オープンソースのシューティング・ゲーム、Sauerbraten

 一人称シューティング・ゲーム(FPS)のファンなら、オープンソースのゲームSauerbratenが気に入るにちがいない。見た目の精細さではかなわないが、それを補って余りある多彩なシングル・プレーヤー・モードやマルチプレーヤー・モードを備えているからだ。しかも、ロールプレイング・ゲーム・モード(試験中)や、ほかのゲームには見られないWYSIWYGのインゲーム・マップ・エディターもある。QuakeやMax PayneのようなFPSのよいところを受け継いでおり、独特な体験ができるゲームだ。

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Welcome to multiplayer CTF. Here’s a rocket.

 こうした高い評価を受けるSauerbratenだが、それも当然だろう。Sauerbratenの中核にあるのは、ソフトウェア開発の教授であり数種のプログラミング言語も書いているオランダの著名なプログラマーWouter van Oortmerssenが開発したCubeゲーム・エンジンを再設計したものなのだ。Linux、Windows、Mac OS X向けに6月にリリースされた最新版は、Capture The Flagゲームが含まれているため、CTF Editionとも呼ばれている。

 LinuxにSauerbratenをインストールするのは簡単だ。310MBのzipアーカイブをダウンロードし、/usr/localといったディレクトリーで展開して./sauerbraten_unixスクリプトを実行するだけ。画面の解像度など、さまざまなゲーム特性を制御する構成ファイルは自動的に作成され、~/.sauerbratenの下に置かれる。これとは別に、sauerbraten_unixスクリプトの実行中に設定するオプションがいくつかある。サーバー・モードで起動するかどうかなどだ。マウス感度などの一部の設定は、グラフィカルな設定メニューのスライダーかチャット・コンソールを使ってゲーム中に変更することもできる。

 利用者による設定が可能なゲームであるという点や外観では、Sauerbratenは、かのQuakeシリーズに似ている。オープンソース・ライセンスで利用できるほか、実行中に3Dでマップを編集することもできる。通常通りにマップ(この場合は編集したいマップ)を選んでゲームを起動し、実行中にキーボードのEを押すと編集モードに入る。この状態でオクトリー(8つの小立方体から成る立方体)を変更することでマップを編集する。エディット・モードでは、通常のゲームのときと同じようにマップを動き回って、マウスでオクトリーを変更したり、弾薬箱や鎧さらにはモンスターなどのエンティティーを配置したり動かしたり、煙や水や武器から出る炎などを構成する粒子の挙動を指定したりすることができる。この作成や編集のレベルは高く、ある程度の慣れは必要だが、一度コツを覚えてしまえばゲームのプレー自体と同じくらい魅力的だ。

シングル・プレーヤー・モード

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Look at my horns: a single player game in third-person.

 多くのFPSはマルチプレーヤー環境を重視しているが、Sauerbratenではシングル・プレーヤー・モードもなかなか興味深い。伝統的なステージ型で、Private Stan Sauerとして開始し、ビッグ・バレーへの途上、侵略してきたモンスターの大群とたった一人で戦い、4つの基地を攻略する。各ステージでの課題は、ほかのFPS同様、マップを行きつ戻りつしながら、鍵を手に入れ、ドアを開き、火球をかわし、殺すか殺されるかの状況の中で生きながらえることだ。

 そして、一人で多勢に立ち向かうデスマッチ。モンスターたちのいるマップの中に放り込まれ、できる限り早くすべてのモンスターを倒さねばならない。モンスターは再生するからだ。

 「エイリアン」のエレン・リプリーもかくやと思わせる状況下で、その殺戮をアシストしてくれるのは「ダイ・ハード」で活躍したジョン・マクレーンばりのキャラクターだ。拳銃、ショットガン、ライフル、マシンガン、そしてFPS好みのロケット・ランチャー、グレネード・ランチャー、チェーンソーなど、武器なら何でもござれだ。

 Sauerbratenのモンスターは、FPSに登場する今どきのモンスターのような知性は備えていない。互いに邪魔し合い、壁に激突し、プレーヤーが部屋から退却したり距離を取るとモンスターの方も退却し射撃をやめてしまう。モンスターを倒すとモンスターの大きさとそのときの距離に応じてポイントが入る。ロケットを何発か受けても倒せないような巨大かつ極悪なモンスターの場合、ポイントは高い。プレーヤーは何度でも再生するが、再生にはポイントが必要だ。モンスターがプレーヤーの弾薬箱や武器を奪うこともある。

 シングル・プレーヤー用のマップは11枚あり、ドアをあけたりジャンプしたりするなど基本的なスキルを学ぶためのデモが3本用意されている。マップにレベルはない。マップによってレイアウトの複雑さは異なるが、かなり動き回らなければならないのは共通している。デスマッチには、60以上のマップがある。

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A wolf for an apple? Sure, I’ll have two.

 ステージ型にもデスマッチ型にもスローモーション・タイプがあり、これがまた面白い。プレーヤーの健康レベルによってゲームのスピードが変わり、死に近づくほど遅くなる。Max Payneでゲームをしたことがあればわかるだろうが、Max Payneの有名なバレットタイムと似ていなくもない。

 廊下を走り、左のドアの前でジャンプし、空中で身をひねり、モンスターの不意を突いて拳銃を発砲するのは面白い。スローモーションだと、まるで映画のようだ。さらに面白いのは、デフォルトの一人称視点を三人称視点に切り替えられること。ゲーム自体は同じだが、トゥームレイダーのような三人称シューター・ゲームのファンなら、楽しめるだろう。

 ロールプレー・コンポーネントの開発も進んでいる。名称はEisenstern、マップは4枚。RPGゲームを始めるときは、オプションの-grpgを付けて起動する。ほかのRPG同様、売買したり、チェーンソーを使ってウルフを殺すといった「仕事」をリンゴ1つで請け負ったりしながら進む。

マルチプレーヤー・モード

 コンピューターが作り出した標的と戦うのに飽きたら、SauerbratenをサーバーにしてLAN上でマルチプレーヤー・ゲームを主催しよう。あるいは、インターネット上のマルチプレーヤー・ゲームに参加するという手もある。用意されているマルチプレーヤー・ゲーム・モードは10を超える。たとえば、deathmatch(デスマッチ)、instagib(古典的な「当たれば即死」)、efficiency(無作為に与えられた武器を使う)、insta arena(ラストマン・スタンディング)、tactics(efficiencyをベースとするラストマン・スタンディング)、capture(可能な限り長く基地を掌握する)、capture the flag(敵の基地を奪取する)、instacapture(instagibタイプのcapture)など。これらのほとんどはチーム・プレー型で、正義のチームと邪悪のチームのいずれかでプレーする。

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Mulitplayer server list.

 プレーに参加するときは、ゲームの中からインターネットやLANで進行中のゲームを一覧表示し、そのいずれかを選択する。512Kbpsの接続でインターネット・マルチプレーヤー・ゲームをしてみたが、遅延は感じられなかった。もっとも、参加直後のみの感想だが。筆者のFPSスキルは低いので30秒とは保たず、基地にとどまってチームの旗を守ると決めてからは特にそうなのだ。

 マップの編集に凝っているなら、ほかの人と共同編集してみてはいかがだろう。マルチプレーヤー・ゲーム・モードの一覧を見ると、何人かがマップを共同デザインしているゲームがあることに気づくはずだ。ほとんどはパブリック・ユーザーに限られているが、それには、ものの数分で誰かの城を壊滅状態にしてしまえるというもっともな理由がある。

まとめ

 Sauerbratenは機能満載の一人称シューティング・ゲームだ。モーション・ディレーという面白い機能を持つシングル・プレーヤー・モードや、マルチプレーヤー・ゲーム・モードを備えている。マップの種類も多く、望む限りプレーすることができる。LAN上でSauerbratenサーバーをホストとして運用したり、逆に、何十となくあるオンライン・サーバーのいずれかに参加したりすることもできる。

 しかし、Sauerbratenの特長を1つ挙げるなら、3Dインゲーム・マップ・エディターだろう。オンラインでマップを構築することができ、世界中のマップ編集者とオンラインを通じてコラボレーションすることができる。

 Sauerbratenは、見た目ではほかのゲームにかなわない。しかし、これまで筆者がプレーしたことのあるどのFPSとも異質なゲームだ。

Linux.com 原文