滑り出し好調なFlash作成ツールSalasaga

 以前からGNU/Linuxデスクトップに足りなかったものの1つが、Flashコンテンツを作成するエディタである。Flashファイルの閲覧であれば、Adobeのプロプライエタリなプレーヤやまだ不完全だがフリーのGnash player翻訳記事)で間に合わせることができる。だがFlashの作成となると、OpenOffice.orgのDrawが持つ限られた機能を使ってFlash形式へのエクスポートを行うのが関の山だ。Flashの用途には他愛もないものが多いのでFlash作成機能の欠如は嘆くほどのことではないが、AdobeのFlash CS3 Professionalに匹敵するものが皆無なのも事実である。 Salasaga (最近まではFlame Projectと呼ばれていた)は、PC向けの教材やアニメーションをFlashで作成できるAdobe Captivateの機能を提供することにより、こうした不足を補おうとする取り組みだ。ただし、バージョンがまだ0.7.7ということもあって、機能の実現が優先されており、インタフェースの完成度は二の次になっている。

 Salasagaはクロスプラットフォームのソフトウェアであり、GNU/Linux、BSD、Solaris Nevada、Windowsで利用できる。GNU/Linuxではソースコードからのインストールが可能なほか、Gentoo、Fedora、Ubuntu用のパッケージもダウンロードできる。依存関係ファイルには少なくとも、GlibおよびGTK+のバージョン2.10、Pangoのバージョン1.16、libxml2のバージョン2.6.30、そしてFlash機能を提供するMingのバージョン0.4.0.beta5が含まれる。いずれかの方法でインストールを終えると、GNOMEデスクトップの「Graphics」メニューに項目が追加される。

 Salasagaを立ち上げると、プレゼンテーションソフトのような画面が現われる。画面の左側には個々のスライドが、右下の領域には現在のスライドが表示される。また、現在のスライドの各レイヤに関する情報が画面の右上に表示される。

 各メニューは編集画面の上に自然な形で配置されている。この編集用のメニューでは、完成したプロジェクトのデフォルト表示サイズ、プレビュー時の幅、デフォルトの背景色といった新規プロジェクト向けのデフォルト値を設定できる。これらの設定の調整が済んだら、各メニューを左から順に使って(「Screenshots」のインポートから「Slide」、「Layer」、「Export」へと)プロジェクトの作成を進めていく。こうした進め方は非常にわかりやすく、ほとんどの人は難なくこのソフトウェアの基本的な使い方を覚えて20分もあれば簡単なプロジェクトを作り上げることができるはずだ。あとは、結果をネイティブの.flame形式で保存するか、FlashまたはSVG形式にエクスポートすればよい。

 とはいえ、その途中ではやはりアプリケーションとしての完成度の低さが目につく。機能上の大きな問題は、X Windowシステムでのスクリーンショット保存がそのままでは機能しない点だけである。これについては、「xorg.conf」ファイルの「Server Flags」セクションに「Option "AllowDeactivateGrabs" "true"」を追加し、スクリーンショットを撮る前に「Ctrl+Alt+/」キーを押すことで解決できる(詳細はプロジェクトのドキュメントを参照)。

 そのほか、大がかりなプロジェクトの作成において柔軟性の低さを感じさせる機能上の制限もある。たとえば、各スクリーンショットの名前はプロジェクト名の後ろに通し番号を付けたものでなければならない。また、このツールではファイル選択のダイアログが利用できない。にもかかわらず、プロジェクトにインポートされたスクリーンショットを元のフォルダから削除してくれるというお節介な機能はある。

 もっと困るのは、マウス操作がほとんど使えないことだ(最初は、レイヤの位置をクリック操作で調整できない点に不自由を感じるだろう)。ほとんどの場合、スライドやそのコンテンツの位置決めは、ダイアログウィンドウやメニューを介して行うことになる。スライドの位置調整にはメニューを、名前変更にはダイアログを用いる必要がある。また、スライドの左上隅にテキストやグラフィックを表示して移動させるには、それぞれの位置のXおよびY座標をダイアログで設定する必要がある。これは、スライド位置の調整をほとんど試行錯誤で行わなければならないことを意味する。同様に、1枚のスライドに多数の画像を追加する場合も面倒な作業になる。

 アニメーションやビデオを扱うプログラムに想定されるタイムラインも見当たらない。代わりに、ダイアログを使って各スライドの表示時間を設定する。ただし、スライドを絶えず切り換えて各フレームの状況を確認しなければならない。こうした設定をグラフィカルに表示できるようになれば、特に規模が大きい場合は、プロジェクトの作成がずっと楽になるだろう。

 また、Flash ProfessionalやAdobe Captivateを使い慣れた人であれば、描画ツール、スクリプト記述言語、音声やビデオのサポートといった機能がないことにも物足りなさを感じるだろう。

 こうしたまだ初歩的な段階にもかかわらず、Salasagaが比較的使いやすくてコンテンツを作成しやすいというのは、驚くべきことだ。とはいえ、Salasagaがプロプライエタリなライバル製品の完全な置き換えを目指すのであれば、完成度を上げていくなかで高度な機能やユーティリティに対するさらなる配慮が必要になるだろう。今のところは順調な滑り出しといえるが、まだ完成品の域には達していない。

Bruce Byfieldは、Linux.comとIT Manager’s Journalに定期的に寄稿しているコンピュータジャーナリスト。

Linux.com 原文