Intelのゲルシンガー氏が来日、CPUの技術動向を語る
発表会では、同社のこれまでの取り組みによって、(1)プラットフォーム機能、(2)I/O、(3)エネルギー効率の3分野において、どれほどの技術革新が達成されたのか、またこれら3分野における同社の今後の取り組みについての説明が行われた。
説明のために来日した、米国Intel上席副社長兼デジタル・エンタープライズ事業本部長のパット・ゲルシンガー氏は冒頭、Intelが達成した革新の例え話として、「もし『ムーアの法則』が航空業界に適用されていたら、“現在の航空機”は1億1,800万人の乗客を1度に運ぶことができ、乗り降りの時間は3ミリ秒で完了、ニューヨークとロンドン間の飛行に必要な時間は8分、燃料は2.4リットルに削減されていただろう」と説明した。
(1)プラットフォーム機能については、仮想化、運用管理、セキュリティの面での進展が著しいとした。特に、仮想化によってOSの細分化が進み、新しいデータセンター向けのOSを構築できる環境が整った点が強調された。
「仮想化対応製品としては、クアッドコアのXeonプロセッサ 7300番台を9月に投入したばかりだ。この製品はデュアルコアのXeon7100番台と比べて仮想化性能が2倍以上、向上している」(ゲルシンガー氏)。今後、Itaniumプロセッサ・ファミリーに加わる「Montvale」「Tukwila」「Poulson」「Kittson」(いずれも開発コード名)などにも仮想化対応が取られるという。
運用管理やセキュリティ面については、2008年後半に投入予定であるvProの「McCreary」(開発コード名)および、vProに備わる技術として、仮想化マシンの脆弱性に対する保護機能「トラステッド・エグゼキューション・テクノロジー」(TXT)、データ暗号化の強化を図るためのハードウェア技術「Danburyテクノロジー」などが紹介された。McCrearyは、エネルギー効率の高い45nmプロセッサ技術が用いられるPenrynファミリーの1つであり、次世代のEaglelake チップセットや「トラステッド・プラットフォーム・モジュール」(TPM)1.2などが搭載される次世代型のCPUである。
(2) I/Oについては、2007年下半期にXeonプロセッサ5400番台チップセットおよび、X38 Expressチップセット対応となるシリアル転送インタフェース「PCIe 2.0」に加え、新しく「PCIe 3.0」が2009年中に規格化、2010年中に製品化される予定であることが紹介された。PCIe 3.0は、PCIe 2.0に比べて帯域幅が2倍となり、動的な電力管理が実現するという。
次に、アクセラレーション技術である「QuickAssistテクノロジー」の提供や、この技術が実装される「Tolapai」(開発コード名)SOCアクセラレータの2008年における投入についても発表された。Tolapaiでは、スループットの改善(最大8倍)、消費電力の削減(20%)、基盤面積の削減(最大45%)などが(世代を経て)実現するという。
またUSBについての新展開も紹介された。「われわれは、USB 3.0のプロモーター・グループを発足させた。規格化は2008年前半になるだろう」(ゲルシンガー氏)。USB 3.0では、銅配線と光配線が相互に接続される設計となるため、帯域幅はUSB 2.0の10倍以上に達するほか、前バージョンとの互換性が確保されており、エネルギー効率の向上も実現するという。
さらに、ストレージ・ネットワーク上で使われるFC(ファイバ・チャネル)とLANという、2つの異なるインフラを統合する技術が2008年後半には標準化される予定であることも紹介された。2008年中には、FCoE(FCオーバー・イーサネット)ソフトもリリースされるという。ストレージそのものに関しては、Solid State Driveテクノロジーが紹介され、高速のSATA 3.0Gbpsインタフェースや、従来に比べて10~50倍のI/Oスピード、消費電力が4.5倍以上も削減されるといった性能が示された。
(3) エネルギー効率については、今後投入される製品がその役割を担っていくとした。例えば、Penrynプロセッサで採用される45nmプロセス技術が 2007年から2008年にかけて本格投入されることで、その流れが加速するという。「45nmプロセス技術によってダイサイズが小さくなることで周波数を上げることができ、消費電力を削減できるようになる」(ゲルシンガー氏)。
45nmプロセス技術を用いるXeonプロセッサ5400番台(Harpertown:開発コード名)と65nmプロセス技術を用いるXeonプロセッサ5300番台との性能比較についても紹介され、サーバ上での使用に関しては19%の向上、ハイパフォーマンス・コンピューティングにおけるマルチタスク処理を行う場合では 23%の向上、大きな帯域幅を要するアプリケーションを動かす場合では34%の向上が確認されたという。「AMDのクアッドコアOpteron 『Barcelona』との比較テストでもHarpertownの優位性が確認された」(ゲルシンガー氏)。
また、同じく45nmプロセス技術を用いる「Nehalem」(開発コード名)についても説明された。Nehalemに実装される命令セット「SSE4.2」は、1つの命令で同時に256の比較が可能になるため、命令数の75%削減および3倍の性能向上が実現するという。また、Nehalem のシステム・アーキテクチャ「QuickPath Interconnect」では、メモリ帯域幅が増大されると共にメモリ・レイテンシが削減されるという。
さらに、Nehalemの後継製品として32nmプロセス技術を用いる「WESTMERE」と「SandyBridge」が2009年から2010年にかけてリリースされる予定であることも発表された。
発表会ではまた、今年6月に米国で発表された、IntelとGoogleが主導する環境保護の取り組み「Climate Saversコンピューティング・イニシアチブ」についての説明もなされた。「この取り組みによって、2010年までに世界のコンピュータ利用に伴う二酸化炭素の年間排出量を5,400万トン削減する」(ゲルシンガー氏)。この取り組みには現在、100社以上のメンバー企業と500人以上の参加者が登録されているという。なお、Climate Saversの日本語版のWebサイトが本日から公開されている。
(高山哲司/Computerworld)
Intel
http://www.intel.co.jp/
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