IBMがWind Riverを買収?―― 一部メディアが報道――業界の反応は「買収の意義は十分ある」と好意的

 先週、米国IBMが組み込みOSベンダーのWind River Systemsと買収交渉を行っていると一部メディアが報じた。両社はコメントを控えているが、IBMにとっては組み込みLinux市場での地歩固めとシェア拡大につながると業界専門家は見ている。

 IBMとWind Riverの買収交渉を報じたのは、Webサイト「Silicon Valley Watcher」。そこには、IBMがWind Riverの買収を検討しており、Wind Riverのライバルを含めた業界インサイダーもこの買収の意義を十分に認めていると書かれている。

 Wind Riverは、カリフォルニア州アラメダに本拠を置く従業員1,300人の企業で、Linuxと独自OS「VxWorks」の両方を使い、主に航空宇宙、国防、自動車などの業界で使用される組み込みアプリケーション用のリアルタイムOSを開発している。

 同社は、今年2月にFSMラボからリアルタイムLinux技術「RT Linux」の権利を買い取ったほか、ネットワーク・インフラストラクチャや家電分野の企業とも提携している。8月初めにPalmが、ウルトラモバイルPC「Foleo」の将来バージョンにWind RiverのLinuxを採用すると発表したのは、その一例だ。

 しかしWind Riverは、今年5月31日締めの2008会計年度第1四半期決算で、前年同期の210万ドルを上回る460万ドルの赤字を計上するなど、業績不振にあえいでいる。同社の幹部は、同四半期の売上高が7,800万ドルに伸びたことを強調したが(前年同期は6,500万ドル)、その一方で第2四半期も同程度の赤字が出るとの見通しを示している。

 今回、Wind Riverに電話でコメントを求めたが返答はなかった。またIBMの広報担当者フレッド・マクニース氏も、「うわさや憶測にコメントしないというのが当社の立場だ」と語り、この件について一切のコメントを差し控えている。

 IBMはここ最近、ソフトウェア・ベンダーの買収に意欲的だ。6月にスウェーデンのALM(アプリケーション・ライフサイクル管理)ベンダーであるテレロジックを7億4,500万ドルで買収すると発表したのに続き、7月にはカナダのデータ統合ソフトウェア・ベンダー、データミラーを1億7,000万カナダドルで買収する計画を明らかにした(関連記事)。

 業界専門家は今回の買収計画について、IBMにとっては中核市場の枠を超えた事業展開が可能になるとして好意的に評価している。

 「IBMは、サーバ以外の市場でも製品を販売している。ビデオ・ゲーム機市場向けに数百万個のPOWERチップを販売しているのもその一例だ。おそらく同社は、コンパクトでインテリジェントなLinuxベースの組み込みシステムにいくつものビジネス・チャンスを見いだしているのだろう」(クラビー・アナリティックスの社長、ジョー・クラビー氏)

 またクラビー氏は、Wind Riverを傘下に収めることで、IBMは自社の組み込みシステム・グループを補完できると指摘する。

 IBMとWind Riverは、これまでも一緒に仕事をしてきた実績がある。Wind Riverは、POWERプロセッサ・アーキテクチャの利用促進を目指してIBMが設立した業界団体Power.orgのメンバーになっているほか、チーム向け開発ツール「IBM Rational ClearCase」を導入するなどIBMの顧客でもある。またIBMも、自社のPOWERチップがWind RiverのVxWorks Developer’s Toolkitに対応することを保証している。

(ベン・エームズ/IDG News Service ボストン支局)

米国IBM
http://www.ibm.com/
米国Wind River Systems
http://www.windriver.com/

提供:Computerworld.jp