートのアカウントの形式を考慮のうえ、最も良いと思うものを選ぶのが良いだろう。MythDoraは最初の時点で最も多くのパッケージをインストールする(したがってインストールに時間がかかる)。このことは軽量なシステムを構築したい場合には欠点となるものの、肥大化しているわけではなく、含まれているアプリケーションにはCD/DVD作成用ユーティリティのK3bなど非常に便利なものもある。

 日常的なシステム管理に関して言えば、KnoppMythはMythBuntuとMythDoraにはかなわない。KnoppMythは、KnoppixのライブCDであるという性質を受け継いでいるため、個々のパッケージをアップデートすることができない。それでも良ければ問題はないが、MythTVのバックエンドのように常に稼動させておく類いのシステムの場合には、通常のディストリビューションのように柔軟性が高く設定可能な部分が多い方が好ましいように思う。

 結論としては、もしTiVoの代わりとなるシステムを今日構築するというのであれば、私はMythDoraを使用するだろう。MythBuntuは大きな将来性を示しているので、7.10の最終版がリリースされればもう一度検討したいと思う(これは部分的には私がメインのデスクトップマシンでUbuntuを使用しているためでもある)が、今のところはまだ採用には早いだろう。とは言えどのディストリビューションを選んだとしても、最新式のMythTVマシンを立ち上げて適切に設定することは、これまでにないほど非常に簡単にできるようになっているということは間違いない。

Linux.com 原文