大手企業に果敢に挑むLinuxノートPC販売業者
今月初めのASUS社の発表によると、主にLinuxで動作する同社のシンプルな小型ノートEee PCシリーズの販売台数が昨年10月の生産開始から100万台を突破したという。また、ASUSに遅れじとするコンピュータ業界3位の大手メーカーAcer社のある役員は、安価な小型ノートPCの開発でオープンソースのOSが主流になるとの考えを同じ時期に表明している。Acer社からは、Aspire Oneという小型ノートPCがもうすぐ発売の予定だ。
実は、こうした企業が参入している市場は目新しいものではない。LinuxとノートPCの相性のよさは、ずっと以前から知られていた。Linuxはハードウェアリソースをあまり必要としないためだ。Linux搭載マシンに特化して販売している企業はすでに数多くあり、自分たちの切り拓いた市場を譲らない構えを見せている。
この先現れるライバルよりも自分たちのほうが機敏さや適応力、ユーザ重視の姿勢という点でまさっている、というのがLinuxを専門に手がけているコンピュータ会社の信念だ。大手の企業から年間販売件数が数十程度という小規模事業者にいたるまでのこうした組織には、Linuxへの関心の高まりによって事業が苦境に陥っても持ち前の柔軟性で切り抜けられるという自信がある。
「LinuxノートPCを販売する大手企業の存在は、そうしたマシンの重要性を実証し、我々に代わって市場の需要を生み出してくれる」と語るのは、Linux Certifiedのマーケティングおよび営業担当バイスプレジデントRajesh Goyal氏だ。Linux CertifiedはLinuxノートの分野で「何千というシステム」を用意しており、Goyal氏は、規模の大きな会社よりも「柔軟性はかなり高い」と話している。
「我々は、Red Hat Enterprise Linuxのような企業向けディストリビューションだけでなく、FedoraやUbuntuのようなコミュニティ向けのディストリビューションもサポートしている。また、ユーザの希望により、Windowsとのデュアルブートオプションも用意できる」(Goyal氏)
柔軟性は、昔からオープンソースソフトウェアの最も魅力的な特徴の1つだった。「GNU/LinuxのOEM業者の価値は、消費者や大小の企業にどこまで奥深い柔軟性を提供できるかにかかっている」と話すのは、Ubuntu Linuxマシンを専門に手がける会社System76の共同設立者で社長のCar Richell氏。「法人顧客との取引は、System76のUbuntuノートまたはデスクトップPCで始まり、その後System76のサーバへと進展することが多い」
Richell氏によると、System76は2005年11月の創立からわずか2か月で利益を出し、それ以降ずっと黒字が続いているという。「現在、当社には何千という顧客がいて、毎年何百万ドルもの利益をあげている」。そうした成功をよそに、System76はライバルの出現を警戒している。
「オープンソースはかなり普及が進み、競合優位性や技術的な面で優勢に転じたことを示す指標がいくつもある。大手企業もやがてそのことを認め、動き始めるだろう。だが、そうした動きが我々には保守的なものに見える。というのも、ほぼ3年前から我々はその方向でやってきたからだ」(Richell氏)
Linux Laptop CompanyのErik Soroka氏は、15年来のLinuxユーザだ。彼が自分で会社を興したのは、1つの会社ともっと長く付き合いたいと願う顧客に応えるという形でこの市場に食い込む余地がある、と考えたからだった。Soroka氏の会社では、月に5~10台のノートPCを販売しているという。
「当社が出荷するノートPCはすべて個人向けにカスタマイズしたものだ。‘街の電気屋さん’を思わせるこうしたマンツーマンの対応ができる大企業はどこにもない。顧客のニーズをつかみ、要求に耳を傾け、販売するだけでなく、販売後も彼らが新しいLinux環境に慣れるまで何か月もサポートするという我々のやり方を、顧客は評価してくれている。サービス契約料をもらったり、技術サポート契約を結んだりはしていない。なぜって我々もLinuxコミュニティの一員だからね」
そのうちに、こうしたコミュニティは相当に大きなものになっていくだろう。