スタッフ解雇を理由にFSFと対立していた「Libreboot」、GNU Projectから正式に離脱

 フリーソフトウェアを推進する非営利団体Free Software Foundation(FSF)のRichard Stallman氏は1月5日、フリーのBIOSファームウェアを目指すプロジェクト「GNU Libreboot」がGNUプロジェクトを去ることを正式に認めた。2016年秋にLibreboot開発チームが離脱を発表して以来、4か月での正式発表となった。

 LibrebootはフリーのBIOS実装である「Coreboot」からバイナリblobを除いたファームウェア。フリーのBIOS/UEFIファームウェアリプレースとして、高速かつ安全で信頼性の高いファームウェアを目指す。/boot/の暗号化、カーネルブート前のGPG署名のチェック、フラッシュチップからのOS読み込みなどの機能も備える。

 FSFは2014年にLibrebootの支援を明らかにしていたが、Libreboot開発チームはFSFがトランスジェンダーのスタッフを解雇したことを理由に2016年9月中旬、GNU Projectというタイトルを放棄し、離脱する意思を発表した。FSFはその翌日、声明文を発表して差別が理由で従業員を解雇したのではないはないとしたが、これに対しLibreboot側は別の元従業員の言葉などを引用して否定していた。

 Stallman氏は、GNU Projectを離脱するというLibrebootのメンテナーの意思決定について、「メンテナーを辞めるのはその人の自由だが、GNUパッケージではないと主張することは一方的にはできない」とし、この件についてどうするかの意思決定を行う必要があったと説明している。

 最終的にメンテナーの離脱を支持することにした理由について、1)GNUパッケージとしての歴史が比較的浅い、2)GNUパッケージにすると決定した当事者であった、3)GNUの中でLibreboot開発の継続に関心を示す人がいなかった、と3つの理由を挙げている。「これらの状況を考慮して、GNU内でLibreboot開発を継続することは有用ではない」と記している。

 一方、LibrebootはWebサイトで、「GNU ProjectがLibrebootの決定を承認するのに4ヶ月を要した。RMS(Richard Stallman氏のこと)の理由は間違っている」とし、すぐに承認すべきなのに「傲慢にも数ヶ月に渡って対抗した」とFSFの行為を非難している。合わせて、「オープンソースプロジェクトはGNUに参加すべきではない」とも呼びかけている。

 なお、Libreboot側の主張については、特定の開発者の個人的な意見をプロジェクト全体の総意のように発表しているとの批判も開発者から出ている。

Free Software Foundation
http://fsf.org/

Libreboot
https://libreboot.org/