Windows 10に対応した「Qt 5.5」がリリース

 The Qt Companyは7月1日、クロスプラットフォームのUI/アプリケーション開発フレームワーク「Qt 5.5」をリリースした。次期「Windows 10」のサポート、グラフィック関連の強化など、多数の機能が加わっている。製品体系も簡素化されている。

 Qt 5.5は、2014年12月に公開されたバージョン5.4に続くリリースとなる。

 グラフィック関連ではOpenGLのサポートを強化し、「Qt Canvas 3D」と「Qt 3D」の2種類の新しいモジュールを導入した。Qt Canvas 3Dは5.4で技術プレビューとして加わったモジュールで、本リリースより正式扱いとなった。Qt Quick向けのWebGLライクなAPIを実装しており、Qt QuickからWebGLのコードを直接利用できる。またQt 3Dはこれまでライブラリとして提供していたが、今回技術プレビューとなった。C++とQML APIを持ち、3Dコンテンツを容易にQtアプリケーションに入れることができるという。

 Qt Quickも強化された。QMLとJavaScriptエンジンがJavaScriptの型付配列に対応し、Qt CoreではQMLで独自の値を容易に作成するために、プロパティと呼び出し可能なメソッドをサポートした。また、商用版の機能だったEnterprise ControlがQt Quick Controlsに組み込まれ、オープンソース版でも提供されるようになった。

 Qt WebEngineはChromiumがバージョン40となり、ファイルダウンロード管理、キャッシュとクッキーの制御などのためのAPIが加わった。Qt WebChannelのサポートも統合された。

 新モジュールのQt Locationも実験導入された。マッピング、ジオコーディング、ルート、場所などのサポートをQtに加えるもので、既存のQt Positioning APIと併用することで位置情報に対応するアプリケーションの構築に必要な機能がそろったとしている。

 このほか、Qt Multimediaでも、Linux版でgstreamer 1.0のサポートが加わるなど多数の機能が加わった。また、1500件近くのバグが修正されている。

 対応するOS別の強化としては、今月末に発売が予定されている米Microsoftの次期OS「Windows 10」対応の素地を整え、Windows 10のリリース後すぐに5.5系のパッチリリースの形式で対応できるとしている。またLinuxパッケージの土台が「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」となり、1種類のバイナリでさまざまなディストリビューションをサポートした。Mac OS Xは10.8/10.9/10.10をサポート、SSLで米AppleのSecure Transportレイヤを利用するように変更されたほか、Bluetooth、Bluetooth LEのサポート、Qt WebViewのサポート、Qt Multimediaの改善などが加わった。

 製品体系も簡素化し、LGPL(2.1/3)またはGPLで公開するオープンソースの「Qt Open Source」、商用の「Qt for Application Development」と「Qt for Device Creation」の3種類となった。

 Qtは同日、統合開発環境(IDE)の最新版となる「Qt Creator 3.4.2」も公開している(Qt 5.5はQt Creator 3.4.2を含む)。

The Qt Company
http://www.qt.io/