YouTubeの著作権保護技術は不完全――Red Zeppelin再結成コンサートのビデオ・クリップは排除不能の状態に

 米国YouTubeが最近導入した著作権保護技術の「不完全さ」が早くも露呈したようだ。YouTubeのサイトでは現在、Led Zeppelin再結成コンサートで撮られた映像が次々と投稿されており、著作権所有者から苦情を受けたYouTubeが対応に追われている。

 問題の映像は、12月10日にロンドンで行われたLed Zeppelinの再結成コンサートの模様を撮影したもの。著作権侵害に当たるとして早速、削除の対象となっているが、削除するそばから別のクリップが投稿されるという状況が続いている。

 YouTubeは、「ヘルプセンター」を通じて、コンサートの映像を投稿しないよう警告を発している。また、コンサートのビデオ・クリップに対して張られたリンクの中には、「『Warner Music Group』が著作権を申し立てたために削除された」という赤い警告文が表示されているものもある。

 同社は最近、多くの著作権所有者から無許可のビデオ・クリップを掲載しないよう求められたのを受け、こうした動画を特定するためのデジタル指紋技術を導入した。この技術は、投稿されたクリップが無許可で掲載されたものかどうかを、YouTubeに提供された分析用の参照ビデオとの比較により特定するというものだ。

 しかし、国際的な法律事務所Pinsent Masonsのシニア・アソシエイトで、法律関係のWebサイト Out-law.com の編集者でもあるストルアン・ロバートソン(Struan Robertson)氏は、同技術について、参照用ビデオの内容と同じイベントを撮影したものであっても、異なる特徴を持つ膨大な量のクリップをふるい分けることは困難だと指摘する。「音質が悪く、画質も悪いうえ、撮影者や撮影場所によって画像の特徴が異なる」(Robertson氏)からだ。

 今回の事態は、著作権所有者とGoogleの傘下にあるYouTubeとの新たな対立の火種になりかねない。今年3月には、エンターテインメント業界大手のViacomが自社のTV番組や映画のビデオ・クリップを無許可で掲載したとしてYouTubeを提訴し、10億ドルの損害賠償を求めている( 関連記事 )。

 Robertson氏によると、無許可のビデオ・クリップが掲載されている事実を通知する責任は著作権所有者にあるとYouTubeは主張しており、これがViacomとの訴訟でも主な争点になっているという。ただし、この通知ポリシーは米国のデジタル・ミレニアム著作権法やヨーロッパの著作権法にも適合するものだ。

 YouTubeは、これまでに同社が削除したLed Zeppelin再結成コンサートのビデオ・クリップの本数を明らかにしていない。しかし、今回の再結成コンサートはきわめて注目度が高いため、サイトから完全に排除するのは難しいようだ。YouTubeには、今後の著作権保護の対策も含め、適切な対応が求められている。

(Jeremy Kirk/IDG News Service ロンドン支局)

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提供:Computerworld.jp