イベントリポート:LinuxWorld2007――2日目、展示会場より

 前回に引き続き、「LinuxWorld Conference & Expo/Tokyo 2007」(以下、LinuxWorld2007)の様子をリポートする。今回は、展示会場内の様子を紹介しよう。

仮想化が実用段階に

 現在、IT業界で最もホットなキーワードの1つである仮想化だが、LinuxWorldでも2年ほど前から仮想化に関する展示やセミナーが増えてきた。2年前はまだ、Linux界で仮想化技術の本命と目されているXen 3.0がリリースされておらず、マルチコアプロセッサも一般的になっていなかったため、仮想化は実験段階といった雰囲気、その物珍しさから注目を集めていたように覚えている。今年のLinuxWorld2007でも仮想化がクローズアップされているが、“今”使える有用な技術として提案されている点がこれまでと異なる。

 今年のLinuxWorld2007では、Dell、Red Hat、VMware、日本仮想化技術の4社の協賛で「仮想化体験コーナー」を設置。展示やセミナーが行われているほか、来場者が自由に触れるようにXenやVMwareをインストールしたノートPCを多数用意し、仮想化環境を実際に体験できるようになっている(写真1、2、3)。


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写真1:仮想化体験コーナー 写真2:Red Hat Enterprise Linux 5で、Xenの準仮想化と完全仮想化の仮想マシンが並列動作 写真3:VMware ESX ServerとVirtual Centerのデモ。管理サーバのVirtual Centerでは、仮想マシンおよび物理サーバの負荷を監視して、V-Motion(仮想マシンを稼働させたまま物理サーバ間で移動させる機能)を自動実行させることが可能

 また、「仮想化体験コーナー」以外では、Novellが自社ブースで、SUSE Linux Enterprise Server上でWindows Server 2003を動作させるデモを実施(写真4)。一方、日商エレクトロニクスは、Xenベースで開発されている「VirtualIron」を展示していた(写真5)。仮想マシン型の仮想化技術は、開発・実験環境の構築や企業内のサーバ集約などに適しているとされているが、日商エレではデータセンターにもVirtualIronを積極的に提案していきたいとのことである。

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写真4:Microsoftと提携関係にあるNovellは、SUSE Linux Enterprise Server上でのWindows Serverの動作をサポート 写真5:日商エレのVirtualIron。Xenベースでライブマイグレーションを実現。ちなみに、Xen開発元のXenEnterpriseはまだライブマイグレーションに対応していない(今年7月に対応予定)

データセンター用省電力サーバ

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写真6:NECのデータセンター向け1Uハーフサイズ・サーバ「Express5800/i110Rb-1h」。各種Linuxでの動作確認情報はNECの「8番街」http://nec8.com/linux/i/で参照できる

 仮想化と並んで、IT業界で重要なキーワードとなっているのが省電力。サーバが低価格化したことで、電力料金などを含むサーバのランニングコストがクローズアップされるようになっている。

 写真6は、この5月に発売されたばかりのNECのデータセンター向け1Uハーフサイズ(1Uのラックスペースに前後に2台設置できる)省電力サーバ「Express5800/i110Rb-1h」。ノートPC向けのCore Duo T2500(2GHz)と、サーバ向けチップセット(ECCメモリ対応)を搭載することで、低消費電力と信頼性を両立させている。写真右側のデジタルカウンタは1台あたりの消費電力を示しており、負荷をかけた状態でも100W以下となっていた。

 データセンターのサーバラックは40Uや45Uといったサイズが一般的だが、消費電力や冷却性能、耐加重量などの問題から、1Uサーバの場合で1本のラックに20台くらいしか設置できないという。NECの1Uハーフラック・サーバに置き換えた場合、10本のラックを7本程度に削減することができるそうだ。

 ちなみに、データセンター向けの「iモデル」には、Xeonを1個搭載する「i110Rh-1」や2個搭載可能な「i120Rg-1」などがラインアップされている。この「iモデル」では、Red Hat Enterprise LinuxやSUSE Linux Enterprise Serverといった商用ディストリビューションだけでなく、FreeBSDやDebian、Vine、CentOS、Fedoraといったフリーのディストリビューションでも動作確認が行われているとのことである。

日本人開発者に聞くコミュニティとのつき合い方

 日立のブースでは、SELinux Policy Editorの開発者である、日立ソフトウェアエンジニアリングの中村雄一氏にお会いすることができた(写真7)。

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写真7:日立ソフトの中村雄一氏。左のノートPCではSELinux Policy Editorを実行中。氏の後ろのザウルスでは、SELinuxを適用した組み込みLinuxが動作

 中村氏は、2004~2006年のジョージワシントン大学への留学で、SELinuxの開発者と直接議論する機会を得たとのことだ。ちなみに、SELinuxの開発元であるアメリカの国家安全保障局(NSA)の本部は、ジョージワシントン大学(ワシントンD.C.)と近いメリーランド州にある。

 自作のSELinux Policy EditorをSELinuxのコア開発者に披露した中村氏だが、評判は良くなかった。SELinuxのコミュニティでは「ポリシーはSELinuxを熟知したセキュリティの専門家が作成すべきもので、素人が気軽に触れていいものではない」という考え方が支配的で、「ポリシー作成の敷居を下げる」というSELinux Policy Editorのコンセプト自体が否定されてしまったそうだ。「『Security in not a toy(セキュリティはおもちゃじゃない)』と言われました」(中村氏)。もっとも、これで中村氏が意気消沈したわけではなく、氏は現在もSELinux Policy Editorの開発を続けている。

 一方、現在中村氏が注力している、組み込み分野へのSELinuxの適用については、コミュニティからも高く評価されているとのことである。「組み込み分野には開発元も関心があるようで、パッチを送るととても喜んで受け取ってくれます」(中村氏)とのことだ。