Google、Wikipedia対抗サービス「Knol」の計画を明らかに――各記事に著者名を明記するなどの新機軸を打ち出す

 米国Googleは12月13日、ユーザーが記事を寄稿できるオンライン百科事典的な新サイト「Knol」(unit of knowledgeを表す)を立ち上げる計画を明らかにした。既存のオンライン百科事典「Wikipedia」とは異なり、Knolでは記事に著者名が記載され、著者だけが記事内容の編集に責任を持つ。

 「Knolプロジェクトのカギとなるアイデアは、著者を前面に押し出すことだ」と、Googleのエンジニアリング担当バイスプレジデント、ウディ・マンバー(Udi Manber)氏はブログで述べた。「書籍やニュース記事、科学論文などとは異なり、Webは著者名を明記するという規範が確立しないまま進化してきた。特定のトピックについてのKnol(Knolという単語はこのプロジェクトの名称であるのと同時に、各トピックの解説記事が掲載された個々のWebページも意味する)は、あるトピックについて初めて検索する人が最初に読みたいと思うようなものにしていきたい」(同氏)

 Googleによると、Knolは現在、招待者限定のテスト段階にある。同社は、このプロジェクトの目的は、科学や医学、地理、歴史、娯楽など、幅広いトピックの情報を提供することだと述べた。Manber氏は、GoogleはKnolに一切編集を加えないと付け加えた。

 「われわれは、著者が自分の信頼をかけて意見や見解を書いた記事が集まることを期待している」と同氏。「だれでも自由に記事を書くことができる。同じトピックについて複数のKnolが作成される場合も多いだろう。アイデアの競争は良いことだ。テストが完了したら、Knolは完全に開放され、自由に参加できるようになる。ただ、すべてのKnolが品質の高いものになることは期待できない」

 Manber氏によると、著者が自分のKnolへの広告掲載に同意した場合、Googleは、その広告の「収入のかなりの部分」を著者に分配するという。また、Knolでは、ユーザーがコメントや質問、編集、追加コンテンツを提出できるWeb 2.0ツールも提供される。

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Manber氏のブログに掲載されたKnolページのサンプル

 「Google Blogoscoped」のブロガー、フィリップ・レンセン(Philipp Lenssen)氏は、Knolは、大勢の著者によって記事が作成されることを目指すWikipediaの戦略に追随するものではないと見ている。「これはKnolにとって問題にもなりうる。編集がすべて1人の著者のチェックを経て行われるとなると、Wikipediaで見られる記事の事実チェックや最新情報の反映は望めないかもしれない」と同氏はブログに記している。

 ただし「Knolの戦略では、著者に知名度やお金の面での記事執筆のインセンティブを提供する。Wikipediaはどちらの面の支援も弱い」ともLenssen氏は述べている。また同氏は、Googleは記事内容の方向付けはしないとしているが、Page Creator、Blogger、Google Groupsといった同社のプロジェクトではいずれも、特定の種類のコンテンツを容認しないポリシーが適用されていると指摘している。

 一方、Mashableのブロガー、スタン・シュローダー(Stan Schroeder)氏は、「うまくいけば、専門家が記事を作成するようになるだろうが、Googleはそれをルール化することはなく、基本的にだれでも寄稿できるようにしようとしている。この場合、問題になるのは、もし、どの記事にも著者の名前と写真が載っていたとしたら、Wikipediaは、より良いものになっていたのかどうかだ」と指摘した。

(Heather Havenstein/Computerworld オンライン米国版)

米国Google
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提供:Computerworld.jp