Amarokを使った快適ミュージック管理
Amarokにおけるプレイリスト操作の全貌を把握するには、最初に少し時間をかけてインタフェースの構成を探索しておかなければならないだろう。まずAmarokの画面左側は、ミュージックコレクション、プレイリスト、ファイル、メディアプレーヤ、およびMagnatuneストアを操作する各種“ブラウザ”の表示領域とされている。なおMagnatuneストアは比較的最近に対応した機能なので、これが表示されない場合はAmarokのバージョンが古い可能性がある。
特定のブラウザペインを表示させるには該当するタブをクリックし、非表示にするにはカレントブラウザのタブを再クリックすればいい。
Amarokの画面右側は、演奏キューに登録されたトラックのタイトル、アーティスト、アルバム、演奏時間など各種情報の表示領域とされている。表示する項目を変更するには、ヘッダ行の該当フィールドを右クリックしてShow ColumnないしSelect Columnsを選択すればいい。Show Columnメニューでは非表示状態の項目を表示させることができるが、この場合は1度に1つのフィールドしか指定できない。これに対しSelect Columnメニューを選択すると、表示可能な全てのフィールドがダイアログ上に一覧表示される。Select Columnダイアログでは、表示させるフィールドだけでなく表示順を指定することも可能だ。
Amarokのミュージックコレクションでは、ソート順をユーザ指定することができる。Collectionブラウザを選択すると、Amarokプレイリストインタフェースの画面左上にGroup Byボタンが見つかるはずだ。Amarokにおけるミュージックコレクションのソート順は、事前定義された設定がいくつか用意されているが、カスタム設定としてソートの優先順位を最大3個のフィールドを使って指定できるようにもなっている。ソートに利用できるのは、アーティスト、年度、ジャンル、作曲者、アルバムなどのフィールドである。
プレイリストに楽曲を登録するには、プレイリストインタフェースの左側にあるCollectionブラウザをクリックしてから、追加したい楽曲を画面右側のプレイリストにドラッグすればいい。この操作は、アーティスト、曲名、ジャンル、アルバム、年度のいずれかを右クリックしてAppend to Playlistを選択するという方法でも行える。
Amarokの操作インタフェースは、XMMSやWinamp風の小振りなプレーヤウィンドウに切り換えることもできる。そのための設定は、Settings -> Configure Amarokを選択し、GeneralタブのGeneral OptionsにあるShow player windowというラジオボタンで指定する。またプレイリストインタフェースを表示させる必要がなければ、プレーヤウィンドウのPLボタンをクリックすることで非表示化できる。
ミュージックコレクションへの楽曲の追加
Amarokで楽曲を演奏するには、音楽ファイルの収録先をユーザが指定する必要がある。具体的には、Amarokの初回起動時に表示されるウィザード上で、音楽ファイルのスキャン対象とするディレクトリを指定すればいい。また後々音楽ファイルを新規に追加することもあるだろうが、Amarokには登録フォルダを再帰的にスキャンするオプションも用意されている。通常の用途では、このオプションをオンにしておけばいいはずだ。
Amarokを使い続けていくと、最初に指定したディレクトリ以外にも音楽ファイルを保存したいという場合も出てくるだろう。その様なケースでAmarokに新規ディレクトリを追加認識させるには、Amarokの設定ダイアログを表示させ(Settings -> Configure Amarok)、Collectionボタンを選択する。右側のペインにファイルシステムツリーが表示されるので、後はここで認識させたいディレクトリを選択すればいい(複数指定可)。ただし新規に登録したディレクトリがスキャンされるのはAmarokの次回起動以後になる。
ところで、Amarokの実行中に新たな音楽ファイルを登録ディレクトリに追加したらどうなるのだろう? そうしたファイルはAmarokに認識されることもあるが、認識されないこともあるのだ。こうした挙動の違いが何に起因するのかは不明だが、実際問題として、新規に追加された音楽ファイルが自動的に認識されるかは五分五分程度と考えておけばいいだろう。新規の音楽ファイルを強制的に認識させたい場合は、Amarokを再起動するか、ToolsメニューのRescan Collectionを選択すればいい。
CDの再生、リッピング、音楽ファイルの焼き込み
AmarokはCDを直接再生することもできる(近年その必要性は低くなりつつあると思うが)。同じくデータCDおよびミュージックCDを作成することも可能だ。CDを作成するには、焼き込みたいファイルをミュージックコレクションからプレイリストにコピーしてから、Playlist -> Burn to CDを選択する。するとミュージックCDを作成するのかデータCDを作成するのかの確認が行われる。私の場合、通常はCDからデジタルファイルを取り出すだけの一方通行的な作業しかしないのだが、何ヶ月前だったか、過去に足を運んだことのあるRobyn HitchcockのライブがFLACフォーマットでオンライン公開されているのを見つけたため、これらの楽曲を車の運転中に聴けるよう何枚かのCDに落とした際に、AmarokのCD焼き込み機能を使わせてもらった。
AmarokはCDからのリッピングにも対応しているが、これを行うには適切なKIO-slaveのインストールが必要だ。実際のリッピング手順としては、CDを挿入してAmarokのFilesブラウザを選択するとCDの楽曲トラックが一覧されるが、それと同時に、音楽ファイルを、MP3、Ogg Vorbis、FLAC形式にエンコードするための仮想フォルダ群も表示される。これらはあくまで仮想的なファイルシステムであり、この段階で実在するデータはCD上にあるものだけである。後はフォルダ間で必要なファイルの移動をすればよく、音楽ファイルのリッピングおよび指定フォーマットへのエンコードはAmarokが自動的に行ってくれる。
なおこの機能は、各種の理由からAmarok 1.4.4のUbuntu/Kubuntuリリースでは使えない。これはAudioCD KIO-slaveの適切なパッケージがインストールされている場合も同様だが、Xandrosその他のディストリビューションでは正常に機能する。
AmarokでのMagnatuneストアの利用
Magnatuneストアが誕生したのは数年前の出来事であるが、私はデビュー以来の大ファンの1人である。私の場合、音楽ファイルを有料で購入するのは特に気にならないが、自分の好みの曲であるかを事前に視聴してみたいので、デジタル制限管理(DRM:Digital Restrictions Management)のカセのはめられたCDは1枚も買うつもりはない。その点Magnatuneはかなり理想的な選択肢であり、売り上げの半分はアーティストに直接支払われるという、カスタマにもアーティストにも納得のいく形態を取っている。
Amarokの最新リリース(1.4.4)には、こうしたMagnatuneストアのアクセス用ブラウザが装備されている。MagnatuneのWebサイトからは全ての楽曲ないしアルバムのストリーミング再生ができるようになっているが、Amarokを使えば、Magnatuneのカタログをブラウジングしてから特定の楽曲やアルバム全体を再生するという操作ができ、またミュージックプレーヤから直接アルバムを購入することもできるようになっている。
アルバムを購入したユーザには、音楽ファイルのダウンロードに必要なURLとパスワードが与えられる。ダウンロードした音楽ファイルはAmarokのミュージックコレクションに追加することができるが、その際にはファイルフォーマットとして、WAV、MP3、Ogg Vorbis、FLACのいずれか1つの形式を選択しなければならない。またダウンロードに関する情報は、同一フォーマットおよびAppleのAACフォーマットでの再取得用に、電子メールの形態でも購入者に別途通知される。
Magnatuneストアとの接続形態については、最新の安定版Amarokであっても明示的な説明が付属されていないので、これがどの程度セキュアな接続であるのかをユーザは知ることができない。そこで私はこの点をAmarokの開発者に電子メールで問い合わせてみたのだが、AmarokとMagnatuneとの接続には暗号化通信が用いられているという返事が返されてきた。また将来的なリリースでは、通信が暗号化されていることをユーザが確認できるよう、何らかの情報表示を追加する予定だとのことだ。
AmarokでMagnatuneストアを利用する際の唯一の問題点は、物理的なメディアでの購入をする方法が何も用意されていないことだ。Magnatuneのシステムでは、デジタルデータをダウンロードするだけでなくCD形式での購入もできるようになっているが、Amarokから利用する場合はダウンロードしかできないのである。開発者側の説明によると、こうした制限の一部はMagnatuneによるRESTプロトコル実装に起因するとのことであるが、物理メディアでの購入機能に関するリクエストをいくつか受け取っているので将来的なサポートを検討するかも知れないとされている。
AmarokにおけるLast.fmの対応
他のオーディオプレーヤと同様、Amarokもストリーミング再生をサポートしているので、Amarokの対応フォーマットで流されているものであれば、ストリーミング形式のインターネットラジオを楽しむことができる。しかもAmarokではLast.fmストリーム(lastfm://)を扱うこともでき、LastFMProxyなどを介さなくてもLast.fmストリームを直接再生できるようになっているのだ。
Amarokに各自のLast.fmアカウントを登録するには、Settings -> Configure Amarokを選択してLast.fmタブを表示させ、ユーザネームおよびパスワードを入力する。また各ユーザの個別設定として、演奏したトラックをLast.fmに通知するか、類似ジャンルのアーティストや楽曲をAmarokで取得させるか、MusicタブにあるContextブラウザに表示させるかを指定できる。提示された楽曲がユーザのミュージックコレクション中にある場合は、プレイリストにドラッグすればいい。
AmarokにはデフォルトでいくつかのLast.fmストリームが登録されているが、PlaylistsタブにあるLast.fm Radioフォルダを右クリックすればユーザ独自のカスタムストリームを追加することができ、またFirefoxの設定を変更すればlastfm://形式のURLをAmarokで直接再生させることもできる。ただし後者の方式を利用するにはメディアハンドラをFirefoxに追加する必要がある(詳しい手順についてはLast.fmフォーラムにある説明を参照して頂きたい)。次に、Firefoxのロケーションバーにabout:configと入力してabout:config画面に移動し、Preference Nameというヘッダを右クリックしてNew -> Stringを選択する。ここではpreference nameにnetwork.protocol-handler.app.lastfm
と入力し、string valueの値については/usr/bin/amarokなど、Amarokのパスを登録すればいい。
Last.fmの醍醐味の1つは、各自の採点するレーティング情報をLast.fmにフィードバックできることだ。デフォルト状態のAmarokでは、Love、Ban、Skipのレーティングボタンは表示されないが、Settings -> Configure Toolbarの設定を変更すればボタンツールバー上に表示させることができる。
ストリーミングおよびポッドキャストの管理
Amarokは、標準的なMP3およびOgg形式のストリーミングにも対応している。各種ジャンルのラジオストリームがデフォルトで登録されているが、登録内容はAmarokのPlaylistsブラウザで確認できる。ユーザが好みのラジオストリームを追加したければ、PlaylistsブラウザのRadio Streamsフォルダを右クリックするかペイン上部にあるAddボタンをクリックしてストリーミングの配信URLを登録すればいい。
Amarokはポッドキャストの管理をすることもできる。新規にポッドキャストを受信するには、PlaylistsブラウザのPodcastsフォルダを右クリックするかAddボタンをクリックしてPodcastを選択し、購読に必要な情報を入力すればいい。
登録したポッドキャストを直接ダウンロードするには、該当するポッドキャストのエントリを右クリックしてConfigureを選択する。デフォルト設定のAmarokでは、ユーザが指示した場合のみポッドキャストがダウンロードされるようになっているが、こうした挙動はDownloadを選択することで変更できる。またAmarokのメディア転送キューへの追加登録をすることもできるが、その場合はメディアデバイス側にポッドキャストの新規データを記憶するだけの空き容量が必要となる。ディスクの空き容量が限られている、あるいは聴き終わったポッドキャストを残しておく必要はないという場合は、保存されるポッドキャスト数の上限を指定することもできる。デフォルトの設定では、こうした上限値は制限されていない。
メディアプレーヤ用のデータ管理
AmarokにはMP3/オーディオプレーヤの楽曲データ管理機能も装備されており、プレーヤ側から音楽ファイルを取り出すこともできる。私の場合はAmarokでiPodの楽曲管理も行っているが、Media Transfer Protocol(MTP)デバイスを含めた各種デバイスもAmarokではサポートされている。
Amarokでメディアプレーヤを扱う場合、最初にAmarokへのデバイス登録が必要となることもある。新規デバイスを登録するには、Settings -> Configure Amarokを選んでからMedia Devicesを選択する。一般的なデバイスであればAmarokのAutodetect Devicesボタンで認識される可能性が高いが、自動認識されなかった場合はAdd Deviceボタンをクリックしてユーザが手動で登録をしなければならない。Add Deviceで行うのは、デバイスの認識に必要なAmarok用プラグインの設定である。こうしたプラグインとしては、汎用デバイス、iPod、Creative Nomad Jukebox、iRiver iFPデバイス用のものが提供されている。
音楽ファイルをデバイス側にコピーさせるには、Collectionブラウザを表示させて、該当する曲名、アルバム、アーティスト、ジャンルなどのいずれかを右クリックし、Transfer to Media Deviceを選択する。この操作は選択した楽曲をメディアプレーヤへの移動キューに登録するだけのものであり、この段階ではファイルのコピーはまだ行われない。実際のコピーを開始させるには、Media Deviceブラウザに移動してからツールバーにあるTransferボタンをクリックする必要がある。その後はAmarokにより、USB接続が許す限りの高速度でファイル転送が行われるはずである(とは言うものの転送する総量が10GBを越えるような場合は、精神衛生上、席を外して気分転換にコーヒーでも飲むようにすることをお勧めする)。
Amarokには、Music Sharingデバイスという機能も用意されている。これはメディアプレーヤではなくDigital Audio Access Protocol(DAAP)共有を用いたミュージックソースとの接続をするための機能である。具体的な用途としては、mt-daapdの実行サーバ、iTunesを実行中のコンピュータ、ないしはDAAP共有によるプレイリストの公開を行っているメディアプレーヤを実行しているコンピュータへの接続を行う際に利用する。
DAAP共有については1つ注意しておくべき点がある。iTunesがバージョン7に“アップグレード”されている場合、共有が行えないのだ。このようにAmarokとiTunes 7の組み合わせでDAAP共有が正常に行えなくなっている理由は、プロトコルやiTunesをリリースするごとに仕様を無用に変更するというAppleの悪癖が今回も発揮されたためである。正にApple様々だと言えるが、それでもiTunesとAmarokとの間で音楽ファイルを共有させたいという場合、現状で私から提示できる解決法は、用いるiTunesをiTunes 6に“ダウングレード”するという方法しかない。
また、Amarokで音楽ファイルを共有させる場合、あまりに多量の楽曲を扱わせると一時的なハングアップ状態に陥ることがある。私が遭遇したケースでは、合計36GBの音楽ファイルをmt-daapdで共有させようとしたところ数分間ハングアップしたままになり、結局データベースの一部しか読み取れなかった。この現象が腑に落ちないのは、ローカルにあるミュージックコレクションであれば、Amarokはかなり多量のデータでも問題なく扱えるという点である。また先のような問題を起こしたmt-daapdサーバにiTunesを使って接続しても、こうしたトラブルは再現されないのだ。将来的にAmarokのDAAP機能が改善される可能性もあるだろうが、正確なところは神のみぞ知るといったものだろう。
その他の機能
これは私が気に入っている些末的な機能の1つだが、Amarokでの演奏を終了させたい場合、曲の途中ではなく最後まで再生を完了させてからプレイリストを停止させるという機能が用意されている。この機能を使うには、曲目を右クリックしてStop Playing After Trackを選択すればいい。ところで、こうした機能はいったい何の役に立つのであろう? Amarokは曲目の再生履歴を基にしたスコア管理を行うのだが、再生途中で中断した曲目については減点する仕様になっているのだ。そしてこのスコアはAmarokによるFavorite Tracksというスマートプレイリスト作成時に参照されるので、先に紹介した再生停止機能を使わずに途中停止させた曲目ほど、スマートプレイリストに登録される可能性が低くなるのである。
どのようなソフトでも、自分で細かな設定変更を施さないと気が済まないというユーザは常にいるものだ。そしてAmarokには様々なジャンル別に事前設定されたイコライザが装備されているが、こうしたユーザにとって有り難いことに、このイコライザもユーザによるカスタム設定ができるようになっている。
アルバムのジャケットを表示させたければ、ToolsメニューにあるCover Managerを使用すればいい。またContextブラウザに表示されるアルバムアイコンをクリックすると、Amazonに登録されているアルバムのジャケットが自動検索されるが、アイコンを右クリックすればユーザが手動で設定することもできる。私の使用経験からすると、Amazonの検索で正しいジャケットが表示される確率は80%程度であるが、Zombina and the Skeletonesといったマイナーなアーティストのアルバムを探させる場合はあまり当てにできないと覚悟しておいた方がいいようだ。
Amarokには、楽曲の歌詞を検索してContextブラウザに表示させる、あるいは再生中のプレイリストをWebベースのインタフェースに一覧させるなど、各種の操作を行うためのスクリプトが用意されている。その他のスクリプトが必要であれば、KDE Get Hot New Stuffシステムを介してAmarokに追加ダウンロードさせることもできる。既存スクリプトを操作する、ないしは新規スクリプトをインストールするには、Tools -> Script Managerを選択すればいい。Script Managerでは、インストールしたスクリプトの起動/停止および各種の設定を行うことができる。
Amarok wikiには各種のAmarok用スクリプトが紹介されており、プログラミングの素養を持つユーザが独自にスクリプトを記述したい場合は、そのためのノウハウが解説されたHOWTOページが参考になるだろう。
Amarokには若干の不具合が残されてはいるが、私が過去に使用した中でも最高のミュージックプレーヤ/楽曲管理ソフトウェアだと言える。豊富な機能を備え、巨大なミュージックコレクションをトラブルフリーで管理でき、iPodとの接続も可能なAmarokが自由に使える限り、私の所有する最新のiPodをiTunesで管理することは今後まず無いだろう。