IBM、インメモリDBベンダーのSolidを買収――OracleやMySQLといった他DBベンダーへの影響も
インメモリ・データベースは、データをメモリに格納して扱うことから、通常のディスク・ベースのDBMSよりも高速に動作する。このため、電話網でのコール・ルーティングや証券取り引きなど、非常に高速な処理を求められる分野で高い人気を誇る。Solidの顧客リストには、米国Cisco Systems、ドイツのSiemens、スウェーデンのTeliaSonera、フィンランドのNokiaなど、名だたる企業が名を連ねている。
IBMは同日、2008年第1四半期にSolidとの契約を締結する予定だと発表したが、買収金額については明らかにしなかった。IBMは、Solidの買収により、自社のデータベースにリアルタイム・データ・アクセス機能を追加できるとしている。なお、IBMのライバルである米国Oracleは、2年前にインメモリ・データベース・ベンダーのTimesTenを買収した。
契約が締結されると、MySQLのデータベース用に高性能なトランザクション・エンジンを開発してきたSolidの独立性が失われるため、MySQLにとっては大きな痛手になると見られる。2年前、Oracleは当時最も人気の高いMySQLトランザクション・エンジンを開発していたInnobaseを買収した。
Oracleは買収後もMySQLに「InnoDB」をライセンス供与し続けているが、Innobaseが買収されたことで、MySQLは代わりになるベンダーを探し始めた。その1つが、MySQLのストレージ・エンジン認定プログラムに参加し、MySQL向けにデータベース・エンジンのオープンソース版をリリースしたSolidだった。
IBMのデータ・サーバ担当バイスプレジデント、アービンド・クリシュナ(Arvind Krishna)氏は、引き続きMySQLのエンジンを開発するかどうかについて明言を避けた。「まだコメントする段階ではない。個人的には特に偏見はないが、両社が可能性を検討した結果、MySQLのエンジンを開発するのは無意味だと判断することもありうる」と同氏。
とはいえ、MySQLも独自のトランザクション・エンジンを開発中であり、将来的にはパートナーへの依存度を弱めるはずだ。「Falcon」と呼ばれる自社開発のエンジンは、2008年後半に一般リリース予定の「MySQL 6.0」に搭載されると見られている。
IBMは以前からSolidとパートナー契約を交わしていた。買収して直接の支配下に置くことで、「Oracle TimesTen」に対する競争力を高められるとKrishna氏は指摘する。「Oracleと競争して勝てる分野はあると確信している」(同氏)
「Solidの既存顧客は安心してほしい。潤沢な資金力と開発力を持つIBMがしっかりとサポートしていく」とKrishna氏は強調する。また、同氏は「契約締結まで3~12週間かかるが、できるだけ早急に締結したいと考えている」という。なお、Solidの買収はIBMにとって今年12番目の企業買収になるとのことだ。
(Chris Kanaracus & James Niccolai/IDG News Serviceボストン支局)
米国IBM
http://www.ibm.com/
米国Solid Information Technology
http://www.solidtech.com/
提供:Computerworld.jp