Gnash Flashプレーヤー 開発は一段落するもまだ未完

 フリーソフトウェアのFlashプレーヤーGnashの第1ベータ版(バージョン0.8.2)がリリースされた。このリリースは、プロジェクトにとっても、またFlashファイル(.swf)の再生を今もAdobeのプロプライエタリーなプレーヤーに頼っているGNU/Linuxデスクトップにとっても、一つの区切りとなるものだ。まだ未完とはいえ、YouTubeのビデオを閲覧するなどといった日常的な目的であればほぼ使えるレベル、つまり昨年6月に誇大に伝えられた翻訳記事)レベルには到達した。だが、それを超えると通常使用の範囲でも再生に失敗することがある。

 Gnashは、2005年末頃、Gameswfから生まれたプロジェクトだ。すぐにフリーソフトウェア・コミュニティーから幅広い注目を集め、Free Software Foundationの優先プロジェクトに選ばれた。これは、フリー・デスクトップにおける大きな機能的欠落の一つとして認められたことを意味する。

 ベータ版はGet Gnashサイトからソースコードの形で入手できるほか、Debian、Fedora、Ubuntu、FreeBSD、NetBSD、Windows向けのパッケージも提供されている。ほどなく、Debian UnstableやUbuntu 8.04を含む主要ディストリビューションのリポジトリーにも登録されるだろう。

 Gnashは、Gnashデスクトップ・プレーヤー、Firefox用Gnashプラグイン(EpiphanyなどのMozillaベースのブラウザーでも利用可能)、Konqueror用プラグインKlashから構成されている。プラグインはどちらもシームレスに動き、デスクトップ・プレーヤーも、通常の使い方であれば、gnashのあとにファイル名またはgnash -uのあとにURLを入力するだけで簡単に利用することができる。その一方、パラメーターを付ければ、ビデオを拡大縮小したり、高さと幅を正確に指定したり、リピート再生させたりすることもできる。また、デバッグ用のコマンドも用意されている。メッセージ一般を表示するスイッチ(-v)、Flashの動作状況を通知するスイッチ(-va)、ファイルの構文解析を通知するスイッチ(-vp)の3つだ。

試用結果

 今回リリースされたベータ版のGnash User Manualには、次のように説明されている。主としてFlash 7をサポートしているが、前バージョンに比べ「SWF v8とv9のサポートも改善」されている。「ActionScript 2.0のクラスの約80%を実装し」きわめてよく使われるものはすべてサポートした。ActionScript 3への対応にも着手。さらに、「SWF v9までのFlash opcodeの大半と、SWF v8のActionScriptクラスの多くをサポート」した。

 この記述を見れば、Flashスクリプトをご存じない方にも、Gnashの機能が最新版Adobe Flashプレーヤーに及ばないことは明白だ。それでも、フリー・デスクトップという理念からGnashを使おうとする人はいるだろう。そんな人にとって、現実的にどのような制約があるのだろうか。

 それを検証するため、GnashプラグインとKlashをインストールし、よく使われるサイトを開いてみた。まず、YouTubeLulu.tvに掲載されていた各十数本のビデオについて試してみたところ、問題なく再生することができた。この2つのサイトは利用が多く、多くの人が利用できることを旨としている。そうした利用者には現在のGnashでも十分だろう。

 しかし、それを超えたFlashファイルを再生しようとすると、失敗する例が出てくる。実際、Best Flash Sitesのビデオを閲覧してみたところ、3本のうち1本は再生できなかった。開発者が最新機能を使いたがることを考えれば、この数字はあり得べき範囲にあるだろう。ほとんどの利用者にとってGnashの利用を取り立てて避けるほどの悪い数字ではない。

 さらに一歩進んでWebデザイナーらアーティストのためのサイトになると、残念ながら、再生の成功率はゼロに近くなる。これも、可能な限りの最前線に立ちたいという開発者の願いのゆえだろう。中でも問題なのは、WordPress.comにあるブログ統計など、Flashアニメーションの有用なビットさえ機能しない点だ。OpenOffice.orgからエクスポートしたFlashファイルも再生できない。

 以上の試用結果から次のように結論せざるを得ない。すなわち、Gnashは改善されてはきたが、現状ではAdobe Flashプレーヤーに代わることはできないと。日常レベルでもまだ機能しないケースが多すぎる。

まとめ

 こうした現状は、多くの人にとって決して悲劇的なものではない。Flashはコンテンツよりもスタイルを重視し帯域幅を浪費する技術だと真っ当に批判する人は多い。彼らにとって、Flashファイルを再生できないということは、迷惑というよりも喜ぶべきことなのだ。

 しかし、フリーソフトウェアの普及を目指す人々にとっては、これは失望させられる結果だ。利用者、とりわけ平均的な利用者をフリー・デスクトップに引きつけるには、明らかに、WindowsやMac OS Xに比肩しうる機能を備える必要がある。これまでのところGnashはまだその域に達していない。しかし、Flashファイルの処理でそれを実現できる可能性では、依然として、Gnashが最も有望だ。

 今回のベータ版での改善点を見ると今後に期待が持てる。しかし、フリーのFlashプレーヤーを待ち望んでいる人にとって、Gnashの進展を慶賀しつつGnashが部分ソリューションではなく完全なソリューションとなる時を待つ日々が当分の間続くだろう。

Bruce Byfield コンピューター・ジャーナリスト。Linux.comとIT Manager’s Journalに多く寄稿している。

Linux.com 原文