予定より2か月遅れでリリースされた「Fedora 18」が登場、インストーラの改良など多くの変更点を含む

 Fedora Projectは1月15日、Linuxディストリビューション「Fedora」の最新版となる「Fedora 18」(開発コード「Spherical Cow」)をリリースした。Fedoraのインストーラ「anaconda」が一新されたほか、「Samba 4」の統合など多数の新機能が含まれている。

 Fedoraは米Red Hatが支援するFedora Projectによって開発されているLinuxディストリビューション。年に2回のペースで最新版をリリースしている。Fedora 18は当初2012年11月6日に公開される予定だったが、anacondaのリライトといった作業に時間がかかったことなどから、正式版のリリースが2回延期されている。

 Fedora 18はx86(32ビットおよび64ビット)に対応、Linuxカーネル3.6を採用している。大きな変更点としては、インストーラ「anaconda」が一新された点がある。ユーザーインターフェイスが完全に書き直され、新規ユーザー向けに分かりやすく、かつ高度なユーザーには複雑なオプションを提供するという。一部タスクをバックグラウンドで処理することで、作業時間の短縮も実現した。

 また、アップグレードインストールについては新たに専用ツール「FedUp(Fedora Update)」が導入された。「fedup」パッケージをインストールし、「fedup-cli」コマンドを実行することでFedora 17から18へのアップグレードを行える。

 システム関連では、/etc/sysconfigディレクトリ内のいくつかのファイルが廃止され別のファイルに置き換えられた。廃止されたファイルとして、/etc/sysconfig/clockや/etc/sysconfig/i18n、/etc/sysconfig/keyboardが挙げられている。また、ホスト名の設定については/etc/sysconfig/networkではなく/etc/hostnameで行われるようになった。

 Windows 8搭載PCで採用されているファームウェア規格「UFEI(Unified Extensible Firmware Interface)」 におけるSecure Bootサポートも実現された。これにより、Secure Bootが有効にされているPCからの起動が可能となっている。ただし、Secure Bootを無効にしなければ利用できないカーネルドライバもあるという。

 新たなファイルシステム「FedFS」も追加されている。複数のファイルサーバーでの名前空間同期などの機能を持つもので、現段階ではプレビューとして導入されているとのこと。

 クラウドや仮想化関連機能では、まず仮想環境管理ツール「oVert」のサポートが強化され、Webブラウザからアクセスできる管理コンソール「oVirt Engine」が新たに提供されている。Infrastracture as a Service型のクラウド基盤ソフトウェア「Eucalyptus」のサポートも行われた。また、従来同様クラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」にも対応する。サポートするCloudStackのバージョンは10月にリリースされたバージョン2012.2(開発コード「Folsom」)。Red Hatの仮想化環境管理プラットフォーム「oVirt Engine 3.1」も備える。そのほか、KVM仮想マシンのサスペンドとリジュームもサポートされた。

 開発やシステム管理関連としては、Samba 4対応によりActive Directory実装、スクリプトインターフェイス、SMB3などを利用できる。そのほかフォールトトレラントな分散型データベース「Riak」や、ストレージやSAN、NASを管理するツール「StorageManagement」、コマンドラインインターフェイス「System Storage Manager(SSM)」などが加わった。システムデーモンであるsystemdは10月にリリースされた「systemd 195」が採用されており、また従来initスクリプトからsystemd unitファイルへの移行も進んでいる。

 デスクトップ環境では、デフォルトの環境として「GNOME 3.6」を採用した。このほか、GNOME 3ベースの「Cinnamon 1.6」、GNOME 2系を引き継ぐ「MATE Desktop 1.4」、「KDE Plasma Workspaces 4.9」「Xfce 4.10」なども利用できる。インプットメソッドの設定ファイルである~/.xinputrcは~/.config/imsettings/xinputrcへ移動されている。

 Perlのバージョン5.16へのアップデートやPython 3のバージョン3.3へのアップデートも行われている。Python 2については従来どおりPython 2.7が提供される。そのほか、Ruby on Railsもバージョン3.2へアップデートされている。追跡ツール「Sytemtap 2.0」や「LTTng」も備える。D言語のサポートやLLVMベースのGCC互換コンパイラ「DragonEgg」の追加も行われている。

 Fedora 18はプロジェクトのWebサイトより入手できる。

The Fedora Project
http://fedoraproject.org/