美しいがOOoとは響き合わないSymphony

 IBMは先月、OpenOffice.org開発への協力を発表翻訳記事)し、そのちょうど一週間後にLotus Symphonyをリリースした。Lotus Symphonyは、OpenOffice.orgのコードをベースとしたオフィススイートだ。今回試してみたところ、Lotus Symphonyには優れた部分が数多くあることが分かった。しかしOpenOffice.orgコミュニティに対しては悪影響を与えかねないことが心配になった。

 Lotus Symphonyには、ワードプロセッサとスプレッドシートプログラムとプレゼンテーション用ツールが含まれている。SymphonyをダウンロードするためにはIBMのサイトで登録する必要がある。Symphonyのインストールは非常に簡単だった。なおインストールには490.5MBのディスク空間が必要だ。

 Symphonyの起動にはOpenOffice.orgと同じくらいの時間がかかった。Symphonyは3つのアプリケーションのすべてにおいて保存の際のデフォルトのオプションではODFとして保存されるが、Microsoft Office形式やプレーンテキストやRTF形式でも文書/スプレッドシート/プレゼンテーションを保存することができる。またPDFファイルとして文書をエクスポートしたり、OpenStorm形式(ベータリリース)で保存したりすることもできる。

 Symphonyの最大の長所はタブの使用だ。各タブには個々のオフィス文書を持たせることができる。SymphonyのタブはFirefoxウェブブラウザのタブと同じような見掛けで同じように動作する。タブ間の切り替えはスムーズで、ほぼ瞬時に行なうことができる。これは、タブに置いてある文書の種類によって、表示されるコントロールも変わることを考えるとなかなかすごいことだ。例えばテキスト文書のタブからプレゼンテーションのタブへ切り替えた場合には、切り替えに合わせてSymphonyのツールバーもプレゼンテーションツールの構成に変わる。

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Lotus Symphony

 同時に複数の文書を扱っている場合、どのタブがどの文書のものなのかを覚えておくのはなかなか大変だ。Lotus Symphonyには開いている文書すべてのサムネイル画像を表示するExposé風の機能があるが、このベータリリースではいくつか不具合があった。例えばExposé風のビューの中で、どの文書も未保存文書かのような名前で表示されてしまっていた。つまり、文書は「New Document(新規文書)」、スプレッドシートは「New Shreadsheet(新規スプレッドシート)」、プレゼンテーションは「New Presentation(新規プレゼンテーション)」という名前になってしまっていた。その結果、開いている全文書の中からファイル名を見て文書を見つけ出すことができるようになっているはずのExposé風のビューが、まったく台無しになってしまっていた。

 Symphonyにはまた、ブラウザも統合されている。文書内にリンクがある場合にリンクをクリックすれば、Symphonyウィンドウ内のタブの中でブラウザが立ち上がる。これによりブラウザとオフィススイートとを切り替えるのに必要となる時間を節約することができる。さらにSymphonyには図解付きの詳細なヘルプガイドが付いている。実践的なスクリーンキャストと合わせて使用すれば、誰でもSymphonyを使い始めることができるだろう。

 OpenOffice.orgのルック&フィールは、IBMによって、ユーザの時間の節約になるように変更されていた。オフィススイートのすべてをマウスで制御することができるようになっているし、よく使う操作はどれも1、2クリックで使えるようになっている。また、フォントの種類/大きさ、下線などのテキストスタイル、背景色、ページの余白、セルの大きさなど、よく使われる設定(文書タイプによって異なる)が、簡単にアクセスできるように縦長の設定サイドバーの中にすべてまとめられている。

 ツールバーはコンテンツだけでなくコンテキストによっても変化するので、選択するオプションによってツールバーのアイテムが増減する。例えば箇条書きのボタンをクリックすれば、ツールバーに箇条書き関連のコントロールが表示される。使い終わった後には、もう一度箇条書きのボタンをクリックすればコントロールは表示されなくなる。

 Symphonyではメニューの構成もいくらか変更されていて、一部のオプションや設定に関する項目の位置がIBMによって変更されていた。また、OSの起動時にバックグラウンドでSymphonyを起動することもできるようになっていた。これを行なえば、文書を開く際にSymphonyを起動するための時間を省くことができる。

悪しき実装方法

 全体的に見てSymphonyはOpenOffice.orgよりもさらに使えるものになっている。実のところ、一時的に初めて使ってみたというようなユーザにとっては、Lotus SymphonyはOpenOffice.orgとはまったく異なるものになっている。SymphonyはMicrosoft Officeで作成した複雑な文書も、すべてのコメントとその著者を正しく認識して、変更点をすべて追跡して、スタイルをインポート/実装して、完璧に表示する。

 しかし、そのような機能はどれもOpenOffice.orgでも実現された方が望ましいものではないのだろうか? 私はOpenOffice.orgとLotus Symphonyとに違いがあるということは歓迎するが、そのような機能の実装のされ方がOpenOffice.orgコミュニティにも役立つような形になっていないのは残念だ。というのも、そのような機能をOpenOffice.org上に実装するのであれば、それらはプラグインとしてリリースされるのが最も望ましい形であると思うからだ。IBMは事実上、OpenOffice.orgの大勢のボランティア開発者たちに協力するのではなく、OpenOffice.orgをプロプライエタリな無料ダウンロードのオフィススイートにフォークしてしまっている。

 OpenOffice.orgの開発に参加することを発表したときIBMは、まずは同社のLotus Notes製品の一部として開発していたコード、具体的にはiAccessible2アクセシビリティ・ツールを寄与することから始めると述べていた。しかし現在ダウンロード可能になっているLotus Symphonyのベータリリースにはこのツールは含まれていない。

 最後に、IBMはLotus Symphonyを初心者にやさしいものにすることに多大な労力を費やしている。Lotus Symphonyのために用意されているオンラインの仮想実践ツアーは、詳しくて分かりやすい。またSymphonyユーザは、Symphonyプロジェクトが9月下旬に開始したオンライン・ギャラリー・セクションのおかげでより多くの画像やテンプレートを利用することができる。しかしこの点についてもやはり、ギャラリーの利用規定でコンテンツの使用は「個人利用/非商用利用でLotus Symphonyの使用に関連する場合にのみ」に制限されているため、SymphonyはOpenOffice.orgユーザの役には立っていない。

まとめ

 Lotus Symphonyは、きわめて有用なオフィススイートだ。Lotus Symphonyのインタフェースはユーザの時間を節約するように設計されていて、現在のベータリリースの段階であってもすでに安定していた。しかし一方でIBMはMicrosoftとの文書形式戦争にLotus Symphonyをもって対抗しようとしているのかもしれないが、OpenOffice.orgにとっては最悪の形でそれを行なっているようにも思われる。

Linux.com 原文