デジタルメディアの自由を促進するOpen Media Nowが設立

 フリーのFlashプレイヤを開発していることで知られるGnashプロジェクトが、さらに大規模な取り組みにおいて中心的な役割を果たそうとしている。その取り組み、すなわち OMNF(Open Media Now Foundation) は、同グループのホームページによれば「オープンなメディアインフラストラクチャ」の開発推進を目的としている。OMNFは米国において501(c)(6)該当の非営利組織として登録された新しい組織で、現在、より多くの企業メンバーの獲得を検討しているが、個人からの寄付も受け付けている。

 Gnashの主要開発者でありOMNFのCTOであるRob Savoye氏の説明によると、OMNFが設立された理由は次の通りだ。「われわれが皆必要としているようなデジタルメディアのための自由はすべて、われわれ自身の手で実現しなければ実現することはない。これまでGnashプロジェクトをやってきて、数人の開発者が協力すれば、時間がかかっても着実に前進できるということを学んだ。しかしリソースを賢明なやり方で拡大することができれば、もっと多くのことを成し遂げることができるのではないかと考えた」。

 現在のところOMNFが主に注力しているのは、オープンなメディアインフラストラクチャに必要となるソフトウェアの開発だ。ベテランの公益活動家でありOMNFの上級ディレクタを務めるLauren Riggin氏は次のように述べた。「非常に長期的な観点から言えば、他の目標もある。しかし現在のところは、オープンなメディアインフラストラクチャという構想を実現するためのツールの開発に集中的に取り組んでいる」。この目的のためにOMNFのウェブサイトでは、OMNFの最初の参加プロジェクトであるGnashとCygnalの開発についての優先事項をまとめた専用のページも用意されている。

 Savoye氏によると最初の時点ではOMNFは、FSF(フリーソフトウェア財団)のような主義主張に重点を置く活動家組織というよりは、GNOME Foundationのような組織と共通するところが多い組織になるだろうとのことだ。「奇妙に聞こえるかもしれないが、自由を擁護するための最良の方法が、コードを書くということである場合もある。われわれは(FSFのようなグループと)同じ目標を目指しているが、異なる手段を用いてそれを達成しようとしている」。

最初のリソース

 OMNFの目的は、Gnashがここ何年間かにおいてその一部になっている非形式的な人的ネットワークを形式的に組織化することだ。そのようなネットワークの中には、Miro Player、Edubuntu、OLPC(One Laptop Per Child)といったフリーソフトウェアプロジェクトや、Gnashの関心事と重なる部分を持つEFF(Electronic Frontier Foundation)といったより大規模な活動家組織などが含まれている。

 このような各プロジェクトには、Savoye氏によると「まったく資金源がないか、ひどく資金不足の状態」に陥ったことがあるという共通の経験があるという。Savoye氏はOMNFを通して、そのようなプロジェクトが開発を促進させたり独自の擁護活動を進展させたりすることができるようになることを望んでいるという。

 Savoye氏によるとデジタルメディア用のフリーソフトウェアはあらゆる利用シーンにおいて進歩しているものの「すべてを統合化したような完全なシステムは実はまだ存在していない。必要な技術の取っ掛かり部分は各々すべて存在しているのだが、ここで難しいのは、それらをより大掛かりな一つのインフラストラクチャへと進化させることだ」とのことだ。

 OMNFでは、教育用や組み込みの製品を主に手掛ける企業や非Intelプロセッサを使用しているベンダなど、自社プラットフォーム用FlashをAdobeや(Flashの元所有者の)Macromediaが開発しなかったためにFlashプレイヤを採用することのできなかった企業がGnashに注目していることをうまく利用したいと考えている。「しかしOMNFを設立するまでは、そのような人々からの資金的な支援を受けるためのちゃんとした手だてがなかった」とSavoye氏は指摘した。

 OMNFの設立にGnash関係の人的ネットワークが関わっていることは理事会にも顕著に現われている。理事会には、Red HatとフリーコンテンツのプロバイダLulu Enterprisesの両社の創設者で、この数年間Gnash開発に資金提供をしてきたBob Young氏や、フリーソフトウェアの活動家/起業家で、EFF(Electronic Frontier Foundation)とCygnus Solutionsの共同創設者のJohn Gilmore氏が名を連ねている。Young氏もGilmore氏もOMNFの初期の活動に対して資金を提供するものの、Savoye氏によるとOMNFが成長するためにはさらなる収入源を確保する必要があるとのことだ。

 現在のところOMNFはまだプロジェクト/企業/企業家などの参加を増やすためのアイデアを練っている段階だが、主な方針としては、共通の関心事を通して参加を促すということになりそうだ。元インターネットラジオ放送キャスター/OLPCコントリビュータで、ビジネス関係担当ディレクタMaryBeth Panagos氏によると、OMNFが何かメンバー獲得キャンペーンのようなものを行うというよりは、「技術自体がキャンペーンのようなもの」なのだという。またPanagos氏によると、OMNFによる開発がクロスプラットフォームであることも、投資を呼び込むためにはプラスに働くだろうとのことだ。なおOMNFではゆくゆくは、OMNFのメンバーからなる将来的な方向性を決定するための評議会を設置したいと考えているという。

 OMNFが支援するプロジェクトが作成したコードの著作権はすべて、おそらくはGPL(GNU一般公衆利用許諾契約書)バージョン3の下で、FSFに譲渡されることになるという。Savoye氏は次のように述べた。「20年間GNUソフトウェアを開発してきたが、その間ずっと自分の著作権はFSFに寄与してきた。FSFにGnashを寄与しておけば、Gnashは今後確実にフリーであり続けることが分かっているという点が気に入っている」。

今後の計画

 差し当たってのOMNFの主な関心事は、コード開発と資金集めだ。しかしOMNFでは長期的には、活動内容を拡大することができる状況に持っていきたいと考えている。

 OMNFが活動を広げたいと考えている分野の一つには、他プロジェクトへの投資ということがある。Savoye氏は次のように述べた。「もしわれわれが十分な資金を集めることのできる方法をうまく見つけることができたなら、ほとんど同じような活動をしている他の小さなグループを手助けすることもわれわれの重要な務めの一つとなる。そのようなグループの多くは活動を自腹で支えていることを知っているので、われわれがリソースを得ることができれば是非彼らを支援したい」。

 一方で、場合によってはOMNF自身の構想を実現するために他プロジェクトに投資する必要が生まれる可能性もある。例えば長期的には、フリーなFlashメディアプレイヤの開発という目標の中に、ビデオ会議機能の搭載ということが含まれるようになることもあるかもしれないとSavoye氏は指摘した。

 OMNFでは、コーディング作業にともないいずれは間違いなく、より活動家的な役割を果たす必要も生まれてくるだろうと考えている。Savoye氏によると、フリーなメディアに関する取り組みを行っていれば必ずMP3のようなプロプライエタリのコーデックの使用という問題に直面することになるので、フリーな形式を推奨するような活動が不可欠なのだという。「われわれ自身がオーディオ/ビジュアル用のフリーな形式を作り出さなければ、いつまでたってもプロプライエタリな形式を必死になって追い掛け続けているだけになるだろう。また今現在、より多くの活動家的な運動に参加することを熱心に検討している」。

 とは言え短期的にはOMNFの取り組みはおそらく秋頃に開催されるフリーなメディアについてのコンファレンスに集中することになるだろう――ただしOMNFの他の計画と同様に、このコンファレンスについても資金集めの結果に左右されることになる。

 掲げる目標は大きいものの、OMNFはその実現について楽観的だ。Panagos氏は、OMNFには頼りになると期待できる「コミュニティによるサポートがたくさんある」と指摘した。

 同様にRiggin氏も次のように述べた。「われわれが開発中の技術を何らかの形で利用して大きな利益を上げることのできる立場にある企業や製品ベンダが数多くいて、この技術がすでにあれば良かったのにという声が上がっている。しかしそれを実現するためには、リソースが必要だ。この技術が実現するまでにはまだ時間がかかる――この技術がすでに完成したとわれわれが主張したことはない。しかし今現在OMNFでは今あるリソースをうまく利用してできるだけ早くその目標を達成しようとしている」。

Bruce Byfieldは、Linux.comとIT Manager’s Journalに定期的に寄稿するコンピュータジャーナリスト。

Linux.com 原文