Wizpyミュージックプレーヤーは期待外れ

 Turbolinux社から発売されたLinuxベースのミュージックプレーヤーwizpyは、素敵なデバイスだ。すべすべで、黒くて、最小の携帯電話よりちょっとコンパクト。残念なことに、値打ちと機能が見た目に追いついていない。

 wizpyは、米国では4GBのモデルのみが販売される(訳注:日本では2GB版も販売)。内蔵ディスクは2つのパーティションに区切られている。8MBのTurbolinuxパーティションは、wizpyからコンピュータにTurbolinuxをブートするために使う。残りのパーティションにはミュージックプレーヤー機能が収められているため、ミュージックファイルの保存に使える領域は2.4GBしかない。

 内蔵のリチウムポリマー電池は、USBケーブルで供給される電源から充電する。底部にあるUSBポートはプラスチックのヒンジが付いた小さなカバーで覆われているが、見た感じでは他のパーツより弱そうだ。プレーヤーを一定の時間(デフォルトは3分だが変更可能)一時停止にすると、節電のためパワーがオフになる。パワーボタンを押してからメニューが表示されるまでに要する時間は13秒。他のMP3プレーヤーと比べると永遠にも等しい。

The wizpy
wizpyのパネルデザイン

 ホストコンピュータとwizpyを同期するのに、コンピュータ側で特別なソフトウェアを使う必要はない。LinuxまたはWindowsのPCに接続すると、wizpyはUSBストレージデバイスとして認識され、ドラッグ&ドロップだけでファイルをwizpyのディレクトリに転送できる。再生できるファイル形式はOgg、MP3、Windows Media Audioだが、試したところではM4Aファイルは認識されなかった。音質は素晴らしい。

 前面パネルには、ボタンが3列に3個ずつ配置され、おおむね直感的に操作できる。移動と選択に使うボタンが5個あるほか、メニュー、イコライザ、音声メモ録音アプリケーションの表示に使うボタンが1個ずつある。最後の9個目のボタンは、ループ再生するミュージックファイルの開始と終了の位置を設定するために使う。

 音楽の再生中、明るいOLEDの画面には、ファイル名を示すスクロールバー、ボリュームのインジケータ、電池の残量を示すアイコン、内蔵イコライザのヒストグラムが表示される。アルバムカバーのJPEG画像をwizpyにコピーした場合も、画面には表示されない。これを表示するには、[Image] メニューから開く必要がある。このほか、DivXエンコード形式のビデオを再生する機能もある。

 また、FMラジオ用のレシーバも装備されている。自動選局に設定したところ、地元のFMラジオが3局だけ検出された。私のカーラジオで選局される数よりはるかに少ない。ただし、自分でFM周波数を合わせて、20局のプリセットの1つとして保存することもできる。

 音声メモを記録できるが、6秒に満たないメモは保存されない。音質は非常にクリアだが、自分の喋り声がヘッドホンから聞こえてくる。

wizpyにはテキストビューアも付属する。Turbolinuxはこれを”eブック”と呼んでいるが、そんな大層な代物ではない。.utf拡張子付きの標準テキストファイルを表示できるが、ウィンドウのサイズが23文字x8行しかないうえ、行の自動折り返しの機能もなく、便利とは言えない。

ブートドライブでもある!

 wizpyのメイン機能である音楽再生がもっと良かったとしても、PCをLinuxデスクトップとしてブートできる機能が驚くべき付帯機能であるという印象に変わりはないだろう。

 wizpyをポータブルブートデバイスとして使う場合、ブートされるのは2.6.19-5カーネルである。ブートを初めて実行すると、ユーザ名とパスワード、rootパスワードの入力が求められる。再起動すると、KDEデスクトップにログインできる。この環境では、Mozillaベースのブラウザと電子メールクライアント、Skype VoIPクライアント、OpenOffice.org、Amarokミュージックプレーヤーを利用できる。残念なことに、私のシステムではALSAがうまく動作せず、Amarokで再生した音楽はwizpyのイヤホンから聞こえた。

 製品には、USB CD-ROMまたはUSB-HDDを使ってブートできないシステムのためのミニブートCDと、同じサイズの2冊のミニマニュアルが同梱されている。1冊はwizpyからのブートに関するマニュアルで、もう1冊はミュージックプレーヤーのユーザマニュアルだ。

 詳しい情報をネットで探しても、無駄骨になるだろう。Turbolinuxはwizpy Clubサイトを立ち上げたが、まだコンテンツは乏しい。たとえ充実していたとしても、登録ページに不具合があり、うまく登録できない(登録ページは、初めてwizpyからブートしてFirefoxを開いたときに表示されるページである)。登録してもしなくても大差はないだろう。このサイトは、登録を望む顧客からの個人的な情報をあまりに当てにし過ぎているからだ。

 マニュアルは、印刷されたものが製品に同梱されているほか、wizpy Clubサイトでも参照できるが、内容は改善の余地がある。ぎこちない英語は、いかにも日本語からの不完全な翻訳という印象だ。また、重要な情報がマニュアルから一部抜け落ちている。ファイルをwizpyに転送する手順などが書かれていない。

 総合的に判断して、最初のリリースのwizpyは期待外れだ。ミュージックプレーヤーとして$280の価格ほどの値打ちはない。立ち向かうべきライバル4GB iPod Nanoは$80も安いし、4GB USBフラッシュメモリドライブなら$50前後も出せば買える。とはいえ、ミュージックプレーヤーとUSBブートドライブを一体にしたスタイリッシュなデバイスを求める人やOggファイルを大量に持つ人には、wizpyの購入は視野に入る。

NewsForge.com 原文