OLPCは将来を楽観
OLPCがウルグアイによるXOラップトップの購入計画を発表したとき、オープンソースコミュニティには自分でも1台買いたいという人が多かった。OLPCはこの要望にGive One Get One(1台やって1台もらおう)キャンペーンで応えた。発展途上国の子供にXOを1台買ってやれば、自分でも1台買えるというキャンペーンだ。米国とカナダ限定だったが、これは大成功し、キャンペーン期間が最初の予定より1月延長されて、12月31日までつづけられた。このキャンペーンで得られた資金は3500万ドルの巨額にのぼった、とBenderは言う。
「現在、アフガニスタン、カンボジア、エチオピア、ハイチ、モンゴル、ルワンダの子供たちに10万台を超えるXOラップトップの配布が進行中です。消費者からの反応は感動的でしたね。できるだけ多くの恵まれない子供たちの手にラップトップを、という私たちの計画が大きく進展しました」
だが、Give One Get Oneキャンペーンの成功にもかかわらず、2回目の実施計画はいまのところない。米国とカナダ以外の消費者にXO入手の機会を提供しようという計画もない。
オープンソースコミュニティにもXOラップトップが提供されたことで、最近、OLPCプロジェクトの推進力が増した、とBenderは言う。「Give One Get Oneキャンペーンのおかげで、いくつかの国で計画発足の足がかりができましたし、プロジェクトに対するコミュニティからの参加が大幅に増えました。すでにいろいろなところで助けてもらっています。OLPCのフォーラムやチャットルーム、メーリングリスト、ウィキペディアでの活動のレベルが劇的に上がっています」
「Give One Get Oneキャンペーンの参加者から多くの疑問が出されました。新しいバグも発見されました。ですが、同時に多くの答えももらえましたし、ソフトウェアパッチなどの提供もいただきました。コミュニティモデルのスケールが拡大しつつあります」
プロジェクトにとっては勇気づけられる動きだろう。なにしろ、最近あまりいいニュースがない。11月には、ナイジェリアの企業(所有者は銀行詐欺で有罪になった人物)がOLPCに対して特許権侵害の訴訟を起こした。2000万ドルの賠償金の支払いと、ナイジェリアでのXOラップトップの配布差し止めを求めている。専門家の意見では、これは「無謀」な訴訟だし、Benderも「訴訟の名に値しない」と一笑に付し、先行技術がパブリックドメインに存在することを指摘する。
だが、2008年の年明け早々、ワンツーパンチが飛んできた。まず、OLPC創設時のCTOだったMary Lou Jepsenが、OLPCからの離脱を宣言した。同時に、XOラップトップ用に自分が開発した技術のいくつかを使い、独自の営利企業を立ち上げるとも宣言した。それから1週間経つか経たないうちに、今度はIntel社がOLPCプロジェクトとの愛/憎関係を断ち切り、OLPC理事会から退くことが明らかになった。これと前後して、OLPCがMicrosoft社とデュアルブートのXOラップトップの開発を話し合っているというニュースが流れたが、すぐにMicrosoft社がそれを否定した。
Intel社の離脱はプロジェクトにとってどれほどの衝撃だろうか。「ゼロ」とBenderは言う。「Intel社はパーティへの参加が遅れたんですね。理事会に加わったときは、もうパートナーが満席状態で、すでにプロジェクトの目標に向かって成果を上げつつありました。Intel社が私たちの目標達成に貢献できなかったことは残念です。どうも、反競争的というレッテルをOLPCに貼ろうとしているようです。OLPCは反競争的で、競争力ある製品の導入に反対していると言っていますが、これは架空の口実です。現実は違います。OLPCは反競争的な行動に反対しているのであって、製品に反対しているのではありません。不公正な競争行動に反対することは、競争自体に反対姿勢をとることとは違います」
いろいろなことはあるが、プロジェクト関係者の熱意は少しも衰えていない。いま、ペルーとウルグアイの子供たちがXOラップトップを手にし、その使い方を学んでいる。Bender以下、チーム全員がそのことに感激を新たにしている。プロジェクトの試験的計画は着々と成果を上げていて、開発者とボランティアの数も増えつつある、とBenderは言う。
OLPCの次なる目標は何だろうか。「ソフトウェアプラットフォームに漸進的改良を加えていくという点では、まだまだ先は長いです。でも、次の大目標ということになると、現場での学習サポートを盛り上げていくことでしょうか。学習コミュニティを、フリーソフトウェアやオープンソースのコミュニティに匹敵するものにしていきたいですね」
「私たちは野心的な目標を設定しました。(オープンソースコミュニティから)参加者を募る必要があります。全員が一丸となって、世界中の子供たちに学習の機会を与える責任を負っていかなければなりません。直面する問題は多いですが、学習こそがそれを解決していくための基本です」