SaaSの普及で急浮上する“統合”の課題――既存システムとの統合をどう最適化すべきか

 新興IT市場に詳しいビジネス/市場戦略コンサルティング会社の米国ソーガタック・テクノロジーが先週発表した調査リポートによると、2006年初頭以降、SaaS(Software as a Service)の利用は2倍以上に増加しており、2010年末までにさらに倍増する見通しだ。しかし、それに伴って、ユーザーとベンダーの双方が、ホステッド製品と業務ソフトウェアの統合にかかわる課題を抱えつつあるという。

 同調査リポートは、多くの企業がSaaS製品を基幹業務用アプリケーションで使用するようになってきたとしたうえで、自社開発されたソフトウェアとの統合を実現するためにSOA(サービス指向アーキテクチャ)が必要になるとの見通しを示している。

 ソーガタックはリポートの中で、「SaaSは、ユーザーとベンダー双方の理解を超えるスピードと規模でユーザーのITとビジネス業務環境を複雑化させつつある。ユーザーIT部門の大半は、エンタープライズ・レベルでのSaaSの急速な進展に対処できるだけのリソースを持っていない」と指摘する。

 今回発表されたリポートは、250のビジネス・ユーザーとITユーザーを対象にした調査、30社を超えるSaaSベンダーとの意見交換、およびSaaS利用企業15社の上級幹部に対する詳細なインタビューに基づいて作成された。

 ソーガタックでは、SaaS普及のトレンドを3つの「波」に分け評価している。

 まず最初の波は、普及の初期段階にあたるもので、スタンドアロン・アプリケーションを含むソフトウェアをコスト効率の高い方法で流通させるという特徴がある。

 2つ目の波は、普及が本格化した今の段階に対応するもので、ビジネス・ソリューションの増加と業務用アプリケーションとの統合というトレンドである。

 3つ目の波は、SaaSがあらゆる場面で使用されるという今後のトレンドを示している。このトレンドは、来年以降に顕在化し、「ワークフローに対応するビジネスの変化」「ビジネスおよびITエコ・システム、企業間コラボレーションの最適化」「ITユーティリティおよびSaaSインフラストラクチャ・プロバイダーの成熟」などの現象を伴うとされる。

 ソーガタックのリポートによると、企業における2006年初頭のSaaSアプリケーション普及率(少なくとも1種を使用)は11%にとどまっていたが、今回の調査では25%を超えたという。SaaSの普及率は、年内に47%に達し、2010年には全世界で65%を超える見通しだ。

 リポートの主執筆者マーク・ケーニッグ氏は、「SaaSは、計画や管理を実行するための体制が何も整わない状態でここまで伸びてきた」と指摘する。

 またソーガタックによると、中規模企業と大手企業が使っているSaaSアプリケーションの平均本数は、2010年までに1社当たり7本になるという。これは、現在の2倍を超える本数に相当する。

 リポートの共同執筆者で、ソーガタック・テクノロジーの社長兼CEOであるウィリアム・マクニー氏は、「だれもが、SaaSは中小企業の間で起きている現象だと見ている。それは確かに事実だが、あらゆる種類の顧客を巻き込みつつあるというのも事実である」と述べている。

 マクニー氏はまた、SaaSアプリケーションとファイアウォールの内側にある各種のビジネス・サービスとの緊密な統合というトレンドが強まるなか、IT部門もアプリケーションのセキュリティに対する認識を変える必要に迫られており、今後、「Security as a Service」が脚光を浴びる可能性が高いと指摘する。

 「現在管理されている領域の外にまでセキュリティ対策を拡張し、新しいタイプのアプリケーションやサービス、ソリューションを導入できるようにする必要がある」(マクニー氏)

(ジョン・ブロウドケン/Network World 米国版)

米国ソーガタック・テクノロジー
http://www.saugatech.com/

提供:Computerworld.jp