Software Freedom Law Centerから営利目的のクライアント向けの法律事務所がスピンオフ
Ravicher氏によると「新会社は、SFLCの100%子会社でありSFLCが100%運営する。Moglen氏も私も、この会社として有料で請け負う仕事から得た収入があればすべてSFLCの運営の支援に回したいと希望しているので、まったくの別会社を設立することは考えなかった」とのことだ。Moglen Ravicherの収入をSFLCの運営に回す一方で、Moglen Ravicherは両氏が弁護士として働く時間などを含めSFLCのリソースを使用することになる。
新会社を設立しなければならなかった理由は、非営利目的のクライアントだけを対象に支援するというポリシーをSFLCが自ら取り決めているためだ。Ravicher氏によると「Moglen Ravicherを設立した目的は、SFLCの無償サービス対象外の営利組織であるFOSSコミュニティーメンバーに対して、SFLCが提供しているサービスと同じものを提供するということだ」という。
Moglen氏の説明によると、SFLCがそのようなポリシーを取り決めている理由の一つは「SFLCがどのように業務運営しているかを、SFLCの監督当局――つまり、SFLCをニューヨーク州非営利団体として管理しているニューヨーク州司法長官室慈善局と、SFLCの課税控除を管理している内国歳入庁――に対して明確で透明な形で説明することができるため」とのことだ。
とは言えMoglen氏によるとさらに重要なこととして、「SFLCへの寄付者(その多くは企業)が抱える恐れのある、SFLCのクライアントの中に自分たちのライバル企業が含まれているのではないかという懸念を払拭したい」ということもあったという。
新会社Moglen Ravicherの設立は26日に公表されたばかりだが、Moglen氏によると実際には、クライアントから営利組織を除外していることがSFLCの目的であるFOSS支援の妨げになることがあるかもしれないと思い、「しばらく前」にすでに設立していたのだという。つまり、ますます多くのFOSSプロジェクトが企業によって設立されたりビジネス化されたりするようになってきているので、SFLCの法律顧問たちは、いつか営利目的のクライアントを支援する立場になるべき時が来るかもしれないと予見していたということだ。
そしてその「いつか」は、Moglen Ravicherの最初のクライアントであるOpenNMSによってもたらされた。OpenNMSは小規模な企業で、現在、同社のネットワーク管理製品についてGPL(GNU一般公衆利用許諾契約書)違反の疑いがあるケースを抱えている。
Moglen氏もRavicher氏もOpenNMSの件については現在のところ具体的なことを話す準備ができていないとしたものの、Moglen氏は「弁護する価値はあるが世界を揺るがすほど重大なケースではない」と述べた。それでも「OpenNMSの代理となることはわれわれのクライアントすべてとコミュニティ全体にとってプラスになることなので、このケースを引き受けたいと考えている」とのことだ。
契約内容
Moglen氏によるとOpenNMSをクライアントとして引き受けることの理由には、常にSFLCの第一の関心事であるGPLの全般的な擁護ということのほかにも、ネットワーク管理ツールが「近い将来にフリーソフトウェアのシェアの拡大が見込まれる分野」だからということもあるという。
さらに言えばOpenNMSの市場の大部分が、仮想化や組み込みアプライアンスといった、フリーソフトウェアがかなりのシェアを獲得している分野であるため、Moglen氏によると「そのような分野でサービスやコンサルティングを提供することにビジネスモデルとしての魅力を見出すコンサルタントやサービス提供業者がフリーソフトウェアコミュニティの中には数多くいるだろうと見込んでいる」とのことだ。このような状況を考慮すると、今OpenNMSの代理としてGPLの擁護を行うことによって、将来起こり得る法的な問題を起こらずに済ませることができるかもしれないのだという。
Moglen氏は次のように述べた。「われわれは、(SFLCの通常の形ではなく)通常の有料サービスに近い形でOpenNMSと契約するつもりだ。そしてこの件から得ることができた報酬――聞いたところによると大した額ではないのだが――は、SFLCが抱えるすべての訴訟やクライアントのためにSFLCが自由に使えるようにするつもりだ」。
Moglen氏によると考慮すべき点がもう一点あるという。「金額的に考えて営利目的の弁護士がOpenNMSの仕事を引き受けるとは思えない。多額の利益を生み出すことのできるケースではないので、営利目的の弁護士はOpenNMSの代理になることに魅力を感じない可能性がある」。
またMoglen氏は、新会社のクライアントの多くはOpenNMSと同じような立場の企業だろうと予見している。「Moglen Ravicherのクライアントの数はそれほど多くはないと思う。またその大部分は、あまり大規模な企業でも潤沢な資金を持った企業でもないだろう。クライアントは、FOSSを中心として育ってきた小企業群の中から現われる可能性が高いだろう」。
Moglen氏は次のように述べた。「われわれはFOSSを推進したいと考えていて、そのためにフリーソフトウェアを開発しているプロジェクトを支援したいと考えているが、フリーソフトウェアを開発しているプロジェクトが利益を生み出すビジネスにもなった場合に、利益を生み出しているからという理由だけでそのようなプロジェクトの手助けを断るようなことはしたくはない。Moglen Ravicherにやって来ることになるのは、そのようなクライアントが多いだろうと考えている。というのも彼らは、一般的な形で弁護士を雇うことができるほど大企業でもなければ儲かっているわけでもないことが多いためだ」。
Moglen氏によると、より大規模で経済的に成功しているクライアントについては新会社でもおそらくこれまでのSFLCのやり方と同じように、他のFOSS関連の法律専門家を紹介することになるだろうという。「われわれには多くの同業者仲間がいるので、彼らの縄張りを奪うようなことはまったく考えていない」とのことだ。
またMoglen氏とRavicher氏は、SFLCの業務分野を拡大するつもりもないようだ。Moglen氏によると、たとえFOSSベースの企業に対してであっても「われわれが一般ビジネスについての弁護士になることはないだろう。Moglen Ravicherにやって来る何らかの組織は、IPOの準備や法人化の問題に対処するための手助けを必要としてMoglen Ravicherにやって来るのではない。そのような内容の仕事についてはすべて、一般ビジネスの弁護士を紹介することになるだろう」。
まとめるとMoglen氏とRavicher氏は、SFLCで対象外だった仕事を取り扱うようになったということであり、目的や方向性に何らかの変化があったわけではない――また基本的にはSFLCの資金集めが主な目的でもない。Moglen氏によると「Moglen Ravicherは、営利目的のクライアントという稀なケースのための、SFLCの別名に過ぎない」とのことだ。
Bruce Byfieldは、Linux.comとIT Manager’s Journalに定期的に寄稿するコンピュータジャーナリスト。