Apple、Leopard Serverの仮想化をサポート――ライセンス条件を変更し、仮想マシン上で複数サーバOSを稼働可能に
AppleがLeopard Serverの使用許諾契約書(EULA:End User License Agreement)を変更したことにいち早く気づいたのは、米国ウィスコンシン・マディソン大学のシステム・エンジニアだった。今回のEULAの変更により、「物理システムがApple製である」という条件付きながら、VM上で複数のLeopard Serverを稼働させることが可能になった。なお、このEULAはクライアント版のMac OS X Leopardには適用されず、上記のような方法で仮想化することは契約違反としている。
新しい EULAには、「Appleのラベルが付いたコンピュータ上にLeopard Serverの別のコピーをインストールして使用することもできます。その場合、それぞれのコピーごとにAppleから有効なライセンスを購入する必要があります。Appleのラベルが付いていないコンピュータに当社のソフトウェアをインストール、使用、稼働させたり、他のユーザーにそうした行為を許したりすることはできません」と書かれている。
Mac用の仮想化ソフトウェア「Parallels Desktop for Mac」を提供する米国Parallelsのコミュニケーション担当ディレクター、ベン・ルドルフ氏は、「Appleが仮想化を可能にするためにEULAを変更したのは今回が初めて」と指摘する。同氏によると、VMにMac OS X Serverを実装することが技術的に可能ということは、かなり前からわかっていたが、Appleが赤信号を出しているかぎり、製品化は難しかったという。「Mac仮想化市場でライバルのVMwareも、われわれと同様の立場だったはずだ」(ルドルフ氏)
ルドルフ氏によると、Leopard Serverを稼働可能な仮想マシン・ソフトウェアのベータ版が、Parallelsから12月もしくは1月にリリースされる見通しだという。
米国VMwareのシニア・プロダクト・マネジャー、パット・リー氏は、Leopard Serverの仮想化サポートにまつわる今後の製品スケジュールについて明らかにしていないが、AppleのEULA変更には歓迎の意を表している。
一方、Appleは、EULAの変更について正式に発表しておらず、コメントも出していない。しかしルドルフ氏は、これまでビジネス市場、とりわけ大手企業で苦戦を続けていたAppleが、Mac OS X Serverの仮想化を認める方向に舵を切ったのは、ビジネス市場にあらためて注力しようとしている兆候と見ている。
「ここ最近、Appleの製品があらゆる規模の企業で使われ始めている。その最大の理由は、Mac上でWindowsを稼働できるという点にある。Intelプラットフォームの実装と重要なアプリケーションへのアクセスを実現したことで、Appleはビジネス市場への道を開くことができた。この点はサーバにも当てはまるはずだ」(ルドルフ氏)
リー氏も、「Mac OS Xに加え、WindowsやLinuxなど他のOSのインスタンスをXserve上で稼働できる点は、ユーザーから高く評価されるはず。当社では以前から、複数の物理サーバ間でMacアプリケーションを簡単に移動できるようにしてほしいという要望が出ていた」と語る。
Mac OS Xが稼働するVMのホスティングが可能なシステムは、Apple製の物理マシンのみとしている点にも戦略の妙がある。ルドルフ氏は、「Xserveのハードウェア性能はすぐれており、Mac OS X Serverの仮想化が可能になったことで、複数のインスタンスを単一マシンで稼働させたいと考えるすべてのユーザーにとってXserveは有力な選択肢になるだろう」と指摘する。
また、リー氏は、「仮想化なしに4コアのXeonを搭載するXserveの性能をフルに引き出すことはできない。複数のコアでパラレル処理を実行し、高いパフォーマンスを発揮できるアプリケーションは少ないからだ」と述べている。
Leopard Serverの価格は、クライアント・マシンを10台までサポートする「10クライアント版」が499ドル(5万7,800円)、クライアント数無制限の「Unlimitedクライアント版」が999ドル(11万4,800円)となっている。
(グレッグ・カイザー/Computerworld オンライン米国版)
米国Apple
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