MongoDBもクラウド事業者に対抗してライセンスを変更、AGPLから独自作成のSSPLへ
オープンソースのドキュメント志向データベースシステムを開発する米MongoDBは10月16日、オープンソース版のライセンスを「Server Side Public License(SSPL)」に変更することを発表した。同社が新たに作成したライセンスで、「AGPLを強制するための訴訟コスト」ではなくMongoDB開発に継続して投資できると述べている。
MongoDBは拡張性と柔軟性を特徴とするデータベースシステム。JSON風のドキュメントでデータを保存するのが特徴で、柔軟性がありアプリケーションが扱うオブジェクトの構造を損ねずにデータベースに保存できる。このほかさまざまな特徴を持ち、非SQLデータベース(NoSQL)の代表格となっている。
Server Side Public License(SSPL)は、MongoDBをサービスとして提供するための条件を含むライセンスとなっている。AGPLをベースとしているが、13条の「Remote Network Interaction; Use with the GNU General Public License」が大きく異なる。APGLではここで、APGLv3の下でライセンスされた著作物を単一の著作物となるようにリンク、あるいは内包することができるとしているが、SSPLでは、「Offering the Program as a Service」(「サービスとしてのプラグラムの提供」の意味)となり、プログラムの機能を作成したり、修正版をサービスとしてサードパーティに提供する場合、Service Source Codeをネットワークダウンロード経由で、無償で同じSSPLライセンスの下で公開することを義務付けている。
MongoDBのWebサイトにはSSPLの全文に加え、AGPLとの比較、FAQも用意している。
SSPLを作成した背景についてMongoDBのEliot Horowitz氏は、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)はオープンソースプロジェクトの資金調達にとって大きなチャンスだが、プロジェクトが大きくなると大手クラウド事業者が「ほとんど貢献せずに多くの価値を得ている」と指摘している。オープンソース企業が防御するためにはAGPLだが、「国際的なクラウド事業者がAGPLの境界に挑戦を挑んでいる」という。そこで訴訟よりもライセンスを変更することにしたとしている。
MongoDBによると、オープンソースのデータベースを全員に提供することを目的にこの10年で3億ドルを研究開発に投資したとのこと、ライセンス変更によって今後も研究開発に投資できるとしている。
今後公開されるすべてのバージョンとそれ以前に公開されたバージョンのパッチリリースはすべてSSPLの下で公開される。MongoDBによると、SSPLがオープンソースライセンスとして承認されるようにOSI(Open Source Initiative)に提出済みという。
クラウド事業者の利用に対するオープンソースプロジェクトの対応としては、NoSQLの「Redis」が8月、一部ライセンスを変更している。
MongoDB
https://www.mongodb.com/
Server Side Public License(SSPL)
https://www.mongodb.com/licensing/server-side-public-license