存在感たっぷりのネットラジオ、Tangent Quattro
Linuxを搭載したエンタテインメント家電をお探しなら、Tangent Quattroというインターネットラジオをぜひチェックしてみてほしい。組み込みLinuxのプラットフォームに通常のラジオ放送とインターネットラジオが聴ける機能とメディアサーバクライアントの機能を統合したこの機器は、さまざまなオーディオ再生オプションも備えている。
Tangent Quattroにはどっしりとした存在感がある。本体上面にあるシングルスピーカーは、深みのあるサウンドを聞かせてくれる。フロントパネルには、音量つまみと選局つまみのほか、プリセット選局など各種機能に使う12個のボタンが並び、パネル中央にある2行分の液晶表示部には受信中のラジオ局、各種メニュー、ステータスメッセージが表示される。
インターネットへの接続には、WEP(Wired Equivalent Privacy)とWPA(Wi-Fi Protected Access)に対応した内蔵ワイヤレスEthernetアダプタか、本体背面のRJ-45端子を用いる。ほかに外部入力(AUX-IN)、ヘッドフォン、ラインアウトの各端子もある。ただ、USBポートがなく、USBメモリを挿してその中の楽曲ファイルを再生することはできない。
Quattroでラジオを聴くには、2つの方法がある。1つはQuattro本体でネットラジオ局を選ぶというものだが、このやり方は実質的には使えない。12,000近くあるラジオ局から聴きたいものを地域やジャンルで絞り込んで探し出すか、選局つまみで1文字選んでは「Select」ボタンを押すという操作を繰り返して検索文字列を入力しなければならないからだ。しかも、途中で5秒以上何の操作もせずにいると、メニュー表示が消え、選局を最初からやり直すはめになる。
もう1つは、インターネットラジオのポータルサイトRecivaでアカウントを作成しておき、Quattroの電源オン時にこのサイトに接続して(本体に関連付けられているものも含めて)ラジオ局のリストを取得するという方法で、こちらのほうが使いやすい。Recivaサイトでは、お気に入りのラジオ局をいくつか選んでMy Stationsとして保存することができる。その後、ラジオ側で「Select」→「Stations」→「My Stuff」→「My Stations」とメニューをたどれば、お気に入りリストからの選局が行える。こうして選んだ局をラジオ本体に記憶させるには、フロントパネルにある6つのプリセットボタンのどれかを長押しすればよい。
プリセットしたラジオ局は内蔵メモリに記録され、その情報は電源コードを抜いても消えない。ただし、電源を入れてからネットワークに接続するまでには数秒かかる。
Quattroの電源を入れると、普通のラジオと同じように、前回の電源オフ時に聴いていた放送局が選択される。局を変えるにはプリセットボタンを押すか選局つまみを使う。だが、Quattroで聴けるのはインターネットラジオだけではない。「Mode」ボタンを1回押せば、AUX-IN端子からの入力音声を再生できる。また「Mode」ボタンを2回押すと、FM放送を付属の伸縮式アンテナで受信できる。そのため、プリセット枠を国内のネットラジオ局だけで使う必要はなく、従来のラジオ放送に割り当てることもできる。FM放送の受信中にもう一度「Mode」ボタンを押すと、ネットラジオのモードに戻る。
Quattro独特のすばらしい機能は、楽曲ファイルの共有によって、メディアサーバとして動作するローカルネットワーク上の任意のPCからファイルをストリーミング再生できることだ。私の場合は、Ubuntu Hardy HeronマシンのSamba共有フォルダを参照していた。メディアサーバに初めて接続すると、Quattroは指定したフォルダ内の楽曲ファイルをスキャンし(ファイル数が多いと数分かかる)、以後のスキャンを高速化するためにその情報をディレクトリ内のキャッシュファイルに書き込む。ただし、Quattroで再生できるオーディオファイル形式はAAC、AIFF、AU、MP3、RM、WAV、WMAに限られる。再生キューへのトラックの追加は、アルバムまたはアーティスト単位で行われる。ランダム再生用に多くのアルバムをキューに追加するのは面倒なものだが、幸いQuattroではM3U形式のプレイリストとしてトラックデータを読み込むことができる。もちろん、リピートやランダム再生の指定も可能だ。
Quattroには設定の自由度が高いアラームクロック機能もある。アラーム設定は5つまで保存でき、指定時刻にアラーム音または受信可能なラジオ放送のどちらかを流すことができる。アラームのスケジューリングについても、一度きり、毎日、平日のみ、土日のみ、特定の曜日のみと豊富な設定が用意されている。就寝前であれば、スリープタイマ機能を使って、一定時間の経過後に自動で電源をオフにすることも可能だ。
Quattroの市価は350ドルで、以前レビューした、同じくLinuxベースのネットラジオCom One Phoenixより150ドル以上高い。PhoenixにはQuattroのようなメディアサーバ接続機能がなく、音質もQuattroのほうがよいが、USBデバイスを接続して内部の楽曲ファイルを再生できること、プリセットボタンの数がQuattroより多いことがPhoenixの強みだ。コストパフォーマンス的にはPhoenixをお勧めするが、デザインと音質ではQuattroに軍配が上がる。