LinuX-Gamers Live――Linuxゲームを満載したライブDVD
その一方でこのディスクは文字通りにゲーム専用の構成となっており、生産性向上ツール、Webブラウザ、パッケージマネージャに類するものは何1つ同梱されていない。ただしライブDVDという構成上、ハードドライブを介すことなく各種ゲームが実行可能となっており、ダウンロードしたイメージのDVDへの焼き込みさえ完了すれば、最低512MBのRAMを搭載した任意のx86システムを自分専用のゲームセンタにすることができるはずだ。ただしここに収録されているゲームの動作環境としては、3Dアクセラレーション機能を有すビデオカードを必要とするものが大半を占めている。NvidiaおよびATIベースのビデオカードについては必要なプロプライエタリ系ドライバが同梱されているので、このタイプのカードについては、ブート時に提示されるダイアログ群での設定をするだけでアクセラレーション機能を有効化できるだろう。
今回私はBitTorrentを介してライブDVDをダウンロードしたが、実のところ本稿執筆時点で、これ以外の入手法は存在していないのである。このダウンロードには数時間を要した。今回の試験に使用したのは、AMD Athlon 64 X2プロセッサと2GB RAMを搭載したマシンで、2枚のNvidia 8600GTビデオカードをSLIブリッジでつないだシステムとなっている。こうした構成のハードウェアに対する設定をライブDVDはすべて正常に処理しており、2枚のビデオカードおよびサウンドカードとネットワークカードも正しく認識できている。私の場合、ブートが終了すると即座にゲームを楽しめる状況になっていた。
収録されたゲーム群を構成する2Dおよび3Dグラフィックスはモニタ上に鮮明に映し出されており、音楽およびサウンドエフェクトについても接続されたサラウンドスピーカシステムの能力を充分に引き出せていた。インタフェースの作りは簡素だが、画面の下端には各ゲームの起動用アイコンが配置されており、また右クリックのメニューからは、システムのシャットダウン(残念ながらリブート用のオプションは用意されていない)およびターミナルにアクセスできるようになっており、後者を使うことで高度な詳細設定を施すこともできる。
ライブDVD上には10を越えるタイトルのゲームが収録されているので、どのようなタイプのゲーマーであれ、何か1つは各自の趣味に合致するものに遭遇することができるはずだ。例えばファンタジー系の戦略ゲームをプレイしたいという場合は、Battle for Wesnoth、Glest、Savageが好みに合うところだろう。Wesnothの各プレーヤは、それぞれ1人のリーダ役のキャラクタを擁し、通常は敵対するチームのリーダをすべて倒した時点でゲーム終了である(個々のシナリオごとに達成目標は異なる)。プレイ中は村落を占領するごとに活動資金が増加するので、その分だけ配下に率いる兵員数を増やせることになる。Wesnothは一度始めたらはまり込むことがほぼ確実なゲームであり、これをコレクションに加えたのは優れた選択と評していいだろう。その次のGlestは3Dリアルタイム型の戦略ゲームであり、プレーヤは2つある陣営(戦士と科学技術で戦うTechと、魔道士と召喚獣で戦うMagic)の一方を率いて、敵陣を打倒するための資源を収集しなくてはならない。先のWesnothとは異なり、このGlestでは自陣営の有利になる建造物を構築できるようになっている。最後に残されたSavageは、リアルタイム型戦略ゲームの特質を備えつつガンシューティングの要素を取り込んだという点で、かなり異色な存在と言えよう。
眼前に現れた敵を携帯する銃器で狙い撃つことこそゲームの醍醐味というタイプのユーザであれば、OpenarenaおよびWorld of Padmanが気に入ることと思う。Openarenaは美しいグラフィックスで彩られた一人称視点のシューティングゲーム(FPS)で、そのベースとなっているのはQuake III: Arenaであり、Deathmatch、Team Deathmatch、Tournament、Capture The Flagなどのモードをプレイできる。World of Padmanは、プロフェッショナルレベルのグラフィックスで構築されたデフォルメ世界を舞台に、コミック調のキャラクタが動き回るシューティングゲームである。
その他に収録されているゲームタイトルは、Boswars、Nexuiz、Bzflag、Sauerbraten、Treeworlds、Thunder & Lightning、Tremulous、Vegastrike、Warsow、Warzone 2100という品揃えとなっている。これはオープンソース形態で作られた中で最高レベルのゲームを取りそろえたコレクションとなっており、ごく通常のゲーマーであっても充分に楽しめるはずだ。
最後に、同コレクションにて確認された不具合について述べておこう。その1つはNexuizに関するもので、私がその起動を試みたところ、単にクラッシュが発生しただけでなくモニタの解像度が認識不可能な設定に変更されてしまい、Xの再起動を余儀なくされた。Warsowについても同様で、その起動時には“input type not supported”(インプットタイプが未サポート)というエラーメッセージが表示され、この場合もXを再起動しなければならなかった。その他にも私の環境では読み込めなかったゲームがいくつか存在したが、起動できたものについては特に問題なくプレイできている。
まとめ
Linuxプラットフォームで実行可能なゲームタイトルは、世間で思い込まれている程ラインナップが貧弱な訳ではない。本稿で取り上げたLinuX-Gamersの場合は粒ぞろいのタイトルだけを厳選しているのであり、世に存在する優れたLinuxゲームライブラリのすべてを1枚のDVDに収めるのは実際問題として不可能なのである。こうした状況であるため今後のトレンドとしては、その他のLinuxゲームを集めた後続のライブDVDがリリースされるようになってもいいのではなかろうか。
ゲームセンタ並のタイトル群をディスクに入れて持ち運びたい、あるいはハードドライブのパーティショニングを変更することなくLinuxゲームを試したいというユーザにとって、LinuX-Gamersはうってつけの存在だろう。その一方でデスクトップ関連の機能などはすべて排除されているのだが、これは日常業務の効率化などは端から無視したゲーマー専用に特化したディストリビューションなのであり、それが正解なのである。
Jeremy LaCroixはIT技術者として活動中で、余暇を見つけては原稿の執筆に取り組んでいる。