IBM、UNIXサーバ向けプロセッサ「POWER6」を発表――省電力化を図りつつ処理速度をPOWER5の2倍に
POWER6は、クロック周波数4.7GHzのデュアルコア・プロセッサで、SMT(Simultaneous Multithreading Technologies:同時マルチスレッディング技術)によって2つのコアが4コアとして働き、4つそれぞれのコアで命令スレッドを実行できる。この技術は、例えば航空機のデザインや自動車の衝突シミュレーションといった負荷の大きい処理の高速化に有効だ。
IBMによると、POWER6プロセッサの処理スピードは、HPの「Superdome」サーバに搭載されているIntelのItaniumプロセッサの3倍、データ転送能力は30倍(毎秒300GB)だという。
POWER6は、浮動小数点演算をソフトウェア上ではなくハードウェア上で可能にした初のプロセッサでもある。POWER6用にコンパイルされたソフトウェアは、負担の多い税金申告や財務処理、基幹業務アプリケーションを高速で処理することができると、IBMでは説明している。
さらに同社の広報担当者は、POWER6の特徴の1つとして省電力性を挙げ、「環境に優しいこと」をアピールしている。
新プロセッサでは、低電圧をサポートできない回路を分離させると同時に、回路で消費される電力を減らす工夫がなされている。また、パフォーマンスと省電力のどちらを優先するかを選択することで、データ転送量を調節することができる。使用されていないときはプロセッサのクロックのスイッチが切られ、メモリの一部に供給される電力を遮断することも可能だ。
IBMのシステム&テクノロジー・グループ担当シニア・バイスプレジデント、ビル・ザイトラー氏は、消費電力の多さがデータセンターの大きな課題だと指摘したうえで、そうした問題の解消にPOWER6プロセッサが貢献することを強調した。
一方、System p 570は、デュアルコアから16コアまでのチップ配置が可能なサーバで、強化されたサーバ仮想化機能を搭載している。POWER6プロセッサと同サーバがサポートするこの仮想化機能には、仮想サーバを他の物理サーバに移動させる「Live Partition Mobility」機能が含まれている。
POWER6プロセッサとSystem pサーバは今後2週間以内に出荷される見通しだ。また、新しい仮想化機能は現時点ではベータ版で、正式版は今年後半にリリースされる予定となっている。
サーバ市場は現在、x86プロセッサ搭載の製品が多くのシェアを占めている。Intelが相次いで新プロセッサを投入したことで、x86サーバの性能も十分と言えるレベルにまで達した。
例えば、Intelは昨年、サーバ向けデュアルコア・プロセッサの「Xeon 5100シリーズ」(開発コード名:Woodcrest)やクアッドコア・プロセッサの「Xeon 5300シリーズ」(同Clovertown)を投入した。またAMDも、「Barcelona」という開発コード名で知られるクアッドコアの「Opteron」プロセッサを今年後半にリリースする予定だ。
一方、ハイエンドのUNIXサーバは売上げが伸び悩んでいるというのが実情だ。そうしたなか、IBMはPOWER6搭載の新サーバを投入することで、UNIXサーバ市場でのライバルであるSun MicrosystemsやHPから顧客を奪うことをねらっている。
なお、IBMは11月(第4四半期)にUNIX OSの最新版「AIX 6.1」もリリースする。同UNIXには、ファイルシステムの暗号化やメンテナンス中に処理を移動させる機能のほか、新しいGUIベースの管理コンソールなどが備わる予定だ。
(ジェレミー・カーク/IDG News Service ロンドン支局)
米国IBM
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提供:Computerworld.jp