ストレージ・リソースの無駄遣いを解消する、シン・プロビジョニング技術への“期待度”――大手ITベンダーも本格採用

 米国の調査会社Forrester Researchは先ごろ、「ストレージ運用管理に関する調査リポート」を発表した。それによると、ストレージ不足を極度におそれる各部門のエンドユーザーは、必要以上にストレージ容量を“確保”する傾向にあり、データセンターの電力コストの高騰やスペース不足に頭を痛めているストレージ/IT管理者の悩みをさらに増加させているという。

 Forresterは「とりあえずストレージ容量を確保し、“将来に備える”という考えは、ストレージ・スペースとコストの無駄遣いだ」と指摘している。

 同リポートによると、必要以上にストレージ容量を確保しているエンドユーザーは、確保したストレージにコストが発生しており、電力と冷却リソースを無駄にしていることに気づいていないという。

 同リポートを作成したForresterのアナリスト、アンドリュー・ライヒマン氏は、「従来、ストレージをプロビジョニングしたあとで微調整するのは、非常に難しい作業だった。そのため、例えば、企業のある部門が必要な容量をはるかに超えるストレージを要求した場合でも、その要求を認めてしまっているのが現状だ」と問題点を指摘する。

 そのような状況の中で、注目を集めているのがシン・プロビジョニング技術だ。これはストレージを1つのプールにまとめ、複数のアプリケーションで生じるデータ容量増の要求に対処できるようにする技術で、ストレージのオーバー・プロビジョニング問題(使用されないアプリケーションにストレージ容量を割り当ててしまうという問題)を解消するとして期待されている。

 ストレージ業界のアナリストらは、「シン・プロビジョニング技術を利用すれば、エンドユーザーらは、ストレージ容量があるという安心感を得られるため、必要以上にストレージ容量を確保するということがなくなる」と分析している。

 米国のストレージ調査会社、タネジャ・グループでアナリストを務めるスティーブ・ノラル氏は、「シン・プロビジョニング技術の利点は、ストレージの効率化とコストの削減だ」と指摘する。

 企業がストレージ・スペースを増やす場合には、ストレージ・スペースが不足している部門単位で導入したり、不足しているアプリケーションごとに追加したりすることが多い。しかし企業全体で見ると、ストレージ・スペースが余っている部門や、使用されないアプリケーションにストレージ・スペースが割り当てられている場合も多い。

 ノラル氏は、「このような場合にシン・プロビジョニング技術を利用すれば、ストレージ・スペースを有効利用できる。また、企業全体としてストレージ・スペースが必要になるまで、新規ストレージの購入をする必要もない」と話す。

 米国EMCや日立データ・システムズといった大手のストレージ・ハードウェア・ベンダーは今年5月、自社製品にシン・プロビジョニング技術を採用することを明らかにしている。アナリストらは「大手ITベンダーが採用することで、シン・プロビジョニング技術に対するユーザー企業の信頼感は、いっそう高まるだろう」と分析している。

(ブライアン・フォンセカ/Computerworldオンライン米国版)

米国Forrester Research
http://www.forrester.com/

提供:Computerworld.jp