Fedora 17、予定より3週間遅れでリリース。GNOME Shellや各種ツールのアップデート、ディレクトリ配置の変更などが特徴
Fedora Projectは5月29日、Linuxディストリビューション「Fedora」の最新版「Fedora 17」(開発コード「Beefy Miracle」)をリリースした。デフォルトのデスクトップ環境には「GNOME 3.4」を採用し、「OpenStack」などクラウド関連機能も強化されている。
Fedora開発チームは6か月おきのリリースサイクルを導入しており、Fedora 17についてもFedora 16がリリースされた2011年11月から6か月後の公開となった。ただし、当初の予定よりは3週間遅れている。Fedora Projectは米Red Hatの支援を受けており、「Red Hat Enterprise Linux」に今後導入される機能をいち早く試すことができる。
Linuxカーネルのバージョンは3.3.4。デフォルトのファイルシステムにはbtrfsの採用が計画されていたが、最終的にはext4となった。btrfsはインストール時には選択できないものの、インストール後には利用できる。この問題は次期版で解決する予定という。また、ext4では16TB以上のサイズのファイルシステムも扱えるようになった。ディレクトリ配置も変更され、/binや/sbin、/lib、/lib64などのディレクトリが/usr以下に配置されるようになっている。
デスクトップ環境は、3月末に公開されたGNOME 3.4がデフォルトとなっている。GNOME 3.4の標準ユーザーインターフェイス「GNOME Shell」の利用には従来対応グラフィックカードが必要だったが、本バージョンではソフトウェアレンダリングがサポートされ、より多くのグラフィックカードで利用できるようになっている。GNOME 3.4は「Activities Overview」画面での検索機能、テーマの改善などユーザーエクスペリエンスを改善しており、「Documents」や「Contacts」などのアプリケーションも強化されている。単一画面モードなどの機能が加わった最新の「GIMP 2.8」や「LireOffice 3.5」など、多数のアプリケーションが最新版にアップデートされた。デスクトップ環境としてはKDE 4.8なども利用できる。
デスクトップ関連の変更としては、リムーバブルメディアのマウント先が「/run/media/$USER/」に変更された点がある。このディレクトリはマウントしたユーザーのみがアクセスできるとのこと。
開発者向けの変更も多い。まず、GCCが「GCC 4.7」にアップデートされている。6月公開予定のEclipse最新版「Juno」のプレリリース版も含まれるほか、デフォルトのJavaランタイムと開発キットは「OpenJDK 7」となり、軽量化を図った「JBoss Application Server 7」も同梱する。Emacsは最新版であるバージョン24.0.93にアップデートされたほか、Git 1.7.9、Subversion 1.7.3など関連ツールもアップデートされている。
クラウド関連では、オープンソースのIaaS「OpenStack」の最新版2012.1「Essex」が搭載されたほか、「OpenNebula」や「CloudStack」といった技術もサポートする。仮想環境管理「oVirt」、仮想ネットワークスイッチ「Open vSwitch」なども含まれる。仮想化管理のための共通APIである「libvirt」はバージョン0.9.10にアップデートされ、仮想マシンマネージャ「virt-manager」もバージョン0.9.1になっている。
セキュリティ関連の変更としては、システム全体で利用されるパスワード品質チェック機構「libpwquality」の採用がある。また、従来テンポラリディレクトリとして「/tmp」を使用していた多くのプログラムが、独自のテンポラリディレクトリを使用するように変更されている。そのほか、gdbやptraceのような他プロセスにアクセスするプログラムをSELinuxで制限できるようにもなっている。
Fedora 17はx86およびx86_64版が用意されている。デフォルトではデスクトップ環境としてGNOMEが採用されているが、KDEやLXDE、Xfceといったデスクトップ環境が含まれる「SPIN」も提供されている。
The Fedora Project
http://fedoraproject.org/