Gizmo5――よりオープンなVoIPソリューション
以前はGizmo Projectとして知られていたGizmo5は、独自のサーバとユーザを持ちインターネット経由で使用可能なVoIP(Voice over Internet Protocol)ネットワークの名前であると同時に、そのネットワークを使用してコミュニケーションを可能にするプログラムの名前でもある。オープンな標準規格を使用しているが、Gizmo5自体はオープンソースソフトウェアではない。プロプライエタリなコーデックを複数使用していて、クライアントのコードもクローズドソースだ。
インストール
Gizmo5のLinux用パッケージとしては、RPM、.deb、バイナリtarファイル、Click ‘N Run用などの各バージョンが用意されている。openSUSEとMandrivaでRPMバージョンを試してみたところ、どちらもまったく問題なく利用できた。インストールは、コマンドラインで「sudo rpm -Uvh gizmo-project-3.1.0.79-1.i386.rpm
」を実行すれば良いだけだ。ただしGTK+(GIMP Toolkit)2.6、GConf2、libstdc++、ALSA(Advanced Linux Sound Architecture)がすでにインストールしてあることを確認しておこう(Gizmo5のRPMパッケージにこれらは含まれていない)。インストールが完了すれば、システムメニューのInternet(インターネット)の中に、Gizmo Projectという名称でGizmo5があるはずだ。
Linuxでは残念ながらGizmoの最新版を利用することはできない。Linuxで利用可能な最新バージョンは3.1.0だ。なおMacintoshでは3.1.2または4.0 beta、Windowsではすでに4.0リリースが利用可能になっている。さらに言えば携帯電話やNokia Internet Tabletでも、Linuxよりも新しいバージョンを利用することができる。
Gizmoを初めて起動するとユーザアカウントを作成するように指示されるので、ユーザ名、パスワード、電子メールアドレス(パスワードを忘れた場合に利用)を入力する。この情報は後からGizmoウィンドウで編集することもできる。また自分のアバターを選ぶこともできるが、他のいくつかのプログラムとは対照的に、自分の写真をアップロードすることはできない。アカウントの作成後にはすぐに10セント分のクレジットが与えられるので、テストとして好きな番号に電話をかけてみることができる(ウェブから米国内の番号にかける場合、現在の相場では10セントで約5分間の通話ができる)。私の場合、地元のウルグアイにかけてみたところ、まったく問題なく通話することができた。Gizmo5は自動的にシステムトレイ上にショートカットを作成するので、それをクリックするだけで起動可能だ。
機能
Gizmo5の一部の機能は無料で利用できるが、それ以外の機能、特に携帯電話と固定電話にかける際に利用する機能などは有料でありアカウントを作成する必要もある(金額は国や相手の番号の種類によって異なる)。無料の機能には、他のGizmo5ユーザとの通話(Skypeではすでに提供されているビデオ機能はバージョン4でオプションとして提供される)、通話録音とボイスメール、チャット(AIM、Windows Live Messenger、Yahoo! Messenger、Google Talk、Jabberなどのプロトコルをサポート)、ファイル転送(Jabberクライアントに対してのみ)などがある。
有料の機能には、通常の電話に対するSMSメッセージの送受信や、Caller IDに発信者番号を表示するための固定電話番号の取得などもある。多くのプログラムではCaller ID情報が表示されないが、番号不明の呼び出しには応じないようにしている人も多く、固定電話番号があればその対象にならずに済む。なお固定電話番号は約30ヵ国の市内番号の中から取得することができる。
Gizmoの使い方は簡単だ。連絡先リストに知人を追加するためには、おそらく次の二つのうちのどちらかの方法を使うことになるだろう。一つめの方法としては、虫眼鏡アイコンをクリックしていくらかテキストを入力すれば、Gizmo5がそのテキストを氏名/国名/州名/市名などから検索する(したがって例えば「WASHINGTON」を検索すれば、WASHINGTONという名前のユーザに加えて、ワシントンCDやワシントン州在住などの全ユーザが表示される)。二つめの方法として、相手のユーザ名がすでに分かっている場合には、虫眼鏡の隣りにあるアイコン(人間にプラスのマークが付いているアイコン)をクリックするだけでそのユーザをアカウントリストに手早く追加することができる。
チャットをするには、IMアイコンをクリックすれば一対一のチャット、IMアイコンの隣りのアイコンをクリックすればグループチャットを開始できる。ただしグループチャットの場合はグループセッションの名前を決めて、招待したい全ユーザを追加する必要がある。どちらの場合も全ユーザが手元のアカウントリストに含まれている必要はなく、ユーザ名を入力しさえすれば招待可能だ。
電話をかけるにはアカウント名を右クリックすれば、他のGizmo5ユーザに対するGizmoの呼び出しや、SIPネットワーク上のユーザに対するSIPの呼び出しや、携帯電話や固定電話の呼び出しを開始できる。ただし携帯/固定電話の場合にはクレジット残高が必要なので、Gizmo5のウェブサイトのアカウントにログインしてクレジットカードか銀行口座を使ってクレジットを追加する必要がある。なお番号を「ダイヤル」したいなら、画面の電話パッド上でクリックしても良い。また通話相手が自分の話をちゃんと聞いていないと感じたときには、面白おかしい特殊サウンド効果(「雷」「虎」「ビヨーン」など)を試してみるのも楽しいだろう。
まとめ
以前出席したあるコンファレンスで、UMLの業績で有名であり電話業界でも数年の経験があるIvar Jacobson氏が、電話システムは世界でもっとも巨大な成功したシステムだと発言していたことがあった。各国に独自のシステム/接続方法/規則があるが、どの国からどの国にも電話をかけて好きな相手と話すということが、ともかくも実現しているというのがその理由だという。
ウェブ電話という分野も現在のところは統一された世界ではない。Skypeには共通の機能が数多くあるため、どうしてもGizmo5と比べないわけにはいかないだろう。しかしどちらのアプリケーションにも独自の機能があり、ユーザの目的次第で特定のケースについての向き不向きがある。無料のボイスメール、Jabberユーザとのチャット、Caller IDの取得、他のSIPネットワークの呼び出しが目的であれば、Gizmo5が良い選択肢だ。さらに現実的な観点から言えば、特殊な追加サービスのコストや自分が今住んでいる地域の電話料金の相場なども考慮すべきであり、それによってどちらのプログラムを使うのが最適なのかは自ずと明らかになるはずだ。
とは言えこの手のプログラムを使用する際にもっとも重要なのは、他の人々とつながるかどうかということだ。したがってアプリケーションの開発元企業の成功度合いも、どれほど多くの人々がそのアプリケーションを使用しているかで決まるだろう。Gizmo5の採用率が成長し続ければSkypeと肩を並べるようになる可能性もあり、そうなればGizmo5のユーザにとって確実にプラスとなる。現時点ではSkypeに軍配が上がっているように思われるが、プログラムが堅固で高速で使いやすいという点で、Gizmo5も十分注目に値する。また他のネットワークに接続可能であることも便利な機能であるし、オープンな標準規格に準拠していることも利点だ。今のところ私は両方を使っている。
Federico Kerekiはウルグアイ出身のシステムエンジニア。20年に渡るシステム開発、コンサルティング、大学講師の経験がある。