WordPressが2900万ドルの資金を獲得

 広く利用されているオープンソースのブログ用プラットフォームWordPressの親会社であるAutomatticが今週、同社の少数株主となる4社の出資者から2900万ドルの投資を受けたことを発表した。設立3年目になるAutomatticにとって投資を受けるのは今回が初めてではないものの、出資したうちの一社がNew York Timesであるために大きな注目を集めている。通常は対立関係にあるとみなされることの多い、ブログと従来メディアという2つの業界のまれに見る組み合わせだ。

 New York Times以外の出資者であるPolaris、Radar、True Venturesは、Automatticに対して2006年に数社で計100万ドル以上の投資をしたうちの3社だ。Automatticの創設者であるMatthew Mullenweg氏によると、New York Timesとの話し合いはほんの数ヵ月前のGoogle Zeitgeistイベントで始まったのだという。

 Mullenweg氏はWordPressが今後どのように変わるのかについてはあまり明らかにしようとはしなかったものの、次のように述べた。「現在われわれは、バックエンドインターフェースの抜本的な再設計に集中して取り組んでいる。WordPressを一から再構成する作業において、何人かの素晴らしい人々(Jeffrey Zeldman氏、Jason Santa Maria氏、Liz Danzico氏)と協力することができた。この成果は3月にリリース予定のバージョン2.5に現われるだろう」。

 ただ一点変わらないことがはっきりしているのは、WordPressがGPLライセンスの下にあるということだ。プラットフォームの再構成の際にいつかの時点でライセンスが変更される可能性があるのかという質問に対してMullenweg氏ははっきりと「ない。絶対にない。今後そのようなことが起こることは決してない」と答えた。

 WordPressのユーザは、月に300ドルを支払ってVIPサービスを受けたり、ドメイン名やストレージ容量の拡大などの製品をウェブから購入することができる。しかし大半のユーザは、無料のアカウントを登録したり、フリーソフトウェアをダウンロードして自ら管理をしたりするだけに留まっている。このように製品を無料で配布するAutomatticに対する投資を出資者たちはどのように回収しようと見込んでいるのだろうか。Mullenweg氏は次のように説明した。「ポイントは、何かの価格がいくらなのかということではなく、どれだけスケールすることができるのかということだ。企業としてわれわれは、技術やコードを活用することによって、他のライバル企業であれば10倍の人数が必要となる仕事を18人で行なうことができる」。

「非常に画期的」

ブログアプリケーションにはオープンソースが最適
 WordPressは最初からオープンソースソフトウェアだった。一方Movable Typeはつい最近オープンソースになったばかりだ。Six ApartのAnil Dash氏は、Movable Typeのオープンソース化に対するオープンソースコミュニティの反応は「驚異的」だとしている。

 「コードに貢献したいという人々が非常にたくさん現われた。オープンソース化以前、コードを単に参照することができた状態のときにもプラグインやその他の改良点を貢献してくれる人々は常にいたが、貢献してくれる人々の数は今ではその当時の10倍にも増えている」。

 「思いがけない嬉しい驚きもたくさんあった。例えば『Debian用のパッケージを作成した』や、『RPMを作成した』などと知らせてくれるメールを受け取った。これらのことはどれもわれわれにとって本当に興味深いことであるのに加えて、オープンソース化が正しかったという確信を持たせてくれるものでもある。Movable Typeが誕生して6年になるが、MT4をリリースしてからが、これまででもっとも大きく成長した」。

 ブログ用プラットフォームを強化するための投資を取りつけることができた企業はAutomatticが最初ではない。ブログ用ソフトウェアMovable Typeの作成元で、そのオンラインサービスTypepadの運営も行うSix Apartは、2度の投資で確保した数百万ドルを利用して従業員の増加と、LiveJournalやSplashBlogなどの企業買収を行なった。また12月にはMovable TypeのソースコードをGPL(GNU一般公衆利用許諾契約書)の下に公開した

 Six Apartの副社長を務めるAnil Dash氏は、Automatticへの投資は「素晴らしいニュース」だと評価した。ベンチャー投資家がブログへの投資に関心を寄せているということは、わずか5年前には真剣に話を聞いてもらうことにも苦労した業界としては「非常に画期的」なことなのだという。このような画期的な出来事があると「手間もかかり面倒な細かい作業や事務処理にもやりがいを感じることができる」とのことだ。

 Dash氏は次のように述べた。「投資の前にも後にも、われわれが行なったことでビジネスの拡大につながったのは、より多くのソフトウェアをオープンなライセンスの下でリリースすることと、より多くのことをオープンなプロトコルの下で行なうようにすることだった。Automatticの新たなビジネス体制においてもそのような傾向になるのであれば、前途は明るいと思う」。

 一方でDash氏は、障害はまったくないというわけではないかもしれないとも指摘した。「オープンソースの製品を主として提供しているということと、投資に対する見返りを生み出す必要があるということとの間で何らかの矛盾が生まれるかもしれない。あらゆる収入がどこから得られているのかについてコミュニティがやや懐疑的になったりするにつれて、いくらかの矛盾は生まれるだろう――このような状況では必ず矛盾が生まれるものなのだ。無料や無料同然ではないものが出てくることは避けられないため、いくらかの反発が起こるかもしれない。しかし乗り越えることはできるだろう。普通は乗り越えることができることなのだ。実際、われわれがこういうことを解決しようとしていたとき、顧客は非常に協力的でいてくれた。Automatticの顧客もきっとそうだろうと思う」。

 Mullenweg氏はコミュニティの反発を懸念しているのかもしれないが、その素振りは見せない。実際のところ、オープンソースにはこれまでと同様に取り組んでいくつもりなのだという。「Automatticも私個人としても、オープンソースに最大限に貢献し続けるつもりだ。オープンソースは私が非常に強く確信していることであり、AutomatticのDNAの核となっていることなのだ」。

Linux.com 原文