FSFがAppleの「iBooks Author」に対し「ユーザーの自由を制限する」と批判

 米Appleが先に発表した「iBook Author」に対し、フリーソフトウェアを推進するFree Software Foundation(FSF)が「作者やユーザーの自由を制限するものだ」と抗議している。問題とされているのは、「作成した作品はAppleの販売チャネルでしか販売できない」というライセンス条項だ。

 iBooks AuthorはAppleが1月19日に電子書籍リーダーアプリ「iBooks 2」などとともに発表したMac OS X向けの無償アプリケーションで、iBooks 2向けの電子書籍を作成できるオーサリングツールとなる。FSFが1月25日に発表した声明文によると、iBooks Authorはプロプライエタリなソフトウェアであるだけでなく、ライセンス条項に問題があるという。

 指摘されているのはiBooks Authorのエンドユーザー向けライセンス条項(EULA)2項目。ここでAppleは「作成した作品を有料で提供する場合は、Appleの販売チャネル経由でしか提供できない」と明記しているという。Appleは電子書籍用のチャネルとして、電子書籍ストア「iBookstore」を提供している。

 FSFによるとiBook AuthorはPDFのような標準フォーマットでの出力をサポートしており、作成した電子書籍はさまざまな端末で閲覧できるという。そのため、「技術的には、作成した電子書籍を好きな形で提供できない理由はない」と指摘する。また、iBookstoreはDRMを利用しており、Appleのプロプライエタリな端末に紐付けされていることにも触れ、Appleはライセンス条項で著者の権利を制限することでiBookstoreからの収益拡大を狙っているとしている。

 このほかにも、ソフトウェアをほかの人と共有できないこと、自分のニーズに合わせて改変できないことなどを挙げ、「ユーザーや作者の自由を制限するものだ」と批判する。

 FSFはiBooks Authorに代わるものとして、WYSIWYG の電子書籍エディタ「Sigil」や学術向けのテキスト組版システム「LaTeX」、LaTeX向けグラフィカルフロントエンド「LyX」など、フリーソフトウェアの電子書籍作成プログラムを勧めている

Free Software Foundation(FSF)
http://www.fsf.org/

Sigil
http://code.google.com/p/sigil/

LaTeX
http://www.latex-project.org/

LyX
http://www.lyx.org/