抜群の相性を誇るUMPCとLinux

 Linuxデスクトップ関連の展示会で2008年最大の目玉といえるのは、6月に台北で開催され、次世代のLinux搭載ハードウェアが出品されたComputexではないだろうか。実際、この展示会にはLinuxを搭載したウルトラモバイルPC(UMPC)が4機種もあった。

 この展示会でIntelは、Atom “Diamondville”プロセッサファミリの次期プロセッサ2種類を披露した。先に出るN270はいわゆるUMPC(IntelはNetbookと呼んでいる)用、もう一方のDiamondvilleプロセッサN230はNettop(主にネットの閲覧に利用される安価なデスクトップ)用だ。N270のほうは、軽くて(重さ1.8kg以下)3時間以上のバッテリ寿命を持つモバイルコンピュータ向けに作られている。

 N270プロセッサは、出荷を間近に控えた4種類のLinuxノートPCに搭載されている。ASUSによるEee PCシリーズの新製品Eee PC 901および1000、UMPCの分野に新たに参入するMSIのWind、そしてAcerのAspire Oneだ。

 Eee PC 901は8.9インチの画面、1GBのRAM、20GBのSSD(ソリッドステートディスク)、130万画素の内蔵Webカメラを備え、内蔵のBluetoothと802.11n無線の各通信に対応している。Eee PC 1000Hでは、XandrosベースのLinuxかWindows XP Homeのどちらかのオペレーティングシステムが選べる。1000Hは画面が10インチ、RAM容量が2GBである点以外は901と同じだが、80GBのハードディスクドライブのオプションも用意されている。価格は1000Hが679ドル、901は629ドルほど。これらASUSの新しいマシンには、同社のこれまでのLinux搭載UMPCと同様、Xandros Linuxの改良版が採用されている。

 現時点で実際にこれらのマシンに触れることは難しい。米国のどの販売業者にあたっても在庫はなく、1、2週間すれば出荷できるというベンダがほとんどだ。

 MSIのWind Notebook(NB-Linuxとも呼ばれる)は、CPUがIntel Atom N270(1.6GHz)でDDR2 667MHzのメモリ1GB(最大2GBまで可)を備えている。ASUSと異なり、MSIではSSDではなく従来のハードディスクを使用しており、デフォルト構成のハードディスク容量は80GBとなっている。

 UMPCにしては、Wind Notebookの10インチ(解像度は1024×600)という画面サイズはありがたい。また、このマシンのネットワーク通信機能は802.11b/g無線に対応している。最近のほぼすべてのUMPCと同様、Wind Notebookにも130万画素のWebカメラが付属する。また、オペレーティングシステムはNovellのSUSE Linux Enterprise Desktop(SLED)10 SP2となっている。

 当初、MSIはWind Notebookの販売開始を5月としていた。だが現在、同社は部品の供給不足を理由に、このミニノートPCの大量出荷は7月下旬になると予想している。あるいはさらに遅れる可能性もあり、Amazon.comでは3~5週間後の出荷も難しいと購入希望者に通知している。発売時の価格は500ドル程度になる見込みだ。

 奇妙なことだが、MSI Wind Notebookの姉妹製品であるAdvent 4211はすでに英国で出回っている。ただし、英国の販売業者PC Worldで販売されているAdvent 4211は、OSがWindows XP Homeのものしかない。おそらくこのAdvent製PCでもSLEDは動作するはずだが、英国のLinuxハッカーたちはWindやAdvent製PCにUbuntu 8.04をインストールしているようだ。

 AcerのAspire Oneには、少しマイナーなLinpus Linuxディストリビューションが搭載される。マシンのスペックは、512MBまたは1GBのRAM、8GBのSSD、8.9インチ(解像度1024×600)のディスプレイ、802.11b/g無線、Webカメラとなっている。また、SSDの代わりに80GBのハードディスクも選べる。最初のリリースにはないが、いずれAcerは3G携帯電話による無線接続機能の提供も予定しており、802.16eモバイルWiMAXをオプションとして検討している。

 その他のAtom搭載UMPCと同様、Aspire Oneも今ごろは出荷されているはずだったが、現状は異なる。Acerは、まもなく出荷の予定だと購入希望者に伝えている。発売開始時点でのAspire Oneの価格は付属品をすべて含めて500ドル程度の予定だ。

 Dellをはじめ、その他の数多くのベンダも、この夏にLinux搭載UMPCの発売を予定している。Dellに詳しい情報筋によると、ミニノートPC“Dell E”の2機種にUbuntu 8.04が採用され、発売される予定だという。最初に出るAtom搭載モデルは、成長途上にあるUMPC市場に300ドル程度の価格で投入される。

 一方のDell ESlimのほうは、MacBook AirのようなハイエンドノートPC市場がターゲットのようだ。情報筋によると、このハイエンドUMPCはわずか0.8インチ(約2cm)の厚みに12.1インチのディスプレイを収め、Atomプロセッサはクロック周波数1.3GHzまたは1.6GHz、ストレージは8GBのSSDまたは40GBのHDD、RAMは1GBまたは2GBがそれぞれ選択でき、802.11gおよびn無線とモバイルWiMAXに対応しているという。

 ただしDell自体は、こうした計画について何のコメントもしていない。8月になり、Linuxを搭載したその他のAtomプロセッサUMPCが出揃う頃には、Ubuntuを搭載したDell製UMPCの登場が期待できそうだ。

Steven J. Vaughan-Nicholsは、テクノロジとそのビジネスに関する執筆活動に従事。その発端は、PC用のオペレーティングシステムとしてCP/M-80が利用され、粋な学生のコンピュータではUNIXの2BSDが動いていた頃にまで遡る。

Linux.com 原文