「PC購入者を欺いた」――ニューヨーク州がDellを提訴――低利の融資をうたいながら、消費者を高利プランに誘導?

 詐欺的かつ虚偽的な宣伝活動を行い、PC販売による利益の増大をもくろんだとして、米国ニューヨーク州の検事総長が米国Dellを告発した。

 ニューヨーク州検事総長のアンドリュー・クオモ氏が5月15日にアルバニー高等裁判所へ提出した訴状によると、Dellは利子の安い融資をうたいながら、実際には消費者を高利のプランに誘導しているという。

 さらに、割戻金や保証および技術サポートなどを約束どおりに提供するのを怠ったことも、告発理由に挙げている。

 訴状は、Dellおよび同社の一部門であるDell Financial Services(DFS)の行為について次のように指摘する。

 「Dell製品を購入する消費者は、同社が広告の中で掲げている特典および利点の多くがまやかしであることを知ることになる。Dellは『無利子』融資を強調する宣伝を派手に行っているにもかかわらず、実際にDFSが提供する貸し付けプランの条件は厳しすぎ、信用履歴に一切問題のない人々をはじめ、大半の消費者が、融資を受ける資格なしと判定されている」

 DFSは、一度は顧客を無利子融資プランに組み入れながら、その後、当事者に何の連絡もなしに20%以上の利子を適用したローン・プランに変更しているほか、キャンセルされたり、商品が届けられなかったりした注文に対して、料金が請求された事例も見られるという。

 訴状には、「これらのケースでは、消費者が存在しない負債の支払いを拒否したにもかかわらず、DFSが当該の顧客を債務不履行者と誤認して信用調査機関に報告してしまうケースが多い」と記されている。

 Dellの広報担当者ボブ・カウフマン氏は電子メールで声明を発表し、告発内容を否定するとともに、裁判に受けて立つことを明らかにした。

 「われわれは法廷ではっきりと無罪を主張するつもりだ。Dellの商行為は公正かつ妥当であることが証明されると信じている。1人でも顧客には不満を抱いてほしくないが、検察が提出した起訴状の内容は、ニューヨークのごく一部の顧客との取り引きを根拠にしている」(カウフマン氏)

 今回の提訴は、Dellがここ数カ月間にわたって展開してきた販売促進の取り組みへの直接的な打撃となる。2006年に数四半期続けて売上げ不振に陥ったDellは、カスタマー・サービスの向上に1億ドルを投じ、複雑な割戻制度を廃するなど、価格体系を簡素化することによって、業務の立て直しを図ると宣言していた。

 Dellは昨年、マーケット・シェアでもライバルのHPにトップの座を奪われ、今年1月にはCEOを解任した。さらに、不正会計を巡って米国証券取引委員会(SEC)の会計調査を受けるという苦難にも直面している。同社は過去2四半期の収支報告を期限内に提出できておらず、今年3月には、社内調査で不正会計の証拠が見つかったことを明らかにしている。

 ニューヨーク州の訴訟では、Dellの顧客サービスの不備についても問題にされている。これは、コンピュータに不具合の出た顧客が、「きわめて煩雑な手順を踏まなければサポート・サービスを受けられない」というものだ。

 これにより、一部の顧客の間で、数週間から数カ月間にわたってコンピュータ機器を使用できないといった被害が出ているという。Dellの技術サポートに電話をかけても、通話を保留にされたままで部署間をたらい回しにされ、何時間も待たされたあげくに電話を切られたり、確約されていた出張修理の要請を断られたりするケースが続発したと、訴状には書かれている。

 クオモ氏は、Dellに対し、被害を受けた顧客に損害賠償を行うこと、不正行為の再発を防ぐ新たな規則を設けること、ニューヨーク州が負担した裁判費用や不正行為によって得た利益を補償するために、1件の違反につき500ドルの罰金を支払うこと、などを求めている。

(ベン・エームズ/IDG News Service ボストン支局)

米国ニューヨーク州裁判所
https://www.nycourts.gov/
米国Dell
http://www.dell.com/

提供:Computerworld.jp