OracleのBEA買収での課題は「製品の重複」――「HPやCAのほうがBEAの買い手としてふさわしい」という意見も

 米国Oracleが先週、BEA Systemsに買収を提案したことについて、観測筋は、Oracleはアプリケーション・サーバをはじめとするミドルウェア分野で、製品の重複という問題に対処しなければならないだろうと指摘した。

 両社は、特にアプリケーション・サーバ分野で激しく競合してきた。買収が成立すれば、Oracleは2つのアプリケーション・サーバ製品ラインを持ち、BEAの顧客基盤を獲得することになる。

 「Oracleのねらいは、BEAの製品に加えて顧客とエンジニアを手に入れることだろう」と、デンバーBEAユーザー・グループの代表、アシシ・ジェイン氏は語る。同氏はBEAの元幹部で、現在はアイデンティティ技術を手がける新興企業、ピング・アイデンティティの技術ディレクターを務めている。

 ジェイン氏は、Oracleの買収提案に対する失望と懸念を表明した。「わたしがBEAに在籍していた当時、BEAの社員は、絶対にそのようなことがあってはならないと考えていた。買収は悲しむべき事態だと思う。BEAは独自の道を切り開いてきたが、Oracleに買収されれば、その歩みが止まってしまう」(同氏)

 ニューイングランドBEAユーザー・グループの代表、バーク・オーラル氏は、OracleがBEの製品群をどのように統合するのかが気がかりだと述べた。「Oracleは非常に似た製品群を持っている。BEAの製品がOracleの製品ラインにどのように統合されるのか、よくわからない」(同氏)

 オーラル氏は、BEAのアプリケーション・サーバ「BEA WebLogic Server」を使って、Javaベースの電子商取引アプリケーションを開発している。同氏は、BEAはアプリケーション・サーバではまだOracleをリードしているが、「買収されれば、製品ロードマップが混乱してしまうだろう」との見方を示した。HPやCAのほうが、BEAの買い手としてふさわしいというのが同氏の意見だ。

 「Oracleは非常に優れたデータベース・ベンダーだと思ってきた。Oracleがほかの製品をBEA製品に置き換えてくれれば、すばらしいのだが」(オーラル氏)

 両社の重複する製品としては、アプリケーション・サーバのBEA WebLogic Serverと「Oracle Application Server」、ポータルの「BEA WebLogic Portal」と「Oracle Portal」、ESB(エンタープライズ・サービス・バス)の「BEA AquaLogic Service Bus」と「Oracle Enterprise Service Bus」、Java開発プラットフォームの「BEA WebLogic Workshop」と「Oracle JDeveloper」などがある。

 一方、両社がオープンソース・ツールの開発、普及を促進するEclipse Foundationに参加していることは統合にプラスに働きそうだ。

 オバムのアナリスト、ローレント・ラシャル氏は、両社ともJ2EEを採用していることから、製品の重複は大きな問題にはならないだろうとの見方を示した。「重要なのは、営業担当者と技術者の協力に基づいて、どのように統合が行われるかを明確に示すメッセージを打ち出すことだ」とラシャル氏。それができれば、OracleはPeopleSoftの買収後と同様に、顧客の移行を円滑に進められるだろうと、同氏は語った。

 Oracleは、BEA株式1株当たり17ドルという買収額を提示しているが、BEAはこの額は低すぎるとしている。ラシャル氏の考えでは、1株20ドルが適正ではないかとのことだ。

 一方、ジェイン氏は、BEAは中堅ベンダーから大企業に飛躍できずにいると指摘した。同社の2007年1月期の年間売上高は、前年比17%増の14億ドルだった。BEAはアプリケーション・サーバ分野で先行したが、OracleとIBMに追いつかれた。さらに、多くの顧客が、BEA製品のうちWebサーバ部分だけを使い、セキュリティ・コンポーネントなど他の機能は使ってこなかったことが、同社の状況を複雑なものにしている。加えて、今では、オープンソースのApache Tomcatを使うという選択肢もある。「Tomcatは基本的に無料であり、多くの人が使いはじめている」(同氏)

 BEAは近年、さまざまな製品ビジョンを打ち出しており、その中にはマッシュアップ・アプリケーションを作成するための「Project Genesis」、SOAを構築するための「SOA 360」、Web 2.0に対応するための「Enterprise 360」などがある。ラシャル氏は、BEAは最近、マーケティングの改善を進めていると評価する。同社は2年前には、SOAを技術の観点から説明していたが、今ではビジネスの言葉で説明しているという。

 また、ニュークリアス・リサーチのアナリスト、デビッド・オコンネル氏は、Oracleによる買収は、買収価格が適正であれば、BEAにとって勝利だと声明で述べた。さらに同氏は、BEA製品のユーザーも、Oracleが積極的な統合戦略の下で囲い込みの対象として重要視することから、規模と価格面のメリットを享受できるだろうとの見通しを示した。

 セレントのシニア・アナリスト、バート・ナーター氏も、Oracleの計画を好意的に評価した。同氏は声明で次のように述べた。「BEAはすぐれたアプリケーション・サーバ、ESB、BPM(ビジネス・プロセス管理)ソフトウェアを提供している。OracleはBEAの買収により、大企業へのSOAインフラの提供で、IBMやSAPなどと真っ向から対抗できる」

(ポール・クリル/InfoWorld オンライン米国版)

米国Oracle
http://www.oracle.com/
米国BEA Systems
http://www.bea.com/

提供:Computerworld.jp