AdobeがLinux用のFlash Player 10ベータ版をリリース
リリースに際し、Adobe Systemsのプラットフォーム事業部(Platform Business Unit)の事業部長兼副社長David Wadhwani氏はこう述べている。「当社はコミュニティとの連携をしっかりと取っており、インタラクティブ・コンテンツのデザイナおよび開発者に対しては変容性のある画期的で独創的な機能を、またエンドユーザに対しては革新的な機能の提供に取り組んでいる」
残念ながら、Linux版はこうした新機能のすべてには対応していない。Windows版およびMac OS版では、Flashのネイティブなエフェクトで使えるカスタムのフィルタおよびエフェクトを作成する機能がデザイナ向けに提供されている。こうしたカスタムのフィルタおよびエフェクトの作成にはAdobe Pixel Benderツールキット(現在はリリース候補版)が必要だが、Linuxではこのツールキットが利用できないのだ。
ただしAdobeによれば、このツールキットの機能の一部はAdobe AIRに組み込まれるという。こちらはLinux用のアルファ版が存在する。
今回のFlash Player 10の登場は、AdobeのOpen Screen Project発足の直後となった。このプロジェクトは、Flash形式の制約の部分的緩和と一部のFlash仕様の公開による“ランタイム環境の整合化”を目指すものだ。同社によると、Open ScreenにはPixel Benderの機能のいくつかが含まれることになるという。もっとも、オープンソースのFlash開発者はOpen Screenをあてにしてはいないようだ。
今回のベータ版は、可変ビットレートの動画ストリーミングに対応している。今のところはあまり使い途のない機能だが、次期バージョンのAdobe Flash Media ServerおよびPlayerの間で利用可能な帯域幅に応じて動画の質を自動調整できるようにするものだ。
Flash Player 10には、インタラクティブ性を保持したまま2Dオブジェクトの配置、回転、アニメーション化を行う3Dエフェクトのネイティブサポートも含まれている。Flash Player 9向けのオープンソースライブラリPaperVision3D open source libraryのおかげで、開発者はすでにこうした機能を利用することができる。
Microsoftは.NETベースのメディアファイルが扱えるSilverlightプラットフォームでFlashに対抗しようとしている。今回のAdobeによるベータ版公開の数日前には、Mono(.NETのLinux実装版)のメイン開発者であるMiguel de Icaza氏がMoonlight(SilverlightをMonoベースで実装したもの)の初版コード公開の告知を行っていた。機能的に完全ではないにせよ、これはSilverlight 1.0の大部分をLinuxでサポートする最初の公開コードである。
Roy Schestowitz氏が自らのBoycott Novellサイトで指摘しているように、MicrosoftはSilverlightの内部情報を一切公開しておらず、Linuxでの動作もサポートしていない。そのため、FlashやMoonlight/Silverlightは、Linuxにはあまりふさわしくない。特にクリエイティブなコンテンツを手がけるLinux開発者にとっては、どちらも長くつき合っていくのが難しい代物だ。とはいえ、Flash動画を見たいだけのLinuxユーザにしてみれば、今回のAdobeのベータ版は注目に値するだろう。
実は、LinuxユーザがFlashを見る方法はほかにもある。Gnashプロジェクトが3月下旬にGPLv3の下でリリースしたGnash 0.8.2だ。SWF(Shockwave Flash)動画プレーヤとFirefox用のプラグインで構成されており、スタンドアロン・プレーヤのほうはKDE用とGNOME用の両方が用意されている。
Adobe Flash Players 10ベータのプレリリース版は、RPMおよびDEBのバイナリとしてAdobe Labsから無料でダウンロードできる。ただし、Linux版のAdobe Flash Player 9が存在する環境では、そちらをアンインストールしてからこのベータ版をインストールしなければならない。
Steven J. Vaughan-Nicholsは、テクノロジとそのビジネスに関する執筆活動に従事。その発端は、PC用のオペレーティングシステムとしてCP/M-80が利用され、粋な学生のコンピュータではUNIXの2BSDが動いていた頃にまで遡る。