グラフィカルな管理ツールを用意し、Windows Serverも利用できるKVM型VPS「GMOクラウドVPS」の性能をチェック 3ページ

GMOクラウドVPSのスペックをチェックする

 VPSは1台の物理サーバーを複数人で共有して利用しており、またサーバーのスペックが公表されていないことも多いため、実際にどのくらいのパフォーマンスが得られるのかは実際に使用してみないと分かりにくい。ネットワーク回線のパフォーマンスも気になるところだろう。そこで、以下では実際にGMOクラウドVPSのVPSを使用してベンチマークテストを行った結果を紹介しよう。

 ベンチマークテストで使用した環境は以下の2つだ。

Linux環境:スモールプラン(メモリ4GB、ディスク150GB、仮想4コアCPU)、CentOS 5.5(x64版)
Windows環境:グランデプラン(メモリ12GB、ディスク300GB、仮想4コアCPU)、Windows Server 2008 R2 Standard

 グランデプランでは仮想7コアのCPUが利用できるが、Windows Server 2008 R2 Standardでは最大4CPUまでしか利用できないため、CPU数は4となっている。

Linux環境のベンチマーク

 Linux環境のベンチマークでは、SourceForge.JP Magazineでもたびたび紹介している「Network Diagnostic Tool(NDT)」および「Geekbench」、「unixbench」、「FS-Mark」、「Threaded I/O tester」を使用した。NDTはネットワーク帯域を、Geekbenchは演算性能を、unixbenchはシステム全体のパフォーマンスを、FS-MarkとThreaded I/O testerはストレージ性能をチェックするベンチマークツールだ(表4)。

表4 Linux環境のベンチマークテストに使用したツール
ツール名 説明
Network Diagnostic Tool(NDT) 3.6.4 クライアントからサーバーまでのネットワーク経路について、その回線速度や状況をチェックするツール
Geekbench 2.3.1(x86_32) マルチプラットフォーム対応のCPU/メモリベンチマークツール
unixbench(BYTE UNIX Benchmarks) 5.1.2 古典的なUNIX系OS向け総合ベンチマークツール
FS-Mark 3.3 ファイル/ディレクトリアクセス速度をチェックするベンチマークツール
Threaded I/O tester(tiobench)0.3.3 ストレージへの並列アクセス速度をチェックするベンチマークツール

ネットワーク性能をチェックする

 Network Diagnostic Tool(NDT)は、クライアントからサーバーまでのネットワーク経路について、その回線速度や状況をチェックするツールだ。インターネット環境測定ツールを開発するオープンな団体「Measurement Lab」でも採用されている。

 NDTの使い方についてはWebページやNDTに同梱されているドキュメントを確認してほしいが、ダウンロードしたソースコードをコンパイルし、作成された「web100clt」コマンドを実行するという流れだ。このとき利用するNDTサーバーは「-n」オプションで指定する。

 NDTを実行すると、次のように外向き(VPSからインターネット)の通信および内向き(インターネットからVPS)の通信速度が表示される(リスト1の赤文字部分)。

リスト1 NDTの実行例

$ ./web100clt -n 157.82.112.68
Testing network path for configuration and performance problems  --  Using IPv4 address
Checking for Middleboxes . . . . . . . . . . . . . . . . . .  Done
checking for firewalls . . . . . . . . . . . . . . . . . . .  Done
running 10s outbound test (client to server) . . . . .  258.76 Mb/s
running 10s inbound test (server to client) . . . . . . 114.43 Mb/s
The slowest link in the end-to-end path is a 1.0 Gbps Gigabit Ethernet subnet
Information: Other network traffic is congesting the link
Information: The receive buffer should be 10023 kbytes to maximize throughput
Server '157.82.112.68' is not behind a firewall. [Connection to the ephemeral port was successful]
Client is not behind a firewall. [Connection to the ephemeral port was successful]
Packet size is preserved End-to-End
Server IP addresses are preserved End-to-End
Client IP addresses are preserved End-to-End

 GMOクラウドVPSでは、回線速度は100Mbps共有となっているが、この実行例から分かるとおり、100Mbps以上の速度が出る場合もあるようだ。VPSのネットワーク自体は1Gbps回線で接続されているようなので、ルーターやKVMの設定で帯域制限が行われている可能性が高い。なお、日にちや時間帯を変えて3回のベンチマークテストを行った結果は次のとおりだ(表5)。

表5 NDTによるネットワーク速度ベンチマーク結果
外向き通信速度 内向き通信速度
1回目 258.76Mbps 114.43Mbps
2回目 234.95Mbps 114.43Mbps
3回目 250.28Mbps 114.43Mbps

システムの処理能力をチェックする

 続いて、VPSの処理能力をチェックしていこう。まずは、マルチプラットフォーム対応のCPU/メモリベンチマークツールGeekbenchによるテスト結果を見てみよう。

 GeekbenchはCPUの整数および浮動小数点演算性能やメモリ性能、メモリ帯域幅についてチェックできるベンチマークツールで、結果は「Geekbench Score」というスコアで表示される。テストはWebサイトで配布されているバイナリを次のように実行すると開始される。

$ ./geekbench_x86_32

 ベンチマークテストの結果はGeekbench Browserを確認してほしいが、スコアは「5326」となった。4コアが利用できるということで、特にマルチコアを使ったテストで高いスコアが見られている。メモリ性能についてはやや低めの傾向があるが、実際に問題になるレベルではない。

 また、同様にシステム全体のパフォーマンスを計測するUnixBenchのスコアは1CPUのみを使ったテストで「770.9」、4CPUを使ったテストでは「1633.1」という結果となっている。詳細なベンチマーク結果は記事末にまとめているので、そちらを参照してほしい。

ストレージのアクセス速度をチェックする

 最後に、ストレージの性能について見ていこう。FS-Markはディレクトリ内に一定サイズの多数のファイルを作成し、その時間を測定することでスループットをチェックするベンチマークツールだ。Threaded I/O testerは複数スレッドでストレージに負荷をかけ、その状況でのスループットを測定するベンチマークツールである。

 詳細は各ツールのドキュメントなどを参照してほしいが、今回ベンチマークテストの条件は次のように設定している。

FS-Mark: – 作成するファイルサイズ:1048576B(1MB) – 作成するファイル数:1000 Thraded I/O tester: – 同時にストレージにアクセスするスレッド数:32 – 各スレッドがアクセスするファイルのサイズ:32MB

 テストはそれぞれ3回実行し、それらを結果としてまとめている。まずFS-Markの結果であるが、およそ25~30MB/秒と比較的低めの結果となった(表6)。

表6 FS-Markによるストレージベンチマークテスト結果
試行 結果
1回目 28.5ファイル/秒(28.5MB/秒)
2回目 25.8ファイル/秒(25.8MB/秒)
3回目 28.7ファイル/秒(28.7MB/秒)

 また、Threaded I/O testerの結果を見ると、書き込みが遅く、読み込みは早いという傾向が見られている(表7)。

表7 Threaded I/O testerによるストレージベンチマークテスト結果
試行 書き込み速度(シーケンシャル) 書き込み速度(ランダム) 読み込み速度(シーケンシャル) 読み込み速度(ランダム)
1回目 43.114 MB/s 3.595 MB/s 5338.115 MB/s 4225.754 MB/s
2回目 41.976 MB/s 3.494 MB/s 5535.135 MB/s 4064.248 MB/s
3回目 38.402 MB/s 3.282 MB/s 5635.849 MB/s 4604.560 MB/s

 以上のように、ベンチマーク結果の全体的な傾向としては書き込み性能がやや低めという結果となっている。値を見る限り問題となるレベルではないが、頻繁に大量のファイル書き込みを行うような用途はやや苦手かもしれない。

Windows Server環境のベンチマーク

 続いて、Windows Server環境の性能についても見てみよう。Windows環境でのベンチマークにはLinuxのベンチマークでも使用したGeekbenchに加え、「CrystalDiskMark」および「CrystalMark」を使用した(表8)。

表8 Windows環境のベンチマークテストに使用したツール
ツール名 説明
Geekbench 2.3.1 マルチプラットフォーム対応のCPU/メモリベンチマークツール
CrystalDiskMark 3.0.1c HDDの速度を測定できるベンチマークツール
CrystalMark 2004R3 CPUおよび、メモリ、HDDの速度や、グラフィックスの性能を測定できるベンチマークツール

 まずGeekbenchのテスト結果だが、スコアは「4747」となった。詳細はGeekbench Browserを参照してほしいが、これは「Intel Core i7-720QM」や「Intel Core i5-2557M」に近いスコアとなっている。

 次に、ディスクの性能をチェックするCrystalDiskMarkの結果を見てみよう(図24)。

図24 CrystalDiskMarkによるベンチマーク結果
図24 CrystalDiskMarkによるベンチマーク結果

 この結果を見る限り、Windows環境でもLinuxの場合と同様、書き込みがやや遅めという傾向があるようだ。

 CrystalMarkによるベンチマークテストの結果は図25のようになった。

図25 CrystalMarkによるベンチマークテスト結果
図25 CrystalMarkによるベンチマークテスト結果

 CrystalMarkについてはスコアで結果を表示するため、比較のため筆者が使用しているWindowsマシン(Dell Optiplex 790、CPUは4コアのCore i5-2500/3.30GHz、メモリは4GB。OSは64ビット版Windows 7 Professional)でも同じテストを行い、その結果も掲載する(図26)。

図26 比較用のデスクトップPC(Dell Optiplex 790)ベンチマークテスト結果
図26 比較用のデスクトップPC(Dell Optiplex 790)ベンチマークテスト結果

 この結果を見る限り、演算性能は一般的なデスクトップマシンにはやや劣るものの、メモリやディスク性能については十分なパフォーマンスが得られそうだ。

 最後に、Windows環境におけるネットワークパフォーマンスも見てみよう。このテストでは、ここではRBBTODAYが提供する「スピード測定」、およびKDDIの速度測定サイト「スピードCheck!」、価格.comのスピードテストという、無料で利用できるWeb上のスピードテストサービスを利用した。簡易的なものであるため結果は参考程度にしかならないが、結果としては下り(内向き、インターネットからVPS方向)は100Mbps以上の速度が得られているのに対し、上り(外向き、VPSからインターネット方向)についてはやや低めの速度となっている(表9)。

表9 Web上のスピードテスト実行結果
測定サイト 外向き(上り)通信速度 内向き(下り)通信速度
RBBTODAY 12.89Mbps 116.41Mbps
KDDI 52.10Mbps 113.57Mbps
価格.com 33.9Mbps 97.0Mbps