アウトソーシング先として中国に期待する企業が増加

 IT開発におけるインドへのアウトソーシング費用が急速に増大するなか、ITマネージャは世界の別の地域に委託先を求め始めている。コスト削減は依然として大きな目標だが、アウトソーシング先の候補として東欧、東南アジア、中国を評価するにあたっては、検討すべき要素が数多くある。リリースまでに要する期間、技術革新など、より広範なビジネス目標に対応するために、一部のマネージャは「どのような中国戦略を我々はとるのか」と自問している。

 では、なぜ中国なのか。答えは簡単だ。中国は、高度で洗練されたIT開発を、インドよりも30~60%安いコストで提供しているからである。インドに比べると中国のITサービスおよびサポート市場はまだ萌芽期にあり、そうした地域でビジネスをするメリットは反対意見を瞬時にやり込めてしまうまうほど大きい。世界中のその他の地域と異なり、中国は高度な教育を受けた豊富な労働力、世界に通用するITインフラストラクチャを有し、従業員の転職率の低さ、知的財産保護に対する積極的な態度表明、高い言語習熟性、各専門領域における最適な費用対能力比を売りにしている。これらの利点が合わさることで、中国は世界最大のITサービス市場の1つとして急速に台頭してきた。2009年にはその総市場規模が1160万ドルになる、とマサチューセッツを拠点とする技術調査会社IDCは予測している。

 中国には、世界中で最も高度なITインフラストラクチャの1つがある。これは、特に将来のニーズに対応するために開発されたもので、規模と信頼性に重点が置かれている。人口が100万を超える都市が20以上あり、それぞれが非常に高速なデータおよび音声サービス、専用ネットワーク、集中化されたハブを備えているため、ハイコストな北京や上海に限らず、この国のどこででもビジネスをすることができる。また、中国には、ITビジネスにおける世界で最も進んだ労働力を擁する、何百平方マイルにも及ぶ最新のハイテク産業およびソフトウェア開発区がいくつか存在する。

 3700万という人民がIT従事者とされる中国の労働力人口は、世界最大である。中国の教育省によれば、こうした数字は増え続けているという。毎年300万人の学生が大学を卒業するが、そのうち25万人がコンピュータサイエンス専攻である。さらに、米国の競争力評議会(Council on Competitiveness)によると、この先見込まれる中国の工学系技術者数は世界最多を誇る。2004年時点で1,569,000人という中国の工学系技術者の総数は、米国の2倍以上、そしてインドのほぼ3倍にあたる。そのうえ、概して中国は世界でもきわめて離職率の低い国とみなされている。

 国外へのアウトソーシングを検討する企業の第一の関心は、言葉の壁を克服することにある。海外の人材が重要な開発プロジェクトにおいて不可欠な役割を担当する際には、目的の的確な伝達とプロジェクトの継続的な評価が必要になる。委託先の要員が上手く英語を話せない場合は、プロジェクトの長期化や複雑化が起こる恐れがある。中国では、6歳以上のすべての子供に英語の学習が義務づけられており、その結果、英語を話せる大卒者の数は過去わずか5年の間に2倍になった。また、中国の大部分のサービス企業は、社員を対象としたさらなる語学研修に積極的に投資している。

 中国では、地域別のスマートショアリング(インショアリングとオフショアリングをうまく融合した手法)という他のどの国にも見られない独特の手法がとられており、非常に割安なコストで適材適所の仕組みを実現している。このモデルによって、企業はIT専門技術や特定の領域のドメイン知識を活用することができる。たとえば、高度な開発は、すでに多くの欧米企業がアジアでの活動拠点としている商業中心地、上海や北京で行われる。これに対し、事務処理サービス、品質保証の自動化といった業務は、大連や蘇州など、上海または北京から離れた第2階層の都市に移出される。こうした地域の労働力は、コスト構造の面でより魅力的だからだ。

 Citibank、Disney、Microsoft、Yahoo!、Intelなど、Fortune 500社に名を連ねる何十という企業がすでにITの開発およびサポート業務を中国に委託しており、質が高くて信頼できるサービスと優れたコスト効率との間でニーズのバランスをとる巧妙な戦略によって利益を得つつある。「我々はどのような中国戦略をとるのか」と問うことで、あなたの会社でもこうしたメリットの活用を検討してみてはどうだろうか。

Matthew Growneyは、DarwinSuzsoftの執行副社長(EVP)兼最高戦略責任者(CSO)を務めている。

ITMJ.com 原文